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2005年11月23日(水)
「シスの復讐」と映画産業の「ダークサイド」

「週刊ファミ通・2005/12/2号」の「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」のDVD発売特集記事より。

(10月にロンドンとロサンゼルスで行われた、DVD特典紹介のための記者会見に出席した3名のコメントの一部で。ちなみに、出席者は、EP1〜3のプロデューサーのリック・マッカラム、パルパティーン役のイアン・マクダーミド、そしてアナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)役のヘイデン・クリステンセンの3名です)

リック・マッカラム
「DVDの収益は、ご馳走にかかったソースみたいなものだろうね(笑)。でも、映画産業が生き延びていける命綱なんだよ。映画を作るための努力、その過程のすべてを収めたかったから、製作には18ヶ月もかけたんだ。ふつうの人に映画作りがいかにたいへんかを知ってもらうのは難しいからね。購入者の90パーセントは特典映像を観ないというが、観てくれる10%の人たちが重要なんだ。彼らをたいせつにしたいんだよ」

イアン・マグダーミド
「ダース・ベイダー役のヘイデンを見るのは不思議な気持ちだったね。私は、ダース・シディアスのマスクを着けて、メイクアップも済んでいたから、『やあ!』と言って手を振って声援を送ることも、雰囲気に合わなくてできなかった(笑)。DVDでそのシーンを観られて嬉しかったよ。ジョージの感激した様子も見れたしね」

ヘイデン・クリステンセン
「カットされて残念だったシーンは、水に浸かりながら床に穴をあけて脱出するシーン。撮影も数日かかったし、巨大な水のタンクを作り、冷たい水の中に入っての演技だった。デジタル化すると一瞬のシーンだったり、アイデア自体が編集で全部カットされることもあるけど、ひとつのアイデアにどのくらいの時間と費用をかけたか、という事実には心底驚かされるよ。マーク・ハミルとは、撮影終了後に会ったんだ。『息子よ』って挨拶したよ(笑)」】

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 日本では、本日発売の「スター・ウォーズ エピソード3」のDVDなのですが、海外では、「DVDの特典紹介のため」に、プロデューサーや主要キャストが出演しての記者会見までやっているんですね。プロデューサーのリック・マッカランさんがコメントしているように、いまや、DVDのセールスは、「映画産業が生き延びていける命綱」になってきているようなのです。
 それにしても、「特典映像」を観る人が、購入者の10%くらいだという話には驚きました。たぶんこれはアメリカでの話で、日本ではどうかな、とも思うのですが、考えてみれば、僕も「特典映像」を一生懸命観た記憶って、あんまりないんですよね。それでも、DVDを購入するときには、つい「豪華特典映像つきのスペシャル・エディション」とかを買ってしまうのです。1000円の差で、こんなに「特典」がついているんだったら、こっちのほうが得だよな、ということで。実際に観なければ、あんまり意味ないんですけどねえ。
 それにしても、この「特典映像」というのは、観られていないけれど、そのわりにはDVDの単価を上げる理由にはなっている、ということなのでしょう。
 「メイキング映像」というのは、確かに興味深いのですが、その一方で、舞台裏がわかると、かえって夢が無くなるような気もします。
 ダース・シディアスがにこやかに笑いながら、ダース・ベイダーに声援を送るシーンなんていうのは、ネタとして面白いのかもしれないけど作品の世界観を壊してしまうものかもしれませんし。
 まあ、「スター・ウォーズ」ほどの長寿シリーズになれば、観客もみんな、おおらかな気持ちで舞台裏も含めて楽しんでいるとは思うけれど。

 ところで、この「シスの復讐」のDVD、僕は正直、「もう出るのか…」という印象もありました。「映画産業」にとっては、いいことばかりのようなDVDなのですが、実は、作品を上映する映画館にとっては、こういう「早すぎるDVD発売」は、頭の痛い問題となりつつあるそうなのです。最近では、レイ・チャールズの生涯を描き、ジェイミー・フォックスがアカデミー主演男優賞を受賞した映画「Ray」が、アカデミー受賞により動員が再度アップすることが期待された矢先にDVDの発売がアナウンスされて、結果的に映画館の観客動員が伸びなかったことが問題になりました。確かに、「DVDが出るなら、わざわざ映画館に行かなくてもいいかな」と思う層は存在するのです。制作サイドとしては、まだ話題性があるうちにDVDを出したいでしょうが、上映館にとっては、まさに死活問題。それこそ、「映画産業は栄えても、映画館が無くなっていく」ことにもなりかねません。それは、「映画産業」にとって、長い目でみて、プラスになるのかどうか。
 DVDこそシスの暗黒卿なのだ!というのは、さすがに極論かもしれませんが……