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2008年09月05日(金) ■ |
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「みんながどうして小説を早く読めるのかわからないですよ」という森博嗣さんの読書法 |
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『一個人』2008年10月号(KKベストセラーズ)の特集記事「2008年度上半期・人生、最高に面白い本」より。
(「もう一度、読み返したい本〜人気作家10人がお勧めする究極の3冊」という記事の森博嗣さんの項から)
【昼間は大抵階下の工作室で作業をしているんです。長時間続けて同じことをするのが苦手なので、いろいろなものを同時並行で作っているんですよ。ゲラの確認や小説の執筆なども10分とか20分とか、小刻みに時間を区切って同時進行しています」 工学博士であり、なかでも建築が専門の森博嗣さんは、自らが設計した工作室兼書斎で一日の大半を過ごしている。もとはガレージだったというその場所には、車の代わりに鉄道模型や飛行機模型が所狭しと並び、本棚らしきものは見当たらない。 「基本的に再読はしないので読んだ本はとっておかないんです。だから、本棚もありません。雑誌には数十冊ほど目を通しますが、小説は年に3、4冊しか読めないんですよ。一冊読むのに2〜3週間はかかりますから、書くのと同じくらいの時間がかかっていることになります」 一度しか読まない代わりに、どのページに何が書いてあるかということが思い出せるくらい丹念に読む。繰り返し読むことはないのに、1日2時間で20ページほどしか進まないのだそうだ。 「だって、書いてある文章から世界を頭の中で構築しなくちゃいけないわけですから、すごく大変じゃないですか。むしろ、みんながどうして小説を早く読めるのかわからないですよ。僕は一度読んだストーリーは絶対忘れないし、自分の経験と同じくらい鮮明に覚えています。その点、頭の中にあることを書き留めるのは楽ですよね。小説を書くということは僕にとって頭の中の映像をメモするような感覚ですから」
(中略)
再読はしない森さんが例外的に3回読んだのは埴谷雄高の『死霊』である。 「どうやったらこういうものが書けるのか、その才能が素晴らしいですね。これを読むと、刀が研がれるような、感覚が研ぎすまされるような、そんな気持ちになるんです。僕にとっては言葉を味わう詩集のような作品です」】
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この本には、森さんの「工作室兼書斎」の写真も掲載されているのですが、「書斎」というより「おもちゃ博物館」みたいです。そもそも、森さんが小説を書きはじめたのは「趣味の模型制作にあてる費用を捻出するため」だったそうですし。
作家といえば、一般的には「読書家」だというイメージがあるのですが、森さんの本の読みかたには、ちょっと驚いてしまいました。 「速読」「多読」に価値を見出す人が多いなかで、森さんは、徹底した「精読派」のようです。それにしても、「年間3〜4冊しか読めない」「一度読んだら絶対に忘れないくらい丹念に読むので、1日2時間で20ページ」というのは、僕には信じられません。僕はだいたい文庫本で1時間に100〜150ページというペースなのですが、10倍時間をかけて読めと言われたら、余白にパラパラマンガでも書くしかなさそうです。いくら「丁寧に読む」って言ったって、そんなにゆっくり読めるのか、読むところがあるのだろうか。古文書の研究ならともかく、「小説」の1ページに、そんなに時間をかけて徹底的に読み解こうとするなんて!
この森さんの読書法を読むと、必ずしも「たくさん読んだから偉い」とは限らないし、本の読みかたというのは人それぞれなんだなあ、と考えずにはいられません。 ちなみに、森さんおすすめの「3冊」は、ロアルド・ダールの『飛行士たちの話』とサリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』。そして、埴谷雄高の『死霊』。 僕は『死霊』読んだことがないのですが、これは一度読んでみなければ、と思っています。 森さんが3回も読んだということは、ものすごく難解な作品ではないかと予想されるのですが……
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