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2006年03月04日(土)
ライブドアの「儲からない本業」

「週刊SPA!2006.3/7号」(扶桑社)の特集記事「巷に溢れる『ネットで楽して大儲け!』の落とし穴」より。

(「ライブドア社員が語る〜いかに儲からない本業を地道にやってきたか」という項の一部です。個人を特定されないために、複数の社員の話を編集部で総合したものだそうです)

【ホント儲からないですよ。例えばウェブ制作は、1ページの制作費が5万円ぐらい。それで最低5人が動き、外注のギャラや経費も賄うんです。ウェブはいくらでも直せるので、プログラム変更まで必要な修正作業を延々と依頼してくるお客さんもいます。コンサルまでやれば利益は出ますけど、そんな案件ばかりではないですしね。
 ポータルの「ライブドア」も大変。150万人の会員がいるライブドアブログのサーバーだけでも維持費が凄いですし、メンテナンスも多い。今、トップページの一番高い広告が、1週間で150万円。ヤフーは480万円です。広告費はページビューで決まるので、堀江さんがメディアに出てたのは「無料のCM」だったんです。
 広告の営業も設けるのは大変みたいです。マージンは、自社ポータルが40%、他者媒体は15%、例えばヤフーの一番安い40万円の広告を取ると、入るマージンは6万円。それで、月1000万円近く売り上げないと目標に到達しないとか。朝10時出社で、四季報などで新規のアポイントメントを入れて、スーツ姿で夜まで外回りらしいですから、IT企業なんてイメージはないですよ。
 ライブドアは、経費も厳しいです。固定電話はなくてPCに入れたIPフォンだし、ボールペン1本買うにも3社から相見積もりを取る決まりなので、自腹で買うほうが早い。家賃を半分、上限月7万まで補助してくれるけど、残業してもタクシー代は一切出ない。机はヤフーのお下がりです。年収は高い人もいますけど、低い人だと300万円なんてこともあります。ストックオプションも、今となっては単なる紙くずですしね(苦笑)。
(それだけ薄利でカツカツなのに、数字上は儲かってておかしいと思わなかったか?と聞くと)
 メディア(ポータル)事業部が大赤字なのはわかってました。問題になっている「子会社の利益つけ替え」も、何となく知ってはいたけど、グループ内だから問題ないのかな?ぐらいに思ってたんです。
 ファイナンス部門だけが儲かっていたのは知ってます。社員旅行のとき、ファイナンス部の人だけビジネスクラスだったし(笑)。】

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 なんだか、この話を読んでみると、「ライブドア」の社員も人もまた被害者だったのかな、という気がしてきます。「メディア(ポータル)事業部」の収入というのは、「ウェブ制作」と「広告費」がメインのようなのですが、これらから得られる利益と、150万人もの無料ユーザーを抱えるブログのサーバーの維持費やメンテナンスにかかるコストを天秤にかければ、どう考えても、「大赤字」になってしまうような。いくら広告費を稼ごうにも、ユーザーを不快にさせずにポータルサイトに貼れる広告には限界があるでしょうし、1週間で150万円のネット広告を出そうという企業が、そんなにたくさんあるとは限りませんし。しかし、「IT企業」に就職したつもりが、一日中「広告取り」に明け暮れている営業の人たちは、けっこう大変なんだろうなあ、と思います。結局、営業の仕事というのは、どこもそんなに変わりないのかもしれません。
 このライブドアという会社がダメになってしまった原因というのは、ある意味、「いびつな成果主義」にあったのかな、という気もします。結果として赤字とはいえ、「ライブドア」という企業の知名度を高め、社会的な信用を築いてきたメディア事業部にはこんな「緊縮財政」を強いておいて、その信用を利用してお金を稼いでいたファイナンス部だけが「社員旅行でビジネスクラス」では、会社としての連帯感はものすごく希薄だったのではないでしょうか。それとも、大企業なんていうのはそういうもの、なのかなあ。
 しかし、これを読んでいると、「『本業』では儲からない」ということがよくわかります。現在のように、「無料サービスが当たり前で、ユーザーはお金も払ってくれないのに文句ばかり言っている」という状況では、ああいうやり方しかなかったのかもしれませんが、それを「ネット企業の宿命」で済ませていいものなのか、僕はかなり疑問です。
 さて、これからテレビのように「広告で運営していくメディア」になるのか、それとも、「ユーザーも費用を負担していくメディア」になるのか?
僕は「ネット上のある程度の自由」を維持するためには、少しくらい費用を負担していくのも致し方ないかなあ、と考えているのですけど。