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2006年02月23日(木) ■ |
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「肖像画ビジネス」のお客様 |
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「週刊アスキー・2006.2.21号」の『だってサルなんだもん』(いしかわじゅん著)より。
(いしかわさんたちが「ベンチャーフェアJAPAN2006」というイベントに行ったときの話です)
【ワタシが一番面白かったのは、肖像画ビジネスであった。フィリピンに絵画工場を造って、写真を基に肖像画を生産するのである。 絵を工場で描くってのがすごい。絵にしたい写真をもらって、それをネットを使って途中で手直ししつつ、1ヶ月で完成させるのだ。ファクトリーの写真も見たが、小綺麗な大部屋にイーゼルがずらりと並び、ほんとに工場である。向こうの美大と提携してるそうだが、描いてるのは学生ではないようだ。 「絵の具、薄塗りですねえ」 ワタシはブースにいた眼鏡の中年男に聞いてみた。 「そうなんです、厚く塗ると乾くのに時間がかかるんで」 「画風はみんなこういう写実的なものなんですか」 「日本では写実的でないとうけないんですよー」 やっぱり商売だからなあ、お客様は神様である。 「芸術的にならずに質を高めるように努力してます」 「これって、どういう需要があるんですか」 「最初は、地方自治体の偉い人とかを想定していたんですが、すぐ頭打ちになってしまって、現在一番多いのは、ペットの絵ですねえ」 絵としてはヘボヘボであるが、こういう油絵が高級だと思っている人は多いだろうから、けっこう需要はあるんだろうなあ。いろんなこと考える人がいるもんである。】
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ちなみに、いしかわさんによると「全体に、ベンチャーはわりと地味」だったそうです。おそらく「王道」みたいなやつは、すでに誰かがやっている、ということなのでしょうね。 しかし、こんな「肖像画ビジネス」っていうのがあるなんて、僕は全く知りませんでした。「写実的なもの」を求めるのなら、それこそ「写真撮ればいいのに…」と僕などは思ってしまうのですが、実際は「肖像画を残せるくらい偉い人になった気分」を味わいたい人のほうが多いのかもしれません。現代では、ナポレオンや織田信長のように「肖像画の写真が後世の人々にとっての『本人像』になる」なんてことはないでしょうし、ヘタに美化した肖像画を残しでもすれば、写真と比べられて周囲の失笑を誘うのみ、という事態すらありえそうなのですが。でも、わざわざフィリピンで作ったほうが安くできるのか、肖像画って。 それにしても、現在一番多い注文が「ペットの絵」だというのはかなり意外に感じられました。それこそ、「写真やビデオじゃダメなの?」という感じです。ペット側としても、人間以上に「肖像画を残すという優越感」なんて持っていないでしょうから。一般的にペットの寿命は人間よりもはるかに短いとはいえ、本当に、愛好家にとっては、「王様」なのですね。 まあ、どんなに下手に描かれても、ペットは文句言わないだろうから、いいお客様ではあるのでしょうけど。
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