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2011年09月06日(火) ■ |
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グーグルやフェイスブックのトップページが「素っ気ない」理由 |
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『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』(安西洋之、中林鉄太郎共著:日経BP社)より。
【フィンランド発のチャットコミュニティ「Habbo Hotel(ハボホテル)」は、架空のホテルを舞台にチャットやゲームができる人気サイトだ。これがフィンランド国外に進出した時、ブラジルオフィスからクレームがついた。なぜか? ウェブサイトにあるホテルは、もともと人気の少ない海岸沿いにポツンと建物があった。フィンランドでは静かなホテルが好まれる。ところが、これがブラジルでは「人気がなく、寂しい、犯罪でも起きそうで怖い」となってしまった。 「人影もない場所なんて、恐ろしくて行けるか!」という価値観は、のんびりとしたバカンスを好むフィンランド人からすると驚きだった。そこで、ブラジル向けには、海岸に寝そべる人がいて、ホテルの周囲には並木を配し、庭の噴水からは威勢よく水が飛び出し、建物の壁面も装飾的にした。 国によって、色が持つイメージも違う。白色はヨーロッパでは中立をイメージするが、日本では死を連想させることがある。このように視覚的な表示はグローバリゼーションを想定するとき、かなりやっかいな懸案事項になる。「Habbo Hotel」で生じたように、それぞれの地域に合わせた仕様を用意しておかないといけないためだ。 この煩雑さを回避する策はないのだろうか。「デザインはできるだけ簡素にし、言語表現のみを目指す。イラストなどの視覚表現を減らす傾向が最近のグローバルサイトでは見られる。そうしたニュートラルなデザインで国際化し、各地域でイラストを付加してローカライズする。代表的なのは米グーグルや米フェイスブックのトップページだ」と永島氏は解説する。そう言われてみると、グーグルのサイトって、素っ気ない。】
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「言語の翻訳からはじまって、コンテンツやソフトウェアのローカリゼーション(世界各地域の合ったかたちに適応させること)を主な業務とする「ローカリゼーション産業」というのがあるのだそうです。 ここに登場する永島氏は、その大手翻訳事務所のひとつ、ライオンブリッジテクノロジーズに勤務されています。
僕はこれを読んで、「国民性」っていうのは難しいものなのだな、と思うのと同時に、『Habbo Hotel』のような、ネット上のバーチャルな場所にまで、人は「自分の常識」をあてはめてしまうものなのだなあ、と感じました。 デザインとかイメージって確かに大事なのでしょうけど、どんな場所に建っているという設定になっていても、内容は同じなのにねえ。 このような「イメージ」だけではなくて、国や民族によって、禁忌や不快感を与えるものは異なるはずです。 ネットの世界では、「世界中どこからでもアクセスできる」だけに、グローバルに展開しようとしているサイトの場合には、トップページをつくるのにも、すごく気を遣わざるをえないのでしょう。 いまは、「どうせ日本語サイトは日本人しか見ないだろう」と思っていても、「日本語ができる外国人」あるいは「外国語ができる日本人」が、それを翻訳して世界中に広めてしまう可能性があります。 もし、グーグルのスワヒリ語のトップページに日本人を差別するようなイラストが描かれていたら、グーグルへの日本人の信頼は大きく揺らぐはず。
僕は「ヤフーやグーグル、フェイスブックのトップページって、あんなに巨大なサイトなのに素っ気ないなあ」と、常々思っていました。 「ネット環境が悪くて、通信速度が遅い国でも使えるように」シンプルにされているのだろうと想像していたのですが、理由は、それだけではなさそうです。 「規模が大きくなればなるほど、おとなしくしていなければならない」というのは、ちょっと寂しい気もしますが、これはもう、しょうがないんだろうなあ。
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