|
|
2011年12月24日(土) ■ |
|
サンタクロースが赤と白の服を着ている理由 |
|
『松嶋×町山 未公開映画を観る本』(集英社)より。
(映画評論家の町山智浩さんとオセロの松嶋尚美さんが、日本未公開のドキュメンタリー映画を一緒に観ながら内容を紹介するという番組を書籍化したものです。 『イエスのショッピング〜買い物やめろ教会の伝道〜』というドキュメンタリーを紹介した回から)
【町山智浩:なんでキリストの誕生日に彼女にモノを買わなきゃいけないんですか? キリストと彼女の間に何の関係があるの?
松嶋尚美:あー、そういうことねー。そうきたかー。ま、私ら女子にとってはイベントっていう括りやねんな。誕生日、結婚記念日、母の日、クリスマス……。
町山:クリスマスだけ関係ないじゃん! サンタクロース自体も本来はクリスマスと関係ないんですよ。
松嶋:クリスマス、関係ないの?
町山:いくつかの伝説が合体してサンタクロースができたんですけど、キリストと直接関係はなかった。そもそも12月25日がキリストの誕生日だというのも、あとからつくられたことで……。もともとは、正月と同じ冬至の儀式でした。あとねサンタにも最初はいろんな色の衣装があったんだけど、コカ・コーラがクリスマスのポスターを作るときに赤と白のサンタクロースの絵をポスターに刷ったから、それが広まったんですよ。コカ・コーラのマークって赤と白でしょ。
松嶋:コカ・コーラカラーや。
町山:だから、今のクリスマスはデパートだのコカ・コーラだのが商売で始めたことなんですが、この商売っていうのがまずい。映画の中でビリー牧師も言ってますが、「汝の敵を愛せ」と言って、自分がひどい拷問を受けても怒らなかったイエス・キリストが、一度だけ激怒したのは神殿で商売してた商人に対してだったんです。神の居場所で何を金儲けしてるんだ、と。だから、神の名のもとに商売してるクリスマス商戦は、キリストがいちばん怒りそうなことなんですよ。】
〜〜〜〜〜〜〜
このドキュメンタリー映画は、国民の6割がカードローンなどの借金を抱えながらも買い物をやめない「消費大国」アメリカに警鐘を鳴らしている「買い物やめろ教会」のビリー牧師の活動を記録したものです。 なんでも、ビリー牧師は、アメリカ全土のデパートやショッピングモールに出没し、「ショッピングは神の意思ではありません!」と説教するのだとか。
彼は、スターバックスやウォルマート、ディズニーストアといった、アメリカを象徴するような店にも突入し、何度も逮捕されているそうです。 サブプライムローン問題のように、「返せそうもない借金をしてでも、買い物をしたがる人」が多いアメリカ人にとっては、ビリー牧師の説教は、あながち暴論とも言い難いようにも思えます。 とはいえ、デパートやショッピングモールにとっては「営業妨害」以外のなにものでもありませんが……
この町山さんの「サンタクロースの由来」「キリストを唯一怒らせたこと」の話を読むと、「キリスト教徒でもないのにクリスマスを祝う日本人」を、アメリカ人もバカにはできそうもありません。 サンタクロースのあの恰好って、コカ・コーラカラーだったんですね、言われてみれば、たしかにそうだよなあ。 でも、今ではおそらくあの赤と白のコスチュームが「世界標準」ですから、コカ・コーラの影響力には恐ろしいものがありますね。 そんなルーツを、ほとんどの人は知らない、というのもある意味すごい。このシーズンになると、知らず知らずのうちに、コカ・コーラカラーが街にあふれているのです。
町山さんによると、クリスマスプレゼントの習慣も、ニューヨークにあるMacy'sという世界一大きなデパートがはじめたのがきっかけだったのだとか。 それも、「年末に商品が売れ残っていると税金がかかってしまうので、在庫を減らすため、「クリスマスにプレゼントを贈ろう!キャンペーン」を大々的に仕掛けたのだそうです。 それが、100年くらい前の話。
まあ、親しい人とプレゼントを贈りあうというのは、けっして悪いことじゃないと思いますし、僕も「買い物やめろ教会」に入る気はありませんが、借金してまで豪華なプレゼントを贈るというのは、行き過ぎではありますよね。
|
|