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2006年12月13日(水) ■ |
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『パズル通信ニコリ』の人気の秘密 |
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「ダ・カーポ」596号(マガジンハウス)の特集記事「『雑誌戦国時代』のゆくえは?」より。
(パズル雑誌の老舗『ニコリ』について)
【脳活性の効果ありと空前のブームになっている数字パズルのSUDOKU(数独)。現在パズル誌は70誌以上もあり、市場規模は拡大。読者の奪い合いが激しくなる中、26年も続く老舗中の老舗の季刊誌『パズル通信ニコリ』は今も健在。週刊文春やサンデー毎日、朝日・読売新聞などパズル問題を提供しているのは80紙誌にも。新興のライバル紙を抑える人気の秘密はやはり出題問題のクオリティーの高さにある。1冊に載る問題は数独やクロスワードなど、約150作品。驚くべきは、その9割が投稿によるものという事実だ。まさに読者が作る雑誌なのだ。 「20、30代の男性会社員や主婦、フリーター、大学生などが投稿してくれます。慣れた人だと通勤の行き帰りだけで1問作成してしまう方もいますね」(編集室長・安福良直さん) 昨今のブームで投稿数は増加。投稿作品の誌面への採用率は今や、たった2割にすぎない。後は、残念ながらボツだ。それだけレベルが高い。読者にとっては「解いて楽しい問題」ばかりということになる。 安福さんの編集者としての最も重要な仕事は、問題のクオリティーを見抜くこと。すなわち毎日毎日、送られてくる作品を解くことだ。多い日で1日60作以上も解くことがあるそうだ。 「どの作品でも一度解いてみないと問題の良しあしが分かりません。少しずつパズルの空欄を埋めていくと、面白さが伝わってくる。すべての空白を埋めた時の達成感の大きいものを誌面に採用しています。60作品もやっていると、頭も疲れますが、数字などを書き込む手も疲れてしまいますね(笑)」 安福さんはこの季刊誌以外にも、パズル問題満載の各種単行本も並行して作っており、年間10数冊担当する。多忙だが、それでもこう語る。 「『パズル通信ニコリ』の定例ページに、新しいパズルを作ろうという連載企画があるんです。これも読者が次々に発案してくれる。試し問題を掲載して他の読者からの反響が大きかったら、新パズルの定番になる可能性もあるのです」】
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『パズル通信ニコリ』は、1980年の創刊。読者は高齢者からお年寄りまで幅広く、30〜40代がメインなのだそうです。ちなみに、年間のニコリ社の販売部数総数は100万部以上。まさに、パズル誌の老舗中の老舗です。 僕はそんなにパズル好きというわけではないので、病院で患者さんが解いている雑誌をときどき目にするくらいなのですけど、この記事を読んで、『ニコリ』に掲載されている作品の9割までもが読者投稿だというのには驚いてしまいました。いや、入院中の時間つぶしにパズルを解く、という人の気持ちはわかるのだけれども、自分で問題を作ってみようというのは、どんな人たちなのだろうか?と。でも、採用率2割ということは、それだけ多くの人が「問題を作る楽しみ」にハマっているということなのですよね。これらの投稿者は、もちろん『ニコリ』の熱心な読者でしょうから、雑誌を買ってくれる読者が、新しい問題を考えて投稿し、さらに雑誌のクオリティーを高めていってくれる。そして、雑誌の質が高まることによって、さらに読者の「パズル熱」が高まっていき、新しい読者も集まる、という幸福な関係が、『ニコリ』とその愛読者たちの間には、成り立っているのです。 そして、この「問題の質を見極める人」のセンスというのは、パズル雑誌にとってはまさに生命線と言えるものです。あの「数独」だって、実際に解いて、その面白さを見出し、紹介した人がいればこそ、あれだけの成功をおさめているのですから。易しすぎては読者もしらけてしまうでしょうし、「難しければ難しいほど良い」というものではないでしょうし。いくら好きでも、1日60作品も解かなければならないとなると、「9割が読者の投稿作品」とはいえ、けっしてラクではないですよね。 それにしても、『ニコリ』が「パズル問題を提供しているのは80紙誌」にもなるのか……なんだか、雑誌が全然売れなくても、それだけで十分に商売になりそう。みんな、本当にパズル好きなんだなあ。
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