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2008年08月29日(金) ■ |
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「大舞台(ダイブタイ)」なのか、「大舞台(オオブタイ)」なのか、わからなくなりました。 |
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『適当な日本語』(金田一秀穂著・アスキー新書)より。
(日本語学者・金田一秀穂先生が、日本語についての「相談」に答えるという形式で書かれた本の一部です)
【<相談20>大舞台(ダイブタイ)なのか、大舞台(オオブタイ)なのか、わからなくなりました。
<解答20> 接頭語の「大」という字を(オオ)と読むか、(ダイ)と読むかには、大まかなルールがあります。本体が和語であれば(オオ)になり、漢語であれば(ダイ)と読みます。例えば「大騒ぎ」や「大喰らい」が「オオ」、「大事件」や「大行進」は「ダイ」となります。 ただし例外があって、漢語であっても、よく慣れた言葉は和語扱いで、「オオ」と読むのです。「大掃除」とか「大勝負」などは、そういう例です。 このような例外は、規則がないので、覚えるしかない、ということになります。問題の「舞台」は漢語ですが、「オオブタイ」と読むのが通例になっています。どうして、と聞かれても困ります。ついでに、「大地震」は「ダイジシン」なのか「オオジシン」なのか、よく分かりません。私の知っている年寄りは、「オオジシン」と言っていました。NHKの放送用語も「オオジシン」です。しかし、阪神・淡路大震災以降、「ダイジシン」を使う人が多くなったそうです。関東大震災を経験した人にしてみれば、地震はとても「慣れた」言葉だったのだろうと考えられます。】
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この「大舞台」の読みかたというのは、けっこう話題になることが多いですよね。世間の「日本語通」には、「アナウンサーのくせに、『だいぶたい』なんて読んでるなんて……」などとあきれてみせる人もけっこういるのですが、この「接頭語の『大』の読みかたのルール」をちゃんと知って、アナウンサーをバカにしている人はそんなに多くはないはずです。 いや、僕も知らなかったからこそ、ここで紹介しているのですけど。
【本体が和語であれば(オオ)になり、漢語であれば(ダイ)と読みます。】という金田一先生の解説を読むと「なるほど」と納得できますし、もうこれで間違うことも(あまり)ないはず、と思うのですが、その後の【ただし例外があって、漢語であっても、よく慣れた言葉は和語扱いで、「オオ」と読むのです。】というところで、ちょっと雲行きが怪しくなってきます。 「じゃあ、どんな言葉が、『よく慣れた言葉』なんだ?」と。
「大騒動(おおそうどう)」は、「よく慣れた言葉」で、「大混乱(だいこんらん)」は「あまり慣れていない言葉」なのでしょうか……まあ、耳慣れたこの2つの言葉を、それぞれ「だいそうどう」とか「おおこんらん」と読む人はいないとは思うのですが、どのあたりがその「境界」なのかは、なんだかよくわかりませんよね。 結局のところ、【このような例外は、規則がないので、覚えるしかない】のでしょう。でも、「例外」があるということは、この規則そのものが『完璧」ではないわけです。 こういう話を読むと、アナウンサーが「大舞台」を「だいぶたい」と読んだときに、嬉々として「アナウンサーのくせに間違ってる!」なんて指摘するのもあんまりカッコいい行為ではないような気がします。「ルール通り」なら、むしろ「だいぶたい」のほうが「正しい」わけですし。
日本語の「正しさ」なんて、けっこう曖昧なもので、時代によって変わってしまうのです。 しかし、「大地震」という言葉に「慣れて」、「オオジシン」が一般化してしまうのは、遠慮したいものではありますね。
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