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2008年01月12日(土) ■ |
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「私は、匂いですね。外見より匂いにいきます」 |
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『ときどき意味もなくずんずん歩く』(宮田珠己著・幻冬舎文庫)より。
(宮田さんが雑誌の広告をつくるために女性専用のエステサロンに入れてもらったときの話)
【女性専用のエステサロンは、たとえ社員であっても男は入れないところを、現場を見なければ広告はつくれないとの配慮で、特別の許可を得て入れてもらった。ふだんは、そこに女性客がほとんど一糸まとわぬ姿で横たわっているという営業時間外のマッサージルームなど、いくつかの施設を見せてもらったのである。その横たわっているものも見なければ広告がつくれない、と先方に言ってみたかったが、それは我慢した。 そのとき先方の担当者に、男性は女性のどこを見ますかと聞かれ、「そうですね、私は脚でしょうか」なんて真面目に答えたのを思い出す。取材中に何の話をしてるのか、とわれながらおかしかったのである。しかも脚と答えたあとで、それは年齢によってかわるのではないかと考え直して「どうも私の感触では、男は成長するにしたがって、女性の気になる部分がかわっていくように思います」と付け加えたりしたのも今思うと笑える。 私の観察によると、小学生くらいの男子は、ほとんど女子の顔しか見ていない。小学校では顔がかわいい子がとにかくモテることになっている。それが中学ぐらいになると胸が大きいかどうかがポイントになり、そのうちお尻へと関心が移行する。そうして心身ともに大人になるころには、なぜか脚、とくに足首で相手を測るようになっていくのだ。個人差もあるだろうが、おおむね男子の視線はそんな感じで推移していくのではないかと私は考える。上から下に興味が下がっていくのである。 すると、そのとき同行したライターが、「私は、匂いですね。外見より匂いにいきます」と言って、なるほどそういう意見もあるのか、と突如現れた新しい視点にうならされた。なかなか一筋縄ではいかない問題なのである。後に、こういった件に詳しい先輩にたしかめたところ、脚の次に匂いがくるんだね、と言っておられた。つまり整理すると、男子の嗜好はおおむね、次のように進化すると考えられるわけである。 顔→胸→尻→脚→匂い。 視覚的なものから嗅覚へ。たしかにこのエステの取材から数年が過ぎた今、私も、だんだん匂いの魅力を理解できるようになってきた。 これまでは香水の匂いなんかかえってむせるだけで、ちっともいいと思わなかったのだが、逆に香水に鋭く反応するようになってきたのだ。人込みで、あ、いい匂い、と思って匂いのもとを探したりしている。犯人はいい年こいたおばはんだったりして、一瞬ときめいた気持ちの落としどころに困ったりするが、こうして匂いに敏感になるころには、男も同時に、おっさん化の一途をたどっているのであろう。 匂いの先はどうなりますか、とあらためて先輩にたずねたところ、一巡してロリにいくね、とのことであった。理解できないが、とても深い。】
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僕は昔から「香水」ってやつが大の苦手でした。あまりに臭いがキツイ人が傍にいると、それだけで胸やけがしてしまうくらいに。 まあ、僕の知る限り、子供っていうのは大概そういうもので、いわゆる「化粧臭いオバサン」とエレベーターに乗り合わせて、「くさーい、何この臭い!」などと発言して場の空気を凍らせてしまったりしますよね。 でも、あの「香水」というものが、本当に「全く効果がない、あるいは、異性に不快感を与えるのみ」という存在であったら、わざわざあんなものをつける人はいないはずです。 それでは、あの「香水」というのは、いったい誰をターゲットにしているのか?
男の視線が、「顔」から徐々に下方に向かっていく、という話はけっこうよく聞きますし、僕も最近は、「ああ、確かにそうなのかもしれないな」と感じます。たしかに、小学生の頃は、「顔」と、せいぜい背の高さくらいしか見てなかったよなあ…… いや、僕だって10代から20代前半くらいまでは、「胸」に比べると、「お尻」というのは実用性に乏しいし、ましていわんや「脚」なんて、どこのマニアの世界の話だよ……と思っていたのですが、30代半ばくらいになると、ふと「ああ、この人は脚が綺麗だな」というようなことを考えてしまうんですよね。そんなのお前だけ、と言われれば、立つ瀬が無いのですが。
そして、自分でも不思議なのですけど、子供の頃あれだけ嫌だった「香水のにおい」が、今ではそんなに不快じゃなくなってきているんですよね。まだ、「引き寄せられる」というレベルには達していませんが、確実に「許せる」ようにはなってきています。少なくとも、「匂いのほうに目が向いてしまう」というのはありますし。 こうして考えると、世間にあんなにたくさん「化粧臭い人」がいるというのには、それなりの理由がある、ということなのでしょうね。 でも、顔→胸→尻→脚なんていうのは、ある意味、どんどん「細部」に人は魅かれるようになってくる、ということですよね。ただ、そういう「視覚刺激」から、突然「嗅覚刺激」にシフトしてしまうというのは、やっぱり謎ではあるのですけど。 しかし、「最後は一巡してロリ」なのか……そのくらいまで生きてたら、「年上好み」っていうのも選択肢が少ないでしょうから、うまくできている、と言えなくもないのかな……
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