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2005年07月18日(月)
広末さんが休業期間中に考えたこと

「日経エンタテインメント!2005年8月号」(日経BP社)の記事「夏ドラマパーフェクトガイド」の中から、『スローダンス』で2年ぶりに連ドラに復帰された、広末涼子さんのインタビューの一部です。

【インタビュアー:休業したことで、女優として変化したことはありますか?

広末:このドラマもそうですが、軽いタッチの作品のよさをあらためて感じましたね。お休みをしていた時期に、重いテーマのドラマが多かったこともありますが、そういう作品は見ていると疲れることもあるんだなって実感して。
 忙しかったころは、限られた時間を有効に使おうと、自分の出演作以外だと、あえてテーマ性の強いドラマを録画して見ていたんです。それに自分自身が演じるにしても、メッセージ性のある作品にこだわっていた部分もありました。だけど、休んでいたことで視聴者側の気持ちが妙にリアルに感じられた気がします。視聴者はそんなに暇じゃないし、忙しい中で見ているから、毎回入り込んで見るわけじゃないんだなって。】

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 広末さんが出産休業中に考えたこと。
 このインタビューを読んでみると、確かに、『スローダンス』での広末さんは、あえて「軽く」演じているのかもしれないなあ、とも思えるのですけど。
 確かに、送り手としては、やっぱりせっかく演じるんだから、放送するんだから、なるべく「他人を感動させるようなもの」を作りたい、という衝動って、あると思うんですよね。「ふーん」って流されてしまうものより、「感動した!」って言ってもらい人のほうが、多数派のはず。
 僕がこんなふうにネットに書くときだって、ついつい「重厚なもの」を書いて、一生懸命読んでもらいたい、とか、褒めてもらいたい、という気持ちになりますし。
 でも、受け手というのは、常にそういう「メッセージ性のある、重いもの」を求めているのではないのです。まあ、こういう好みは人それぞれなのでしょうが、誰だって、「超大作RPG」で遊ぶよりも、「ボーっとしながらできるパズルゲーム」をやりたい気分のときはあります。ついつい見栄もあって、本屋でも難しい本を買ってしまいがちなのですが、それらの「素晴らしい大作」を読む順番というのは、なかなか巡ってこなかったりするんですよね。同時に買った軽めのエッセイは、どんどん消化されていく一方なのに。
 「メッセージ性のある、重い作品」というのは、受け手のほうにもある種の覚悟と負担を強いる面もあるのです。「スウィングガールズ」なら、ゴロ寝しながらポテトチップを食べつつ観られても、「シンドラーのリスト」を同じような気持ちで観るというのはなかなか難しいものです。たとえそれが、映画館ではなく、自分の部屋であったとしても。

 もちろん、メッセージ性のある作品を否定するつもりはないけれど、その一方で、多くの「メッセージ性」というのは、送り手のひとりよがりになりがちだし、そもそも、送り手がいくら自分の作品を押し付けようとしても、よほど素晴らしいものでなければ【視聴者はそんなに暇じゃないし、忙しい中で見ているから、毎回入り込んで見るわけじゃない】のですよね。

 これって、ドラマだけではなく、ネットの世界でも言えることで、「こんなに毎回気合を入れて書いているのに、なんで観に来てくれないんだ!」と思うようなときに、さらに気合を入れるよりも、かえって、「あえて軽いものを書く」ほうが良いのかもしれません。実際は、そういう「受け手にとって心地よいくらいの軽さ」を出すほうが、はるかに難しかったりするのでしょうけど。