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2006年08月23日(水) ■ |
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『どんなタイプの人が好き?』のナンセンス |
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「NAMABON」2006年8月号(アクセス・パブリッシング)の辻よしなりさんの連載エッセイ「バイブルはもういらない」第46回より。
【「どこが好きかと問われて、ここが好きと言えるのは、本当の恋ではない!」 人を好きになるとき、何を考えて心動かされるか? それは、容姿だったり、性格だったり、仕事をする強さだったり、笑顔だったり、人それぞれの理由は千差万別だろう。 『彼は優しいから……』 『彼女は一歩下がってくれるから……』 なんて話をよく聞く。自分の場合も、胸に手を当てて考えてみたりすると、似たような答えが返ってくることが多い。 しかし、そんなことをいっている段階では、まだ運命の人には出会えていないと、尊敬する先輩が言っていた。 人生を共に過ごしていく相手とは、好きになる理由の見つからない人だそうだ。何故か心惹かれる。他人にはわかってもらう必要がない、自分が満足できればそれでいい。条件をつけてそれに見合った人を探そうということ自体が、自分に嘘をつくことにつながる。 『どんなタイプの人が好き?』 こんな異性との会話の常套句は、ナンセンスだということなのだ。たまに、 『好きになった人が好き!』 とあっけらかんと言う人がいるが、これ稚拙なんじゃなくて、真実を突いている言葉なのかもしれない。 私には経験がない。 眼が大きいとか、脚が長いとか、ユーモアがわかるとか、一緒にゴルフに行けるからとか……。そんな感情でしか女の人を好きになったことがなかったと思う。 理由のない恋愛。 何故だか心惹かれる相手は、はたして私の前に現れるのだろうか。いろいろ小さいことに囚われずに、まっさらな状態で女の人に遭遇できるのか? 自信は全くない!】
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「どんな人がタイプなの?」という質問に対して、『好きになった人がタイプ!』って答える女性ってけっこう多いですよね。なんとなく「はぐらかされてるなあ……」という感じだし、話を続ける糸口もつかめないので、そんなふうに答える女性はちょっと苦手だったのですが、この文章を読んでみると、それもひとつの「実感」なのかな、という気もしてきたのです。 例えば、「お金持ちだから」「優しいから」というような「他者とのスペック比較」により誰かを好きになった場合は、「よりお金持ちな人」「もっと優しい人」というのが目の前に登場してくる可能性は、けっしてゼロではないはずです。そうなると、結局「上位機種」に心が移ってしまうのも、自然なことなのかもしれません。まあ、購入する側にも「愛着」とか「懐具合」ってやつもあるのでしょうけど。 実際は、「好みのタイプは○○」なんて公言している人も、必ずしもその宣言どおりの人と交際しているとは限らないし、「ゴルフに一緒に行けるから」というような理由だって、本当は、「うまく説明できないけど好き!」な人に「一緒にゴルフに行ける」というプラスアルファが加わっているだけなのかもしれないのです。自分では、その「付加価値」のほうを「好きな理由」だと思い込んでいるだけで。 だって、「一緒にゴルフに行ける人」とか「優しい人」なんていうのは、それこそ、星の数ほどいるはずなのだから。 「ハードなスカトロプレイを一緒にやってくれる」とか「ネットゲームを不眠不休で24時間一緒にやってくれる」というような、レアな「共通の趣味」ならともかく。
ただ、「何故好きになったのか、理由がわからない人」のほうが、確かに、ずっと付き合っていくには退屈しないような気もします。一生かけて、その「理由」を探すっていうのも、悪くないかも。
実際は、「なんでこんな人、好きになっちゃったんだろう……」と本気で後悔してしまう場合も、珍しくないのだけれど。
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