|
|
2009年04月05日(日) ■ |
|
「任天堂の独創的な発明の原動力はどこにあると思いますか?」 |
|
『GetNavi(ゲットナビ)』2009年4月号(学習研究社)の特集記事「遊びんの王様〜任天堂の発明史」より。『星のカービィ』『スマッシュブラザーズ』シリーズのディレクター、桜井政博さんへのインタビュー。
【インタビュアー:任天堂の独創的な発明の原動力はどこにあると思いますか?
桜井政博:マリオの続編を作るにしても、基本的なシステムごと変えてしまう意地がありますよね。『どうぶつの森』などの例外はありますが、内容が変わらないタイトルは続編を出さない。それくらい、変化を求める姿勢を感じます。
インタビュアー:Wiiで新しいコントローラーが採用されたことは、開発者としてどう思いますか?
桜井:任天堂であるがゆえに、起こるべくして起こった変化だったと思います。個人的には、いっそリモコンにボタン1個だけでもよかったぐらいだと思いますよ。作り手はその上でいろいろと工夫しますから。
インタビュアー:あれに慣れるのは大変かと思いきや、「Wiiスポーツ」で一気に“振る”操作が浸透しました。
桜井:でも、現在は、任天堂でも他社でも”振る”操作だけのゲームは減ってますよね。任天堂自身も単純に目新しいから”振る”コントローラにしたんじゃなくて、ゲーム内容に合った操作システムを毎回、考えているんでしょう。
インタビュアー:任天堂の発明史には、普及しなかったものも見受けられます。
桜井:とはいえ、アイデアを商品にして世に送り出すだけでも、大きなエネルギーが必要。その実行力も任天堂の強みだと思います。販売数だけで成功や失敗は語れませんよ。安定路線を歩んだら、WiiやDSはおろか、面白いものはなにも生み出せませんから。
インタビュアー:でも、そもそもゲームの”面白さ”って何でしょう? 一概に正解は決めにくいと思いますが。
桜井:ひとついえるのは、ボタンの反応の良さとかメニューの見やすさなど細かい部分の正解を積み重ねても、優秀なだけで面白くなるとは限らないおいうことです。ある面でユーザーを裏切って驚かせないと。リメイク作には、望む声は多くても「またか」と思われる面もあるますよね。任天堂の財産である人気シリーズでも「新しいハードで出すからには!」という新規性が常に求められていると思います。】
〜〜〜〜〜〜〜
現在は、ニンテンドーDS、Wiiと任天堂の「ひとり勝ち」の状態なのですが、思い返してみると、任天堂にも数多くの「失敗」がありました。 「カートリッジの3倍の容量」が売りだったディスクシステムは、カートリッジの大容量化によってすぐに安さだけしかメリットがなくなってしまい、「ロボット」は全く売れず、ハードでも、鳴り物入りで発売された「バーチャルボーイ」やカートリッジにこだわりすぎてゲームが高くなりすぎた「ニンテンドー64」など、任天堂ほど「冒険」をし続け、試行錯誤を繰り返しているゲームメーカーは他にはありません。 ニンテンドー64がプレイステーションの前に完敗し、ゲームキューブでも失地回復できなかったときには、任天堂はもうダメなんじゃないか、と僕は思っていたのです。 ニンテンドーDSも、発売当初は、そんなに話題にもならず、画面が綺麗で高機能なPSPのほうがはるかに前評判が高くて入手困難だったんですよね。Wiiも独特の操作性だし、まさかPS3より売れるとは。 DSやWiiの成功は、「これまでのいろんな試行錯誤の成果が今回はツボにはまった」もののような気がするんですよね。 DSのタッチスクリーンやWiiリモコンは、たぶん、開発者が発売時に想定していたものを超えた、さまざまな使われかたをしているはず。
ここで語られているように、任天堂というメーカーは、たしかに、「ちょっと焼き直しただけの続編」をあまり出しません。あの『脳トレ』なんて、あれだけ売れたのだし、ちょっと内容を変えるだけでいくらでも「新作」がつくれそうなものです。『マリオ』にしても、「マイナーチェンジの続編」は、『スーパーマリオ2』くらいのもの。 たしかに、これほど「常に変化することを己に課しているゲームメーカー」は他にはなさそうです。
それにしても、ここで桜井さんが語っておられる、「ゲームの面白さとは何か?」という質問には考えさせられます。 もちろん「操作性が良いこと」というのは必要最低条件なのですが、それだけでは「優秀なだけで面白くない」のも確かなんですよね。 ちょっと理不尽だったり、バランスが悪かったりするようなゲームのほうが、かえって記憶に残っていたりもしますし。
もしかしたら、「任天堂」というメーカーそのものの歩みが、ひとつの「壮大なゲーム」なのかもしれませんね。「変わること」を義務付けられた開発者たちにとっては、こんな過酷なゲームはたまったものじゃないでしょうけど。
|
|