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2005年02月26日(土)
掲示板の中の優しい人々

読売新聞の記事より。

【国公立大の2次試験が始まるなど、入試シーズンも終盤を迎えているが、インターネット上の掲示板への書き込みが、大学入試や技能検定試験に大きな影響を与え、関係者が対応に苦慮している。
 
 「最後(の質問)は『自販機がたくさんあるけど、どう思いますか?』だった気がする」「コンパクトディスク(CD)のコピーガードについてだった」
 財団法人「日本英語検定協会」(東京・新宿)が英検2級の2次試験を実施した今月20日、国内最大級のネット上の掲示板サイト「2ちゃんねる」に、試験開始直後から、こうした書き込みが相次いだ。
 2次試験は、受験生が英文とイラストの描かれた「問題カード」をその場で渡され、黙読後、面接委員の質問に答えるという形式だったが、書き込みは出題内容をそのまま告知するものだった。
 早々と試験を終えた受験生が書き込んだとみられるが、流出後に面接に臨んだ受験生は、出題内容を事前に知り得たことになる。流出はその後、同じ日に行われた準2級と3級でも確認された。
 「2ちゃんねる」は幅広いテーマを対象に匿名で議論できる点が特徴だが、少年事件の加害者の実名や顔写真が掲載されるなどのトラブルも少なくない。同協会関係者は「サイトの存在は常々意識していたが、こんな形で流出するとは……」とため息をついた。
 書き込みを巡る“騒動”は1月15、16日に実施された大学入試センター試験でも起きた。
 初日の英語の試験が始まる8時間以上も前、「2ちゃんねる」に「マイネムイズケヴィン」との書き込みがあり、試験では実際に「ケヴィン」を主人公とする長文問題が出題された。翌日の国語でも事前に出題内容を示唆する書き込みが見つかり、センター側は「偶然としか言いようがない」と流出を否定しながらも、警察に対応を相談する事態に発展した。

 一方、同じセンター試験の「国語1」では、教科書に載っている文章がそのまま出題されるという前代未聞のミスが起きたが、これを指摘したのも「2ちゃんねる」の書き込みだった。】

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 「英検問題流出事件」について、担当者へのインタビューをテレビで観たのですが、その担当者は、「受験生の良心に頼るしかない…」と、困惑気味に話していました。こういう「問題流出」を予防する措置としては、受験に時間差があるのが問題なのですから、「全員一斉受験」にしてしまえば問題なさそうな気もするのですが、それをやろうとすると、単純に考えれば、試験官の数が2倍必要になるわけですから、主催者側としては、ちょっと難しいのでしょうね。いっそのこと、時間ごとに別々の問題にしてしまうという手もありそうですが。
 それにしても、今回の件に関して僕が思ったのは、「2ちゃんねる」には、いい人が多いのだなあ、ということでした。だって、考えてもみてください。「名無しさん」にとっては、掲示板に問題を書き込みすることに、何かメリットがあるのでしょうか?
 いや、これがお金を貰ってやっている業者であるとか、友達同士というのなら、話はわかるのです。そのこと自体は悪いことですが、「理由」とか「目的」というのは理解可能。
 確かに、「名無しさん」としては、そうやって掲示板に書きこむことによって、「神降臨!!」とか言われるのは気持ちいいのかもしれないけれど、自分が受けた試験でそれをやるのは、リスクのわりにメリットが少なすぎるような気がするのです。
 もしそれで、他の人の成績が平均的にアップしてしまったら、自分が落ちるかもしれないし、不正が発覚したら、試験そのものが無効になってしまうかもしれない。自分本位で冷たい発想かもしれませんが、「どうしてそこまでして、『2ちゃんねる』に問題をリークするのだろう?とか思うんですよね。普通、まずは自分がかわいいのではないだろうか……

 そういう意味では、こうやって問題をリークする人というのは、まさに「神」というか、「良心的」なのかもしれません。まあ、そういうのは場当たり的な良心に過ぎない、という意見もあるでしょうけど、少なくともそれで助かった人がいるのも事実だから。もっとも、「不公平」ほど試験というものにとって困った存在はないし、逆に言えば、「比較的公平な条件で行われやすいこと」というのが、人間を評価する際に「試験」という方法が使われる、唯一無二の理由であるような気もします。

 でもなあ、こういうのって「そんな書き込みなんてするな!」と言われれば言われるほど、やる人って増えていくんでしょうね。きっと今までも、携帯電話で問題を友達に教えていた人も、いたんじゃないかな。

 僕はいつも「ネット上の危険な人々」について書くことが多いのですが、こういう話を聞くと、意外と「優しい人」も多いのかな、と思わなくもありません。なんという自己犠牲の精神!
 その優しさ、もっと他のことに使えよ!と試験をする側としては、言いたくもなるのでしょうけど。