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2009年09月15日(火)
ホリエモンとひろゆきの「彼女が部屋の鍵をなくしたら……」

『ホリエモン×ひろゆき 語りつくした本音の12時間 「なんかヘンだよね・・・」』(堀江貴文・西村博之共著:集英社)より。

(「格差社会」「政治」「メディア」「教育」など、世の中の「いま」に対する、「ホリエモン」こと堀江貴文・元ライブドア社長と「ひろゆき」こと西村博之・元2ちゃんねる管理人の対談本の一部です。二人の「失敗への対処法」について。

【西村博之:堀江さんって、怒ると会議を出て行ったりする、という話も聞いたりしましたけど、僕、何回かライブドアに行ったけど、怒っているところを見たことないんですよ。怒ると、やっぱ怖いんですか?

堀江貴文:うーん、怖いっていうか、ウザい、が正しいかな。怒鳴り散らしながら、論理的にネチネチ言うタイプだし。しかも、しつこく詰める感じ。で、相手が「参りました」と言っても許さないの(笑)。相手が悪いことをするから怒るわけじゃない。だから、相手に、どうやって自分が悪いことを起こしたのかの理由を全部言わせて、再発防止策まで言わせるんだよね。

西村:まぁ、ごもっともな。

堀江:改心させるわけさ。「これじゃダメだ。おまえが忘れないようにするためにどうしたらいいんだ?」って。例えば、彼女が部屋の鍵をなくしたときも……。

西村:え? 彼女が部屋の鍵なくしたりしても詰めるんですか!?

堀江:いや、正直ニ申請してくれれば詰めないんだけど、隠すヤツがいるわけよ。1〜2週間とか隠して、俺じゃない人に「どこで鍵なくしたんだろう?」みたいなことを言うわけ。最終的に2〜3週間が経って、どうしようもなくなってから、俺に「鍵なくしたんだけど」って言うのさ。それが、六本木ヒルズのICカードキーだったりすると、拾った人が六本木ヒルズのセキュリティーエリアを越えられるわけ。そうなると、もう俺だけの問題じゃないじゃない。

西村:まぁ、超大物芸能人にもエレベーターで会えちゃいますからね(笑)。

堀江:そう。それはヤバイなと。だから、「おまえがそれを正直に言わないのはダメだ」と。それに口答えしたらキレるわけよ。「再発防止策はどうするんだ! おまえにICカードキーは再発行できない」って。

西村:彼女にでもですか?

堀江:うん。「絶対無理」って言う。

西村:相手に1回でも怖いキャラだと思われると、正直にミスを話してくれなくなるじゃないですか。そうすると、相手はどんどん隠そうとしちゃうんで、「それぐらい、いいよ」って言ってあげれば、正直に話すようになると思うんですけど。

堀江:ちゃんと再発防止策を言ったら、その後は詰めないよ。単純にミスを隠すことで、人に迷惑をかけるのは良くないよ、って怒っているだけ。それは社員でも同じで、たまに不祥事を隠したりするヤツがいるんだよ。俺は不祥事を隠さず素直に話して、再発防止策を立てていれば怒らないのよ。

西村:もし、僕の彼女が鍵をなくしたら、「しょうがないから取り替えようか。だから交換代出して」と言うだけかなぁ。

堀江:でも、鍵をなくすヤツって同じことを繰り返すじゃない。俺は自分がそうなって嫌だったから再発防止策を立てるようになった。それで、最終的に財布を持たないっていう結論に達したわけ。】

〜〜〜〜〜〜〜

 僕はこれを読みながら、「ホリエモンの下で働くのは、ものすごく大変だろうなあ」と思わずにはいられませんでした。もちろん鍵なんて大事なものを失くすほうも悪いのですが、明らかに自分に非がある場合、「論理的に追い詰められる」ほうが、「怒られる」よりも、はるかに辛いことって少なくないですよね。ましてや、自分の恋人にそんな態度をとられたら、ねえ……

 僕の「彼女が鍵をなくしたとき」の対応は、ひろゆきさんに近いのではないかと思います(僕の場合は、大概「自分が鍵を失くす側」なのですが……)。ただ、僕はヒルズ族じゃないので泥棒に入られてもたかがしれているし、他の住人に対するセキュリティ上の責任もありません。そして、そういう態度は「100%優しさでできている」のではなくて、「相手にゴチャゴチャ言って、嫌われたくない」という、自己防衛の意味も多分に含まれています。

 「じゃあ、本当に相手のことを思っているなら、今後の再発防止のことも含めて、どっちの対応が良いと思う?」と問われたら、ホリエモンの姿勢のほうが正しいのかもしれないな、とも感じるんですよね。ひろゆきさんのような対応を続けていると、風通しがよくなって、何か問題があれば、すぐ報告してくれるようになりそうですが、「馴れ合い」に陥ってしまう危険性もあります。「どうせあの人は怒らないから」って、相手に舐められて勝手なことをされるかもしれません。
 『北風と太陽』という有名な寓話がありますが、現実においては、「太陽」では解決しない問題も少なくありません。

 ただ、ホリエモンのような上司だと、やっぱり「隠そうとする人」が多くなるでしょうし、結果的にそれが問題を大きくしてしまう可能性も高くなります。

 この二人(とくにホリエモン)の場合は、ちょっと極端な例のような気がしますが、僕の周りにも、こういう「ミスに対して、理詰めで追い詰めてくる上司」っているんですよね。こちらとしては、最初から理屈では間違っているとわかっているにもかかわらず、逃げ場がない状況で「正論」に追い詰められていくのは、ものすごくキツイのです。
 いや、もっと穏やかに「これからどんなことに気をつけたらいいと思う?」って訊ねて、すぐに解放してくれれば良いのだけれど、こういう人は、途中から、「逃げられない相手をいたぶるのが快感になってくる」ようなタイプが多いしねえ。
 そういう上司は、「それが部下のためになっている」と思い込み、「憎まれ役になってやっている」と思い込んでいたりするので、タチが悪い。

 まあ、仕事の場合はさておき、少なくとも恋人が鍵を失くしてしまった場合には、あんまり論理的に追い詰めないほうがいいんじゃないかな、と思います。
 「でも、鍵をなくすヤツって同じことを繰り返す」のも確かなんですよね……