初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2005年08月18日(木)
儲からない「マグロ漁船乗組員」

「裏ハローワーク」(アンダーワーカー・サポーター・編、永岡書店)より。

(「マグロ漁船乗組員」に関するレポートの一部です。)

【『マグロ漁船に乗れば高収入を得られる』という話をどこかで聞いた人も多いと思う。しかし、誰に聞いても、どこで、どうやって参加すればいいか知らないのだ。そんなところに”裏的”な妄想を抱いてしまう。というわけで、いろいろ調査したところ、宮城県の某漁港で漁師を務め、数年前にマグロ漁船に乗船した経験があるという漁師歴12年の鈴木義郎氏(仮名・30歳)に話を聞くことができた。
「家業が沖合漁業をやってて、オレも高校を卒業したら当たり前のように漁師になった。でも、もっと大きな船に乗ってみたい!と思って、知り合いの船主を紹介してもらって、マグロ漁船に乗ることになったんだ。初めて乗ったときは感動したね!
 マグロ漁船に乗るには、オレみたいに縁故関係だったり、日本全国にある船主協会に問い合わせるとか、農林水産省が補助している機関のHPで求人を公開してたりとか……そういうとこから集まってくるみたい。オレが乗った船にはいろんな人がいたけど、ほとんどが外国人だった」

(中略)

 冒頭にも書いたが、マグロ漁船といえば”儲かる商売”というイメージがある。実際のところはどうなんだろうか?と素朴な疑問を彼にぶつけてみた。
「収入は……多いのかどうかわかんないね。オレの乗った船の場合は毎月の保証(月給)が食費込みで30万だったよ。でもそこから、保険が引かれる。船に乗る前には2年分の身支度をしなくちゃなんないからね、その支度が大変だよ。
 船によっては別途支給というところもあるみたいだけど、オレのところはなかった。タバコや酒とか、自分の嗜好品も準備していかなきゃなんないし。単純に考えて、1日約20時間も働いて、月に30万。ってことは1日1万、時給にしたら500円だよ!?今どきそんなバイトもないよな〜(笑)。
 ただ、マグロがたくさん釣れれば、ボーナスっていうか、給料にプラスされるんだよね。オレのときは大してもらえなかったけど、噂で聞いた話だと月給とボーナス合わせて1回の漁で600万円ももらったって人がいたみたいだね」
 それはつまり、一山当てるチャンスもあるというわけだ。ホントに金に困っていたら、チャレンジしてみるのもいいかな、とも思うのだが……。
「テレビとかでたまに『マグロ漁船に密着!』とかやってるけど、あんなに甘いもんじゃないよ。”借金返すために乗せられてる人もいる?”とかもよく聞かれるけど、実際にはそんな人聞みたこともない(笑)。たくさん釣れればいいけどね、大変なわりに給料もよくないでしょ?実際に乗ってみないとどれだけ金が入るかもわからないし」
 船は10〜20代の若い乗組員が中心。今も漁師を続けているという彼だが、「もう1回乗ってくれって言われたら、考えちゃうな……」とつぶやいていた。】

〜〜〜〜〜〜〜

 鈴木さん(仮名)によると、「自分が乗った船は、外国人がほとんどだった」とのことです。確かに、今の日本で「時給500円」で24時間拘束されて逃げ場のない海の上、なんていう仕事をやりたがる若者が、今の日本にそんなにいるとも思えませんし。もちろん僕もちょっとできそうにありません。「魚がいれば、24時間いつでも働かなくてはならない」というのは、かなり辛い仕事だろうし、ずっと同じ仲間と顔を合わせ続けて生活するというのは、息がつまりそうです。
 「1回の漁で、運がよければ600万円!」と言われても、「600万円」というお金は、簡単に手に入る金額ではない一方で、そのために10ヶ月〜2年間を船の上で過ごすには、ちょっと物足りないかな、という金額でもありますしね。
 それにしても、僕もこの「マグロ漁船の船員」という仕事は「借金のカタにやらされる」というイメージがあったので、この元船員の「そんな人、見たことない」というコメントには意外な感じがしました。大きな借金を抱えてしまった場合、女性の場合は「フロに沈める」(by「ナニワ金融道」)、男の場合は、「マグロ漁船に乗せられる」(こっちは「カイジ」の影響か?)ものだと思い込んでいたのですが。というか、そうでもなければ、そんなキツイ仕事、やる人はいないのではないか、と。
 今は「月30万円でも大金」という国の人たちが雇われているのが「実情」のようです。
 まあ、考えようによっては、ずっと海の上だと遣い道がないから、お金を遣わないですみそうですし、そういう面では「お金が貯まる仕事」ではあるのでしょうけど。
 月に30万円稼げる仕事というのは、そんなに珍しくはないのかもしれないけれど、マグロ漁船の船員ほど「お金を遣わなくてもすむ生活」っていうのは、なかなかないでしょうしねえ。
 「稼ぐ」ことも大事なのだろうけれど、「いかに使わないか」というのが、お金を貯めるためには大事なのですよね、きっと。
 実際は、節約のために「マグロ漁船生活」というのは、あまりにハードだとは思うのですが。