|
|
2005年08月07日(日) ■ |
|
リアリティーがない顔の人 |
|
「ワルの知恵本〜マジメすぎるあなたに贈る世渡りの極意」(門昌央と人生の達人研究会[編]・河出書房新社)より。
【リアリティのない顔の人を信頼してはいけない
リアリティーがない顔の人は信頼できない場合が多い。 どういう顔かというと、何十年も人生を生きてきて、人並みの苦労や努力、体験が色としてにじみでていない顔だ。生きている実感が表に出ていない顔、汚れがない顔でもある。 色がつきすぎた顔、つまり、苦労やうさん臭さが露骨にでている顔も問題ありだが、リアリティーがないのもそれに劣らず問題がある場合がある。 こういう顔は、エリート官僚であるキャリア、アマチュアスポーツのエリート(出身)、ボンボンの二代目社長、医者などによく見られる。 公務員の場合、地方公務員やノンキャリアにも時々見られる。男性に多いが、まれに女性にもいる。 顔つきとしては、ツルンとした表情で、表情に乏しい。喜怒哀楽があまり表にでないのが特徴だ。
(中略)
なぜ、こういうリアリティーがない顔ができあがるかというと、努力はしてきたかもしれないが、たいした苦労をせずともすんなりと高学歴や社会的地位が得られ、それなりに評価されているからだ。しかし、人間性の底が浅い。だから顔に味がない。 公務員の場合には、キャリアであろうがノンキャリアであろうが、一生生活が保障されている。生活の糧を得るための苦労はあんまりしないですむので、感情、情緒が欠落した人がいるのかもしれない。いずれにせよ本質は薄情な人であることが多い。 そのため、社会的地位もあり、いっけんまともな人間に見えるが、ときとしてとんでもないことをしでかすし、平気で人を裏切ったりする冷酷さももっているのだ。】
〜〜〜〜〜〜〜
この「ワルの知恵本」って、ベストセラーになっているらしいですね。今日仕事場の本棚に置かれているのを読んで、思わずひっくり返ってしまいました。そりゃ、けっこう厚い本が500円だから、お得感はあるのかもしれないけれど、書いてあることは、こういう偏見のオンパレードなのだもの。 まさかとは思いたいけれど、これを読んで「そのとおり!」とか頷いている人がけっこういるのだとしたら、なんだか悲しくなってきます。 要するに「なんでもかんでも疑え」って内容ですからねえ。 この文章にしても、「リアリティのある顔」って何だよ?としか思えないのですが、そういう曖昧な概念を出しておいて「エリートや二代目社長や医者には、そういう人が多い」とか言われても、「ハァ?」としか感じません。確かにね、「リアリティのある顔」という概念そのものは、わからなくもないのです。僕が最初に頭に浮かんだ「リアリティのある顔」の人は、作家・椎名誠さん。ああいう大人の男になりたいよなあ、なんて憧れます。でも、僕は今までの人生において、「自堕落な海の男」とか「アルコール依存症になってしまった苦労人」とかもたくさん見ていますから、必ずしも「顔に苦労が出ている人のほうが無害」だとは思えないのです。 汚職をする官僚がいる一方で、善良な人々を悩ませる(苦労してきた)チンピラだってたくさんいるんだし。【いっけんまともな人間に見えるが、ときとしてとんでもないことをしでかすし、平気で人を裏切ったりする冷酷さももっているのだ。】っていうのは、別に顔とかに関係なく、本質的に、人間というのは「そういうもの」ではないかと。 あと、【なぜ、こういうリアリティーがない顔ができあがるかというと、努力はしてきたかもしれないが、たいした苦労をせずともすんなりと高学歴や社会的地位が得られ、それなりに評価されているからだ。】って書いてありますが、いわゆる「エリート」=「苦労知らず」っていうのは、あまりに短絡化された思考でしかないわけで。というか、それなりに評価される人の多くは、それなりに苦労しているわけですよ、僕の知る限りでは。 それこそ、「リアリティのある顔」とかいう人たちが、酒場でクダを巻いているあいだも、仕事をしたり勉強をしたりしているわけで。僕はむしろ自分の感情をコントロールしなくてはならないために「喜怒哀楽を顔に出せなくなってしまった人」の内面に潜んでいるもののほうに、深みというか「リアリティ」を感じることがあるのです。
まあ、いわゆる世間的に「エリートとされている人々」を叩いたほうが売れるんでしょうけど、これがベストセラーとは、世も末、という感じです。 こんなの書いている人や売っている出版社のほうが、よっぽど「リアリティがない」のでは。 どうしてそんなに「他人は苦労してない」と思いたがるのだろう?
|
|