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2011年05月09日(月)
開発した商品が大失敗したとき、会長に「おめでとう」と言われた男

『ハーバードの人生を変える授業』(タル・ベン・シャハー著・成瀬まゆみ[訳]・大和書房)より。

【実業家として有名なジム・バークは、1989年に引退するまでの13年間もの間、ジョンソン・エンド・ジョンソンのCEO(最高経営責任者)として活躍しました。
 彼は仕事をはじめたばかりのころ、「司令官ジョンソン」と呼ばれたロバート・ウッド・ジョンソン・ジュニアから、失敗に学ぶことの大切さを教わったといいます。
 バークの開発した商品が大失敗してしまったとき、バークは当時会長だったジョンソンに呼ばれました。彼はクビを宣告されるだろうと覚悟していました。ところが、ジョンソンは握手を求めてきてこう言ったのです。

「おめでとうを言いたくて君を呼んだんだ。ビジネスとは決断だ。決断をしなければ失敗もない。私のいちばん難しい仕事は、社員に決断するようにうながすことなんだよ。もう一度誤った同じ決断を下せば、クビにする。でも他のことなら、どんどん決断をしていってくれ。そして、成功することより失敗することのほうが多いということを君にもわかってほしいと思っている」

 バークは自分がCEOになった後も、同じ経営哲学を信奉しつづけました。

「リスクを冒さなければ成長はありえない。成功している会社はどこも、山のような失敗をしている」

 ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社する前、バークはすでに3つの事業で失敗していました。
 自分自身の失敗を公表し、ジョンソンとのエピソードを繰り返し語ることで、バークは社員たちに重要なメッセージを送りつづけたのです。】

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 僕がこういう「海外(とくにアメリカ)のビジネスで成功した人の話」を読むたびに驚かされるのは、彼らが常に「失敗」を大事にしていることなのです。
 アップルのスティーブ・ジョブズは一度会社を追われていますし、彼をはじめとして、アメリカの偉大な「成功者」には、「大きな失敗」を経験し、それを隠さない人が多いようです。

 考えてみれば、どんな名選手だって、打率10割はムリなのと同じように、どんな優秀なビジネスマンでも、「最初から最後まで勝ち続けられる人」は、ほとんどいないのでしょう。
 これは、アメリカだけの話ではなくて、日本でも松下幸之助や安藤百福(カップヌードルの生みの親)のように、数多くの失敗のなかから立ち上がり、最終的には成功を成し遂げた人はたくさんいます。
 その逆で、トントン拍子にきて、最後に大きなしっぺ返しを食らってしまう、という人もいますけど。

 「失敗を恐れるな」と書いてある本はたくさんありますが、このロバート・ウッド・ジョンソン・ジュニアのエピソードは僕にとって印象的でした。失敗した人に「気にするな、今度はがんばれよ」まではありえるとしても、「おめでとう」と言える人はほとんどいないと思うのですよ。
 この文脈からすると、かなりの「大失敗」だったみたいですし。

 実際、「決断力」というのはすごく大事だなあ、と、優柔不断な僕は感じています。
 失敗を怖れるあまり、「決断できない」あるいは、「決断を他人任せにする」ことが「処世術」だと思っていたし、それは、いまの日本の社会では、たぶん、間違ってはいないのです。

 でも、「決断」しなければ、何もはじまらない。
 そして、「決断をする人がいない」ことが、「前例主義」を蔓延させ、「致命的な失敗」につながることもある。

 とはいっても、いまの日本が急に「どんどん失敗しよう!」という社会になるとは考えにくいわけですが、だからこそ、「決断できる人」の必要性も増してくるはずです。
 
 僕も今度、失敗した後輩に「おめでとう」って言ってみようかなあ。
「バカにしやがって!」と怒らせてしまいそうだけど。