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2006年11月14日(火) ■ |
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赤川次郎、「1億冊突破!!」伝説 |
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「本の雑誌」(本の雑誌社)2006.12月号の「自在眼鏡」より。
【ただいまフェア中の角川文庫・赤川次郎作品についた帯を見て、ひゃあーっとぶっ飛んだ。 なんと「1億冊突破!!」とあるではないか。1億冊だよ。1億冊といえば、100万部の本でも100点! 10万部の本なら、1000点も出ないと達成できない、それはもう天文学的な数字である。佐伯泰英の時代小説シリーズが累計1000万部突破!と各出版社が大騒ぎしているが、ええい、控えおろう。赤川次郎はその10倍。しかも角川文庫だけで1億冊突破なのである! まいったか。 ちなみに角川文庫の目録によると、2006年2月現在、赤川次郎(「あー6」)は最新刊が『三毛猫ホームズの世紀末』で「227」番。つまり227点が刊行されている。最近の赤川次郎事情に詳しくないので、正確にはわからないが、2月以降も何点かは出ているだろうから、仮に230点として、おお、1点平均43万4782部だ! よんじゅうさんまんぶ。うーん、そういう本を一冊くらい当社でも出してみたいなあ。 しかも赤川次郎は角川文庫ばかりじゃなく、光文社文庫から84点(2005年6月現在、意外に少ないよね)、講談社文庫から40点(2005年12月現在)、徳間文庫から39点(2005年3月現在)、新潮文庫から38点(2006年4月現在)、集英社文庫から31点(2005年2月現在)、文春文庫から26点(2006年2月現在)、中公文庫から8点(2005年4月現在)刊行されているのだ(ほかにもあったらすまぬ)。足し算すると、7社で266点。あれ、角川一社とそんなに変わらないのね。 いや、つまり赤川次郎の文庫は各社累計で500点近く出ている(超えているかも)わけで、ということは、全文庫合わせると、2億冊突破していても、ぜんぜん不思議はないのである! いやはや、びっくりだ。】
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「1億冊」というのは、本当に凄い数です。僕はこれを読んで、1000万部を突破しているという佐伯泰英さんを今まで自分が知らなかった、というのにも正直驚いているのですが。ちなみに、あの超人気マンガ『ドラゴンボール』全42巻の売り上げが、累計1億3000万冊だそうです。
慢性的な「出版不況」「活字離れ」が叫ばれるなか、これだけの文庫本を売ってきた赤川次郎さんというのは、少なくとも商業的には、「偉大な作家」であることは間違いありません。以前も書きましたが、僕は中高生の頃から「赤川次郎しか読まない同級生の女の子」を「軟派な本ばっかり読みやがって」と内心バカにしているような感じの悪い人間だったのですが、赤川次郎さんの著作から「本好き」になった人も、けっこう多かったのではないかと思われますから、出版界への「貢献度」も多大なはずです。 それにしても、角川文庫だけで累計1億冊。文庫と単行本という大きな違いはあるとしても、あのリリー・フランキーさんの超ベストセラー『東京タワー』の50倍もの数の本を、赤川さんは今までのキャリアの中で、角川文庫だけで売ってきているのです。赤川さんは『幽霊列車』という作品で1976年にデビューされていますから今年で作家生活30年、227点という多数の作品を発表してきて、その平均売り上げが平均43万部。平均点の売り上げの作品で、ミリオンセラーのほぼ半分をクリアしているのです。世のなかには、「一度でいいから、10万部くらい売ってみたい……」という作家がたくさんいるにもかかわらず。
ちなみに、調べてみたところ赤川さんの作家生活30年間での執筆作品数は480作あり、累計総発行部数は3億冊にのぼるそうです。印税いくらになるんだ……と思わず計算してしまうような数字です。今すぐに「引退」しても、「ネバーランド」を建設して余生を遊んで暮らせるくらいのお金があるはずなのに、赤川さんは今でも精力的に締め切りに追われる生活をしておられます。 ところで、赤川さんは、デビュー時の「オール読物推理小説新人賞」、2005年の「第9回日本ミステリー文学大賞」(これは、個々の作品にではなく作家に対して与えられる「功労賞」的な色彩が強い賞のようです)の他には、著名な文学賞とは全くといっていいほど縁がないのです。もう、ここまで「大家」になってしまうと、今さら文学賞でもないのでしょうけど、あまりに売れすぎてしまったために、かえって「作品」として評価されることが少ない作家のひとりなのかもしれませんね。
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