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2006年03月02日(木) ■ |
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配偶者の「匂い」がわかりますか? |
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「怪食対談・あれも食ったこれも食った」(小泉武夫著・小学館文庫)より。
(東京農業大学教授で、醸造学・発酵学・食文化論専攻の小泉武夫さんがさまざまな著名人と「食」について対談されたものを集めた本の渡辺貞夫さんとのやりとりの一部です)
【小泉:「アラバスター」という匂いの測定器がありまして、これはセンサーを照射して臭みの強さを数値で表すことができるんです。鮒鮨(ふなずし)のふたをパッと開けたところに測定器からのセンサーをサッと当てると、470くらい。焼いたクサヤは1200、納豆は230、ボクのはいている靴下、この間測ったら205.納豆の臭さに近い(笑)。
渡辺:小泉さんの靴下、洗いたてでしょ?
小泉:いやいや、ずーっとはいている今の靴下ですよ(笑)。
渡辺:酒の肴に靴下の匂い……勘弁してよ、このへんで(爆笑)。
小泉:世界一臭いのは、スウェーデンでつくられている「シュール・ストレンミング」という魚の発酵缶詰なんです。匂いの強さはなんと8700。まさに地獄の缶詰です。
渡辺:缶詰と言えば、韓国にも臭い魚の缶詰がありましたよね。
小泉:エイですね。これを食べて亡くなる人がいるんですから。韓国で現実に。
渡辺:死んじゃう! あまりに臭くて……。
小泉:そうなんです。ネズミが死んだときに発するような匂いなんですよ。食べると涙がボロボロ出てくる。冠婚葬祭には必ず使います。それと、アルカリ発酵なので危険でもあるんです。
渡辺:怖いなぁ。あれ? なんだかロレツが回るのが遅くなってきたみたい(笑)。
小泉:匂いの話が出たついでに、こんな「研究」結果もあります。日本人は外国人の肌はミルクの匂いがすると言うんです。反対に、外国人は日本人の肌の匂いは、ぬか漬け、味噌汁、魚の匂いがする。そう言いますね。 渡辺:へぇー。そうかな?
小泉:もっと学究的な話をしますと、ある大学で世界の衛生学者や医学者が参加して民族の嗅覚の研究会を行いました。その研究の中で、参加した学者の奥さんの下着を机の上にポンポン置いていった。それで、この下着はどれが奥さんのものが、匂いを嗅いで判定してもらった。その結果はどうだったと思います? 外国人の学者は自分の奥さんの下着をみんな、鼻で当てちゃうんです。日本の研究者は全然当たらない。日本人の嗅覚はダメなんですかねぇ。
渡辺:日本人は肉食じゃないから、匂いにあまり敏感でないのかなぁ。
小泉:匂いは民族性なんですね。】
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「臭みの強さを数値化する」というのは、なんだかあまり実感がわかないような気もするのですが、世界にはいろいろな「臭い食べ物」というのはあるんですね。「シュール・ストレンミング」なんて、クサヤの7倍なわけですから、正直、なんでそんなものをわざわざ食べるんだ…とか、つい考えてしまいます。韓国の臭いエイの缶詰は「冠婚葬祭には必ず使う」ということなのですが、日本で一般的に行われているような「披露宴」の料理にそんな臭いのものが出てきたら、出席者はみんな絶句してしまいそうです。というか、披露宴どころではなくなってしまうのではないでしょうか…「臭い」に対する感覚というのは、本当に文化や民族によって異なるものですよね。日本人が喜ぶ「炊きたてのご飯の香り」なんて、欧米の人たちは全然受け付けないというか、「なんだこの臭いは!」という感じなのだそうですし。
それにしても、ここで挙げられている「学究的な話」には、ちょっと驚きました。「民族の嗅覚」の研究って言うけれど、実際にそれが行われていたときの光景を想像すると、なんだかもう苦笑するしかないような。どういう状態の「下着」が集められてきたのかなどと、つい考えてしまいます。外国人はみんな自分の奥さんの「匂い」がわかるというのは、嗅覚が敏感なのか、それとも体臭が強いのか、あるいは香水を使っている人が多いからなのか? まさか、日本人の研究者は奥さんに近づく機会がないから、なんてことはないですよね……
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