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2006年12月12日(火)
ある人気レスラーの「プロレスラーを目指したキッカケ」

「九州スポーツ」2006年12月8日号の記事『2006マット界若き七人の志士〈第5回〉 KENTAインタビュー』より。

(2006年のプロレス界を代表する7人の若手レスラーへのインタビュー記事の一部です。インタビューされているのは、プロレスリング・ノアのKENTAさん)

【インタビュアー:ところで、プロレスラーを目指したキッカケは何だったのか。

KENTA:実はゲームなんですよ。小学校4〜5年生のころ、「ファイヤープロレスリング」っていうテレビゲームがはやっていたんです。技を知らないと友達内で恥ずかしい雰囲気があり、勉強のため本物のプロレスを見るようになった。最初は驚きばかり、例えばDDTという技を一つ取っても、ゲームの中ではいったいどういう動きをしているのかよくわからない。けど、実際に見て「ああ、本当はこうやるんだ」って(笑)。

(中略)

インタビュアー:当時は野球少年だったとか。

KENTA:両親が共働きで祖父とのキャッチボールが始まりだった。小学校3年生の時からチームでやっていました。当時はピッチャーで、このころが野球人生のピークでしたね(笑い)。中学、高校時代のポジションはサード。でもレギュラーだったのは中学校までで、高校に入ってからはレギュラー入りしたり外れたりでした。プロに入りたかったですよ。当時は黄金期の西武ライオンズのファン。優勝すると祖母が買い物に行く西友がバーゲンをやるから好きになったのかな。ただし、ミラクル・ジャイアンツ童夢くん」というマンガを見てからは巨人ファンになりました(笑い)。

インタビュアー:プロレスラーになりたいと強く意識した時期はいつか。

KENTA:中学に入り、プロレスごっこがはやった。ゲームが”実戦”に変わったんですよ。ボクはもちろん小橋(建太)さん役。太っているヤツは外国人役で、必殺の鉄人チョップでなぎ倒しましたね。本気でなりたいと思ったのは高校生になってからですね。】

〜〜〜〜〜〜〜

 プロレスファンの方はもちろん御存知でしょうが、KENTA(けんた、本名:小林健太)さんは、現在25歳のプロレスリング・ノア所属のプロレスラーです。イケメンレスラーとして人気を集める一方で、GHCジュニアヘビー級王座というタイトルを獲得したこともある実力派でもあります。
 僕がこのインタビューを読んで驚いたのは、現在25歳のKENTAさんがプロレスに興味を持ったきっかけというのが、テレビゲームの『ファイヤープロレスリング』だったということでした。僕にとって、ゲームが身近になったのは中学生くらいだったのですが、当時は、スポーツをいかに「それらしく」ゲーム化できるか?という時代でした。とはいっても、グラフィックも動きも貧弱ですから、どうしても「記号的なキャラクター」にならざるをえなかったのです。ずっとバッターがバットを振り回している野球ゲーム、フィールドプレイヤーが6人しか居いないサッカー、ボタンを連打するだけのプロレス……
 「ゲーム好きの人」と「スポーツマン」のあいだには、ちょっとした壁みたいなものもありましたしね。
 でも、僕より10歳くらい若いKENTAさんにとっては、『ファイヤープロレスリング』のほうが、「本物よりも身近なプロレス」だった時代があったのです。「『ファイヤープロレスリング』を遊んでいるときに友達との話についていけるように『本物のプロレス』を観はじめた」なんていうのは、僕にとっては「そんな時代になってしまったんだなあ」と感慨深いものなのですよね。もしかしたら、「本物のプロレス」のほうが、「『ファイヤープロレスリング』じゃないほうのプロレス」になってしまっている子供というのも、けっこういるのかもしれません。
 メジャーリーグに移籍する井川投手は「パワプロ(実況・パワフルプロ野球)を発売日に購入する」ほどのゲーム好きらしいですし、海外の有名サッカー選手のなかには、コナミの「ウイニングイレブン」での自分の能力値が低すぎることを嘆いていた選手がいたそうです。サッカーイタリア代表チームには、ゲーム好きの選手が多いというような話題もありました。「スポーツ」と「ゲーム」の距離というのは、僕が昔イメージしていたような遠いものではなくなってきているのでしょう。スポーツ選手として技術を極めるというのと、ゲームでハイスコアを目指して腕を磨くというのは、ストイックな努力という点では、方向性はけっこう近そうですしね。
 ちなみに、KENTA選手がプロレスに魅かれたもうひとつの理由は、『ファイヤープロレスリング』に、自分の名前(小林健太)とそっくりの名前の選手が出ていたから、なのだそうです。
 その選手の名前は、小橋健太(現・建太)。腎臓ガンで手術を受け、現在は復帰に向けてリハビリ中のノアのエース。
 ほんと、何がきっかけで人生が変わっていくかなんて、自分でもわからないものですよね。