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2006年07月09日(日) ■ |
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有権者の抱く「理想の政治指導者像」 |
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「必笑小咄のテクニック」(米原万里著・集英社新書)より。
【秋には総裁選も予想されますので、有権者の抱く理想の政治指導者像についてアンケート調査を実施します。
1.非合法の金融業者や暴力団関係者との並々ならぬ間柄について噂が絶えない。病気持ち。妻以外に愛人が2人。ヘビー・スモーカー。毎日マティーニを8〜10杯引っかけている。
2.二度も免職されたことがある。夜更かしで正午まで寝ているクセが抜けない。学生時代には麻薬を吸っていた。毎晩ブランデーを1本飲み干す。
3.勇猛果敢な軍人としていくつかの勲章を授与されている。ベジタリアンにして非喫煙者。酒は、ビールのみを愛飲している。マフィア、刑事犯、マネーロンダリング、その他の不法行為とのいかなるかかわり合いも疑われたことがない。贅沢嫌いで生活はつましい。
以上のように3人の有力政治家の皆さまのキャラクターを記しましたので、理想とする政治家の番号を○で囲んでください。あなたの貴重なご意見は、総裁候補選出に際して必ず参考にさせていただきます。ご協力ありがとうございました。なお、各番号に相当する政治家は、次の方々です。
1.フランクリン・ルーズヴェルト 2.ウィンストン・チャーチル 3.アドルフ・ヒットラー】
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僕は、「3だろ、当然」と思いつつ読んでいたのですが、最後のオチを読んで驚いてしまいました。もちろん、人間にはいろんな面があるのですが、「私生活や嗜好」という観点からみれば、この中では、ヒトラーがいちばん「理想の政治家像」に近い、という人が多いのではないでしょうか。 米原さんは、この話を「小咄」として書かれているのですが、果たして笑っていいのかどうか、ちょっと考え込んでしまう話ではありますね。 一般的に、政治家というものは私生活もクリーンであってほしいと思われがちなのですが、こうして、私生活(の一部)だけを抜き出してみると、歴史に残る偉大な政治家が女性関係にだらしなかったり、酒びたりだったりというのは、けっして珍しいことではないみたいです。かなり旧い話ではありますが、カエサルは「借金踏み倒しの名人」だったそうですし、現在のアメリカでは、あの「不適切な関係」のクリントン前大統領が、かなり再評価されているみたいです。長い目でみれば、「政治家にとって、私生活なんて、大きな問題ではない」のかもしれません。 逆に、「歴史に対する大犯罪者」であるはずのヒトラーは、その私生活においては、かなりクリーンな人物だった、ということになります。もしかしたら、そういう「潔癖な面」の反動として、あのような暴挙の立役者となってしまったのでしょうか。それはもちろん、本人にしか(もしかしたら、本人にさえも)、わからないことなのですけど。 こういうエピソードからすれば、愛人問題であっという間に首相の座を追われたU元総理などは、そのまま首相の座にいられれば、「大政治家」になっていた可能性もありますよね。 ただし、「私生活がだらしない大政治家もいる」からといって、「私生活にだらしなければ、大政治家である」というわけではないんですよね、残念ながら。
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