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2007年09月28日(金)
グルメ記事で「本当は不味い店」を見分ける方法

『知らない人はバカを見る! これが商売のウラ法則』(ライフ・エキスパート編・河出書房新社)より。

(「グルメ記事のウラ法則〜『本当は不味い店』の解読法」という項の一部です。「本当に美味しい店」を書くのにはあまり困らない、という話に続けて)

【いっぽう、東京・下北沢の居酒屋とか中央線沿線のラーメン店とかの特集を組むときは、おのずと店の数が必要になる。その場合、グルメ・ライターは、いちいち味を確かめて店を選定してはいられない。
 そういうグルメ特集でライターたちを悩ませるのは、明らかに不味い店に当たってしまったときだ。はっきり不味いと書けば営業妨害になりかねないし、ウソを書けば雑誌の信用を損なうことになる。その板ばさみになったグルメ・ライターたちが駆使する表現には、暗号めいたウラ法則がある。
「味の格闘技」(量がやたらに多いだけで、ちっとも美味くない)
「冒険にあふれた味」(アイデア料理が大ハズレだったときに便利な表現)
「野趣に満ちた料理」(まったく洗練されていない、という意味)
「個性的な味」(ビケイとはほど遠い女性をほめるときのもっとも無難な表現は、個性的。その表現を料理に応用したもの)
「毎日食べてもあきない味」(あきるような特徴がないということ)
「男性向けの味」(女性ライターは、しばしばこの表現で逃げる)
「ハマればやみつきになる味」(ハマる人はなかなかいないだろうという意味が、暗にこめられている)
 美味い店をほめるときよりも、ライターさんたちの腕は、ずっと冴えているといえるかもしれない。】

〜〜〜〜〜〜〜〜

 こういう本に無記名で書いているライターさんたちは、きっと、タウン情報誌などで「グルメレポート」の記事なども書いているのだろうなあ、と思われます。これはまさに、「体験談」なのでしょう。

 まあ、実際は、雑誌の「グルメ特集」のなかには、その店の「宣伝」をそのまま紹介していて、記事にする際には味をみてはいないのでは、と思うようなものもけっして少なくないんですよね。
 この法則がすべてのものにあてはまるかどうかは疑問だし、「とにかく新しくできた店を紹介する」ことを重視していて、そこまで「記事の信憑性」にはこだわっていない雑誌も多そうです。
 むしろ、本当に取材をして、こういう「暗号」を散りばめておいてくれている雑誌は、「良心的」なのかもしれません。

 「美味しいものに対しては言葉を失ってしまう」なんてよく言われますが、ここに取り上げられている「明らかに不味い店について書くときの多彩な表現」には、むしろ感動すらおぼえてしまうのです。ライターさんたちは、苦労しているというよりは、けっこう面白がって書いているのではないかと。
 こういうのって、「『不味かったじゃないか!』って読者からクレームをつけられても逃げられるような表現のテンプレート」が何種類かあって、それをランダムで使いまわしているのではないかと思っていたのですが、こうしてみると、けっこうその店の「不味い理由」にまでほのめかしているんですね。こういう「暗号」を知っていたとしても、その店を自分で「追試験」してみる気になるかどうかは別として……

 それにしても、「個性的」っていうのは、本当に便利な言葉です。
 これだけ「言う側」と「言われる側」の認識が乖離してしまう言葉って、なかなか他には無いかもしれませんね。