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2007年02月14日(水) ■ |
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「ジャンケンが強いという人とつき合え」と言われた女 |
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『月刊CIRCUS・2007年3月号』(KKベストセラーズ)の対談記事「NANNO PRESENTS 秋元康×南野陽子・第1回」より。
(南野陽子さんと秋元康さんの対談の一部です)
【南野:自分は最近、感動が足りないのかな。
秋元:そうなの?
南野:ん…感動しても素直にそれを表に出せていない…。
秋元:必要なのは好奇心だよ。僕は放送作家をやり始めた17歳の気持ちのままだから。例えば、5つの箱があるとするでしょう?ナンノは自分の好きな柄や形の箱があったら「その2つだけ見たーい」で、あとは見なくても平気な人なんだよね。「だって、私好きじゃないもん、このカタチ」とか言って。でも、僕は全部開けてみたい。そこが違うよね。ナンノは人づき合いも「あ、この人なんかイヤ」ってシャットアウトするでしょう?
南野:以前、「ジャンケンが強いという人とつき合え」って言われたから、男の人と会うと「ねぇ、ジャンケン強い?」って聞くのよ。
秋元:みんな強いって言う?
南野:半々。強いという人も多いけれど…これ、難しい。
秋元:ジャンケンは必勝法がないからね。「5回勝ったら勝ち」というルールで相手に4勝されても、「俺はジャンケンが強い」と思う人はへこたれない。でも、自分が弱いと思っているヤツは、相手に2勝されただけで、「勝てないな」と思っちゃう。投げちゃうか、最後まで諦めないで自分は強いから逆転できると思っているから。
南野:でも、ジャンケンは確率の問題でしょう? 強いって言い切れる人は、仕事や女のコのことを、ポーンと飛び越える力はあるんだろうけど、何の根拠もないことに自信を持たれてもねえ…。そこについていくのは、ちょっと怖いわ。
秋元:じゃあ、例えばダンナの会社が倒産しました。「大丈夫だよ、俺がお前と子供たちぐらい食わせていけるよ」と言ったところで、その言葉に根拠はないでしょう? 「俺、ジャンケン弱いし、会社も倒産したし…」なんて後ろ向きの人は頼りないよね。だから根拠がない方がいいんだって。
南野:そういう人じゃないと上に行けないことは分かるんだけど、ギャンブラー気質っていうか、バクチ打ちの怖さっていうか、そういうのは感じる……
秋元:いいんだよ、それで。その人を信じた。けど、ダメだった。それでいいんだよ。ところで、今は男選びも慎重なの?
南野:慎重っていうより、ちょっと休憩。
秋元:まあ、ナンノはしばらく結婚しないね。今年もないだろうね。】
〜〜〜〜〜〜〜
南野陽子さんは、現在30代半ばである僕の高校時代のアイドルだったのですが、そういえば最近またいろんなところでお見かけするようになったような気がします。きっと、僕の世代の人たちがメディアで少しずつ発言力を増してきたからなのでしょうね。 秋元康さんといえば、「おニャン子クラブ」で一世を風靡した放送作家なのですが、僕にとってはずっと「なんとなくいけ好かない人」ではあったのです。そんなにカッコいい男というわけでもないのに、なんかやたらと偉そうで自信たっぷりだし、高井麻巳子と結婚したし! しかし、こうして秋元さんの話をあらためて読んでみると、自信がなくて弱気になりがちな僕にとっては、この人に学ぶべきところも多いかな、という気もしてきました。 僕は、この2人の人生観でいえば、圧倒的に「南野さん的」で、「5つの箱」の話にしても、極端な話、自分に興味がある箱がそこになければ1つも開けなくていいとすら思ってしまいますし、「相性が悪そうな人」には、なるべく接しないようにしてしまうのです。ジャンケンにしても、「あんなの確率なんだから、強いも弱いも無いだろ」と思っています。 でも、秋元さんの話を読むと、ジャンケンの強弱というのは、「グー、チョキ、パーのどれを出すか」以外のところにもあるのかもしれません。 弱気になっているとき、自信のないときって、確かに「5回先に勝ったほうが勝ち」というルールであっても、最初に2回続けて負けただけで、「ああ、この勝負、もう負けだ……」という気持ちになってしまいがちですよね。実際は、「相手だって、2回続けて負けることだってある」はずなのに。そして、ジャンケンの5回勝負ではそんなことはないかもしれませんが、僕は人生での勝負どころで、「まだ2回しか負けていない」にもかかわらず、「もうダメだ……」と勝負を投げてしまったことって、けっして少なくなかったような気がしてなりません。1回1回のジャンケンの勝ち負け以前に、途中で勝負を諦めて負けを認めてしまうような人間が「勝負に弱い」「負ける可能性が高くなる」のは当然です。確率的には五分五分の勝負でも、途中で降りてしまう可能性があるならば、その分勝てる可能性は低くなるのです。「自信」というのは、それだけでひとつの武器なんですよね、きっと。弱気なギャンブラーって、聞いたことないし。 「負けを認められなかった」ばかりに、取り返しのつかない深手を負ってしまうことだってあるわけで、小市民の僕としては、「そんな勝負そのものを避ける」というのもひとつの生き方ではあるのですけど、それはそれでちょっと寂しい気もするのですよね。
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