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2006年11月12日(日) ■ |
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有能なリーダーたちに共通する「発想法」 |
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「ドラッカーの遺言」(ピーター・F・ドラッカー著・窪田恭子=訳・講談社)より。
【では、優秀な経営者、優秀なリーダーとは、どのような存在なのでしょうか? 先にもお話した通り、私は70年に及ぶ長い歳月の中で、幾人ものリーダーたちと交わってきました。彼らの誰もが個性的で、誰一人として似ている人はいませんでした。 この経験から私が理解したのは、「人はリーダーに生まれない」という事実です。生まれついてのリーダーなど存在せず、リーダーとして効果的にふるまえるような習慣を持つ人が、結果としてリーダーへと育つのだ、と。
ならば、リーダーとして効果的にふるまえる習慣とは、いかなるものなのでしょうか。 まず誤解を解いておきたいのは、自分が先頭に立って事に当たり、人々を引っ張っていく姿勢など、まったくもって必要ないということです。 有能なリーダーに共通する習慣の一つめは、「やりたいことから始めることはない」ということです。彼らはまず、「何をする必要があるか」を問います。
第二次世界大戦が終幕を迎える直前、1945年の4月に大統領に就任したハリー・S・トルーマンの例を引きましょう。 史上唯一、四選され、偉大な大統領と称された先代、フランクリン・デラノ・ルーズベルトの死に伴い、アメリカのトップに立ったトルーマンは、国内問題には非常に関心を持っていたものの、外交問題についてはまったく知識を欠いていました。しかし、スターリンやチャーチルらとの会談で外交政策の重要性を認識した彼は、すぐに経験豊富な人材を探し出し、国務長官と国防長官に任命、その後の4年間、毎日朝の2時間を外交問題のレクチャーを受けるために当てたのです。国務長官と国防長官からそれぞれ1時間ずつブリーフィングを受け、「何をすべきか」を考え抜いたのです。 大統領に就任した時、トルーマン自身が最も実行したかったのは、ルーズベルトが志半ばでやり残していった「ニューディール政策」の完遂でした。先代の遺志を継ぎ、自らも信奉する経済政策を国内で推し進め、社会改革を実現する――トルーマンはアメリカ国内の問題にこそ、傾注したかったのです。 しかし彼は、「自分がやりたいこと」への誘惑に打ち克ち、風雲急を告げる国際社会の難局を切り抜けるべく、喫緊の課題である外交政策――いますべきこと――を断行することを決意しました。 「何をしたいか」ではなく、「何をすべきか」を考えて行動したトルーマンは、最高にして最大の功績を残した大統領であると言えるでしょう。歴史はルーズベルトを讃え、トルーマンを過小評価するきらいがありますが、実際の序列は反対にすべきである、と私は考えています。】
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ピーター・F・ドラッカーさんは、1909年オーストリア生まれの経営学者・社会学者です。「現代経営学」、あるいは「マネジメント」 (management) の発明者と呼ばれているそうです。ドラッカーさんが亡くなられたのは、2005年11月11日でしたから、ちょうど1年が経つのですね。 ここで語られている「リーダーとして効果的にふるまえるような習慣」というのを読んで、僕はちょっと意外な感じがしました。いや、僕が日頃抱いている「リーダーの必要条件」って、「みんなを引っ張っていけるようなカリスマ性」とか「新しいアイディアを思いつくこと」だったものですから。 ドラッカーさんは、そういう「目立つパフォーマンス」などは、リーダーにとってはあまり重要ではない、大事なのは、「自分がやりたいことではなくて、自分がやるべきことをやること」だと語っています。僕がメディアを通して知っている「カリスマ経営者」には、「自分がやりたいことを信念を持ってやっている」という人が多いような気がするのですが、結局それではまとめるべき組織が大きくなればなるほど、周囲との歪みが大きくなっていく、ということなのでしょうね。 「やりたいことをやって成功させる」というのは、非常に心地よくて、正しいことのように思えるし、自分の立場が強くなればなるほど、その誘惑というのも大きくなっていくのでしょうが、「やりたいこと」というのはあくまでも「主観」の産物でしかありませんから、一度レールを外れてしまうと、現実とのズレも大きくなっていく一方だろうし。
僕は「たくさんの人をまとめるリーダー」ではありませんが、これを読んで、あらためて、「僕は、自分が『やるべきこと』を意識しているだろうか?」と考えました。実際は、忙しい日常に追われ、「自分がやりたいこと」すらわからなくなっているのです。でも、今後は、少しずつでも「自分のやりたいことではなくて、やるべきこと」を意識してみようかな、と思っています。そのためには、自分をもっと客観的かつ大局的に見るようにしなければならないでしょう。
「自分は人をまとめたり、引っ張っていくのは苦手だから」と言い訳をしてしまいがちなのだけれど、本当の「リーダー」にとって大事なのは、他人に対する態度ではなくて、自分自身への「姿勢」なのです。
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