|
|
2007年11月21日(水) ■ |
|
決め手は「耳」だった! |
|
『世界のニッポン人・信じられない常識・非常識』(海外駐在サラリーマン83人会[編]・二見書房)より。
(「出入国には麻薬犬のチェックがあるぞ」という項の一部です)
【アメリカとメキシコ国境の出入国もきびしい。建設資材メーカーのT・Sさんが滞在したテキサス州のエルパソは。メキシコ国境にある町。 国境を越えるとき、アメリカからメキシコへ入る場合は、ほとんどフリーパス。それが逆に、メキシコからアメリカに入るときは、検査官からきびしいチェックを受ける。外国人はかならずパスポートを見せなければいけない。 メキシコから何を持ってきたかを調べられるが、タバコや酒を買ってきた場合、その場で申告しないとダメ。申告しないと、密輸入で逮捕ということもある。 メキシコからの麻薬の密輸入が多いせいか、検査官がちょっとでも怪しいと思った人は、とことん調べられる。麻薬犬による抜き打ちチェックもある。もし犬が吠えたら大変、車を解体してまで調べられるのだ。麻薬が見つからなくても、車はバラバラにされたまま放っておかれる。もちろん、組み立ては、疑われた者の責任。 「私の友人の話なんですが、国境で麻薬犬のチェックを受けたら、犬が車から離れなかったそうです。一応、無事通過できたんですが、車が解体されるのではと、全身汗びっしょりだったとか。よく考えてみたら、その日、メキシコで犬をはねてしまったんだって」 麻薬犬のチェックはないが、パスポートをみせれば即「OK」というわけではない。こんな場合もあるから気をつけないといけない。 ブラジルのサントスに滞在し、ニューヨークに行こうとした食品販売会社のF・Iさん、もちろん、パスポートはしっかりポケットはしっかりポケットに入れた。 「わりと適応力のあるほうで、海外に行っても、それほど困らないんです。外見までも、その国に染まってしまうほどで、私のことをずっと日系ブラジル人だと思っていた人がいたくらい」 外見まで似てしまう抜群の順応性が災いした。ブラジルからアメリカにわたったとき、入国審査官がパスポートの写真を見ながら「あなたは本人ではない」。そこで、日本人の証明とばかり、漢字でサインしてみせたが、それでも信じてくれない。 あげくに、不審者扱いで、別室に連れていかれてしまった。しばらくして、顔を照合する専門家がやってきて、やっと入国を許可された。 「決め手は耳だったんです。耳ってめったに整形したりしないでしょ。帰国したとき、成田の税関でも英語で話しかけられたんです」。パスポートには、顔だけでなく、耳の写真も必要かもしれない。】
〜〜〜〜〜〜〜
「アメリカからメキシコに入る場合」と「メキシコからアメリカに入る場合」を比較してみると、出入国チェックの厳しさの違いには、両国の関係が反映されているようです。ここで紹介されている「麻薬犬に吠えられた話」を読むと、「これも轢いてしまった犬の祟りなのでは……」とか、つい考えてしまうんですけど。 それにしても、疑われた時点で車を解体され、疑いが晴れたとしても車は解体されたまま、だなんて、日本でこんなことをすれば、かなりの大問題になるのは間違いありません。「疑われるほうが悪いのだから、解体した車を修復するのも自己責任」というのは、一般的な日本人には理解不能ですよね。でも、こういうシステムが続いているということは、向こうの人は、それを少なくとも「仕方がないこと」だという程度には受け入れているのです。
ところで、僕はこのなかでいちばん興味を持ったのは、「顔を照合する専門家がパスポートの写真と目の前の人物が同一であることを認めた決め手が『耳』だった」というところでした。 言われてみれば、「目」とか「鼻」とか「唇」が気に入らないということで美容形成を行う人というのはけっこう多いのですが、自分の「耳」が気に入らないということでつくり変えてしまう人って、あんまり聞いたことがないですよね。 「顔を変える」ことがそんなに難しくなくなった現代においては、「耳」というのは、まさに「最後の聖域」なのかもしれません。 入国審査官だけではなくて、僕たちも「この2人が同一人物かどうか」を判定するときに、両者の「耳を比較してみる」というのはけっこう有効かもしれませんね。もっとも、それが実際に役に立つシチュエーションって、動画サイトで、「これは本当にあの芸能人なのか?」を判別するときくらいかも……
褒め言葉でも「目が綺麗」とか「鼻筋が通っていて」とか「セクシーな唇」なんていうのはありますが、「感じのいい耳」というのは、村上春樹の小説以外では聞いたことがありません。 今これを書いていて、なんとなく、耳っていうのは実際に褒められたら意外と嬉しいパーツなのかもしれないな、とも思ったのですけど。
|
|