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2006年12月05日(火)
中国での伝染病死亡率第1位の「恐怖の伝染病」

「九州スポーツ」2006年12月4日号のコラム「カイチュウ博士の虫の居どころ」(藤田紘一郎著)より。

【先日、フィリピンでイヌにかまれた京都の男性が「狂犬病」を発病して死亡しました。世界で毎年、狂犬病で5万5千人が命を落としています。お隣の中国での感染症による死亡率第1位の病気が狂犬病なのです。ワクチンを打たないで発病すると、100%死亡する恐ろしい病気です。
 日本国内で人が感染したケースは、半世紀前の昭和30年以降ありません。今回のように海外で感染し、帰国後発病した事例も、45年に一度あったきりです。日本では聞き慣れない病気も、中国、タイ、フィリピン、インドでは日常的に頻発している感染症であることを知っておいてほしいと思います。
 狂犬病にかかっているイヌにかまれると、傷口からそのイヌの唾液中にある狂犬病ウイルスに感染します。かまれてから1ないし3か月(潜伏期間)すると、傷あとから痛み出し、食欲不振、不眠、唾液の過剰分泌が起こります。これが発病です。発病したら100%死亡します。狂犬病流行地でイヌにかまれたらすぐワクチンを接種することです。発病前のワクチン接種が唯一、助かる手段なのです。】

参考リンク:狂犬病(Wikipedia)

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 僕自身は、狂犬病の患者さんを診たことは一度もなく、大学での講義の際も習ったのかどうか記憶にないくらいなのですが、世界的にみれば、狂犬病は現代でも非常に恐れられている病気のひとつなのです。日本では長年みられていなかったので、「イヌに噛まれたら狂犬病になる!」という漠然としたイメージは小学生でも持っているにもかかわらず、実際にどんな病気かというのは、意外と知られていないのではないでしょうか。いや、僕もここに挙げられているデータを見て、かなり驚いているのですけど。

 中国では、狂犬病は「感染症(伝染病)による死亡率第1位」で、参考リンクの記述によると【近年では毎年約2500名が狂犬病により死亡しており、2005年には伝染病による死者数の20%を占めた】そうなのです。そして、その対策として、雲南省のある県で、【軍用犬・警察犬を除く全ての犬を殺処分をする政策を取った。処分の補償金ははわずか7元で、処分の方法も、薬殺のほか飼い主の目の前で撲殺することもあり、世界中から非難の声が上がった】などという、なんだかいたたまれない話も伝わってきています。中国もオリンピック開催を前に、かなり神経質になっている面もあるのでしょうが、イヌたちが年間2500人が亡くなっている病気の原因になっているということを考えれば、狂犬病への恐怖感が薄い日本人である僕が「動物愛護の精神に反している!」と憤ってみたところで、「そんな生ぬるいことは言っていられない」という返事が返ってくるだけなのかもしれません。まあ、【中国では、狂犬病を発病した犬に咬まれた患者が定められたワクチン注射をしていたのに発病する例まであるが、これは調査の結果、ワクチンを水で薄めたり、偽造ワクチンが使用されていたためと判明している】なんて話を読むと、イヌの撲滅の前にやることがあるだろ……という気がしてなりませんが。
 そして、インドでは毎年3万人が狂犬病で死亡しているのだとか。いくら人口が多い国とはいえ、すごい数ですね……
 ちなみに、【名称からは「犬だけの病気」と考えられがちであるが、狂犬病ウイルスはヒトを含む総ての哺乳類に感染するので、イヌだけではなく、ネコ、アライグマ、スカンク、キツネ、コウモリなどから感染することもある】そうです。今の日本では、あまりに神経質になりすぎるのもどうかとは思うのですが、最近は飼い犬に対する予防接種実施率が低下してきているらしいので、イヌを飼っている人には、しっかりと予防接種をお願いしたいものです。ありえない話だと笑われるかもしれませんが、もし無防備になっている日本のイヌが狂犬病に感染したら、爆発的に広がって、中国と同じように「飼い主の前で撲殺」しなければならない可能性も、けっしてゼロではないのです。やみくもにかわいがるだけが、「愛情」じゃないんですよね、きっと。