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2008年07月02日(水)
内田恭子さんが体験した「シカゴの中学校の家庭科の授業」

『チョコレートと犬とベッド』(内田恭子著・幻冬舎)より。

(元フジテレビアナウンサー(現在はフリー)、「ウッチー」こと内田恭子さんの初エッセイ集から。アメリカ・シカゴの中学校に通っていたときの内田さんの体験です)

【それにしても、アメリカ人は本当によくピーナッツバターを食べる。クッキーやチョコレートに入れるのはもちろんのこと、気がつけば瓶の中に指を突っ込んで、そのまま舐めていたりする。更には野菜にだってつけてしまう。セロリを縦に半分に切って、半円にくぼんだところにたっぷりと塗ってそのまま食べる。りんごにだって塗ってしまう。うげげげげって思ったそこのあなた、今すぐお試しを! セロリのツンとくる苦味やリンゴの酸味と、ちょっぴりしょっぱいピーナッツバターが、結構いいコンビネーションを組んでしまう(個人的には、SKIPPY.がお勧め!)。ちなみに私のお気に入りはりんごとの組み合わせ。気持ち悪いとみんなには言われるけれど、そんなことはちっとも気にしない。だって本当に美味しいんだもの!。
 そんな食文化は、もちろん学校の家庭科の授業にだってしっかりと根付いている。中学校の時の最初の授業は衝撃的だった。包丁の持ち方や切り方のステップなんてのはいっさい習わない。その日の課題はライスクリスピー。お米のパフをチーンで溶かしたマシュマロと混ぜて固めて、はい出来上がり。早っ! 次はチョコレートブラウニー。ブラウニーミックスを溶いてオーブンで焼いて、はい出来上がり。これも早っ! 素晴らしき電子レンジの文化。あんなにたくさんの冷凍ディナープレートが売られているのも分かる気がする。
 でもそんなアメリカ人も、やっぱり自分の体や健康についてはすごくうるさい。スローフードのような、健康的かつ美容的な食事法が流行るのも早いし、太っている人に対する厳しい目もある。自己管理ができていないと見なされてしまうのだ。だから授業でもダイエットのことはしっかりと勉強する。ダイエットと言うと、日本では体重を落とすことを意味するけれど、本来は栄養をバランスよく摂るという意味。バランスよく食べていれば、結果的に脂肪のようにいらないものは落ちていくから、すごく健康的な考え方だと思う。だからどんな時にどんなものを体が必要とするかを細かく習っていく。例えば、長距離を走る前はすぐにエネルギーに変わりやすい炭水化物を摂りましょう。パスタはエネルギーに代わるのが早いです、みたいなこと。その授業のあと、ランチの時間に陸上部の子たちが、みんな揃って塩だけかけたパスタをモソモソ食べていた光景は忘れられない。】

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 これはあくまでも、いまから20年くらい前にシカゴで暮らしていたときの内田さんの経験談で、現在は全く違っているのかもしれませんし、地域や学校によって、授業の内容にも差はあるのでしょう。
 それにしても、ずっと日本に住んでいて、日本の学校の経験しかない僕にとっては、この「アメリカの家庭科の授業内容」は、かなり驚かされるエピソードでした。
 日本の「家庭科」の授業にも料理の時間がありますが(今もありますよね、きっと)、そこで僕が最初に習ったのは、「調理器具の使い方」「ごはんの炊き方」「みそ汁の作り方」だったような記憶があります。もっとも、20数年前でも「かまどで炊く」というようなものではなく、「炊飯器」を使っていましたが。
 そこからスタートするのがものすごく「妥当」なのだろうな、と当時の僕は感じたのですけど(その知識が本当にその後役に立ったかどうかは別として)、アメリカの学校での「家庭科」というのは、いきなり「溶かして固めておしまい」とか、「混ぜて電子レンジでチンして終了」なんですね。僕は「まずはパンの焼き方から」入るものだとばかり思っていました。
 確かに、この方が、より「実践的」というか、「すぐに使える知識」であり、「合理的」なのかもしれませんが、「学校がそんなに合理性ばっかり追求してもいいの?」と感じたのも事実です。
 これがアメリカの食文化なんだ、と言われれば返す言葉もないのですが、調理実習(?)がそれで、「ダイエットの知識」を事細かく教えるというのも、なんだかちょっと矛盾してはいますよね。

 ものすごくジャンキーな食生活をしている人たちとダイエットやスローフードを追求している人たちが同居している国では、結局、「最後は自己責任だよ」としか言いようがないのでしょう。
 まあ、最近は日本人の食生活も似たようなものではありますし、いっそのこと、家庭科で「カップヌードルの作り方」「冷凍ごはんの温め方」を教えたほうが合理的なんじゃないか、とも思いますけど。