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2007年10月11日(木)
鳥取のヤンキー少年が「ゆうパック」で送ろうとしていた謎の物体

『桜庭一樹読書日記』(桜庭一樹著・東京創元社)より。

(桜庭さんの実家、鳥取での出来事)

【夜。すっかり常連となった郵便局の時間外窓口に行く。妙な二人組と行き会う。17、8歳ぐらいのヤンキー少年だが、二人とも真剣な顔で、片手に、ものすごく妙なものを握っている。それは古新聞で包んだ……たぶん、自転車のハンドル部分である。
 二人はハンドルを秤に載せ、小声であれこれ話している。いかなる理由でか、どうやら自転車のハンドル(だけ)をゆうパックでどこかに送ろうとしているらしい。一つ1800円かかると告げられて「そんなにかかるだが……!?」とショックを受けている。
 ズボンをずりさげ、黄色い髪を立たせ、悲しげな目をして、古新聞に包んだハンドルを握る少年たちは、どこか遠い地の、妙な部族の戦士のようにも見える。あぁ……っと、そのかっこ悪さの、あまりの斬新さにわたしも立ちすくむ。二人はそっと、後に並んでいたわたしに窓口を譲った。そしていつまでも、1800円かけて送るべきか、小声でせわしなく話し合っていた。】

〜〜〜〜〜〜〜

 彼らはなぜ「自転車のハンドル部分」をどこかに送ろうとしていたのでしょうか?
 僕はこれを読んで以来、ずっとそのことが気になってしょうがないのですが、もちろん、桜庭さんもその「答え」を書かれてはいません。
 まあ、僕が桜庭さんと同じ状況にあったとしても、17、8歳のヤンキー少年に対して「なんでそんなもの送るの?」って尋ねられなかったとは思いますし。

 もしかしたら、そのハンドル、ものすごく貴重なハンドルだとか、誰かの形見だとか……
 でも、そんな特別な由縁のあるものだったら、1800円というのは、二人で悩むような金額ではないはず。
 考えれば考えるほど、「彼らはなぜ、自転車のハンドルをどこかに送ろうとしたのか?」はわからないのです。
 そういえば、昔、あるラジオ番組で、「郵便局ではお金を払えば、いろんな『不定形郵便物』を送ることができる!」という企画をやっていて、うちわとかベニヤ板とかに切手を貼ったリスナーが、番組宛にいろんなものを送っていたのを聴いたことがあります。この「自転車のハンドル」というのは、こういう「企画モノ」への応募なのかもしれません。
 しかしながら、あんな大きくて重いものが「1800円」というのは、大人である僕にとっては、むしろ「高くない」ような気もするんですけどね。もちろん、目的次第、ではありますが。
 僕はこれを読んでいて、その1800円を払うから、なんでそんなものを送りたいのか教えて欲しくてしょうがありませんでした。
 鳥取ではそういうのが流行っている、ってことはないんでしょうけど……