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2005年07月05日(火)
「ハリー・ポッターと8歳の女の子」

共同通信の記事より。

【「続きが読みたい」−。世界的ベストセラー小説「ハリー・ポッター」シリーズを“発掘”したのは、同シリーズを出版する英ブルームズベリー社のニュートン社長の当時8歳の娘の熱意だった。同氏が5日までに英紙とのインタビューで明らかにした。
 シリーズ第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」の原稿は、同社に持ち込まれる前に、他のほとんどの出版社から門前払いを受けていたという。
 ニュートン氏は、著者のJ・K・ローリングさん側から受け取った小説の原稿を8歳の娘のアリスさんに渡した。アリスさんは約1時間後、「ほかのどの小説より、とても面白い」と目を輝かせて自室から出てくると、数カ月間、ニュートン氏に「続きが読みたい」とせがみ続けた。】

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 「まことに残念ですが…不朽の名作への『不採用通知』」という本には、パール・バックの「大地」やメルヴィルの「白鯨」などのさまざまな名作が、出版社に断られたときの「断り状」が集められています。
 この本を読んで、僕が感じたのは、「どんな名作でも、万人に認められるわけではない」ということでした。パール・バックの「大地」なんて、「残念ながら、わが国の読者は、中国のことなどに興味はありません」と断られていたりしますから、実際に出版するとなると作品の善し悪しとともに「これは売れるか?」という現実的な問題もあるのでしょうし。
 そもそも、今の出版業界の現状からして、第1作を読んだ編集者が、内容以前に、「子供向けのファンタジー小説なんて、この御時勢に売れないだろ…」と考えたとしても、いたしかたないような気がします。根強い読者がいるジャンルではありますが、採算ラインに達するのは、なかなか難しいはず。ましてや、J・K・ローリングさんは、「ハリー・ポッター」以前は、全く無名だったのだから。
 実際に出版されてみたら、ここまで大人たちも喜ばれているのは、出版社側にとっても「想定外」だったのではないでしょうか。

 ところで、この話でもうひとつ感じたことは、物事の「評価」というのは、意外と「それをもっとも利用している人」がやっているわけではないのだな、ということでした。ニュートン社長がこの大ベストセラーを世に出して、自らも大成功を収めることができた理由は、彼が、自分の感性にだけ頼るのではなく、8歳の娘さんに、この原稿を読ませたことにあると思うのです。たぶん、それまでの編集者たちの多くは、「子供に宛てた作品」であったはずの「ハリー・ポッター」を、「編集者としての大人の感性」で評価していたのでしょう。そして、「こんなの売れない」とか「子供騙し」とか思っていたのかな、と。
 「ハリー・ポッター」は、作品の大きな魅力+ちょっとした運で、大ベストセラーとなりましたが、実際は、作品そのものには十分な力があるのに「評価してもらう相手を間違えている」ために、埋もれてしまっている才能というのは、たくさんあるような気もします。良い作品を完成させることも大事ですが、それだけではなくて、「あきらめない」ということや「誰に読んでもらうかを考える」ことって、創作者にとっては、ものすごく大切なのでしょうね。