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2005年01月08日(土) ■ |
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「有料じゃないと駄目」だと思っていた理由 |
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「はてなの本」(田口和裕・松永英明・上ノ郷谷太一著:翔泳社)より。
(「はてな」代表・近藤淳也さんの30000字インタビューより。聞き手は松永英明さん。)
【松永:「人力検索はてな」が始まったのは2001年7月ですね。そのころにも、質問に答えてもらえるサイトはいくつかありましたが……。
近藤:多少は気になっていましたけれど、有料でちゃんと運営されているところはあんまりなかったんです。一応は有料のところもありましたが、「専門家が答えます」という仕組みだったので、発想としてはちょっと違いますよね。僕は電話番号案内のインターネット版みたいなものを作りたいなと思っていたんで。 無料のところは、回答者の立場が強くて、圧倒的に雰囲気が違うじゃないですか。「そんなのここにありますよ」「前にも同じ質問がありました」とか言われるんですよね。でも、それが検索できないからこそ聞いているんだから、「そういうのを言うのはナシだろ」と思っていました。 逆に、質問料を払っているんだったら、質問者がどんなことを聞こうと別に勝手じゃないですか。だから、無料のところとはてなでは、そういうところがちょっと違うと思いますね。
(中略)
だから、有料じゃないと駄目だと思っていました。無料だったら「別に2ちゃんねるで聞けばいいじゃないか」っていうことになりますし。すでに十分盛り上がっている場があるんだったら、同じことをあえてやっても意味がないです。】
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ネット上でのさまざまなツールは、「無料」というのが大原則だという捉えられかたをしていた時代がありましたし、今でも「有料というだけで、利用する気になれない」という人はけっこう多いのではないでしょうか?僕もやっぱり「これは有料」と言われると、その金額が本当に些細な、それこそ缶ジュース1本分くらいのものでさえ、ちょっと足踏みしてしまいます。 もちろん、お金がもったいないというのもありますが、「ネットで課金して金儲けをしようなんて、なんだか感じ悪い」というようなイメージも少しはありますし。 でも、考えてみると、「タダより高いものはない」という言葉があるように、「無料」というのは、必ずしも利用者にとってメリットばかりではないよなあ、と、この近藤さんの話を聞いて、あらためて思いました。例えば、親戚の家の近くに用事がある際には、もちろん親戚の家に泊めてもらう人だっているでしょうが、自分でお金を出してホテルに泊まる人だって少なくないのではないでしょうか。 それは、「金銭的な損失」と、特別仲が悪くはなかったとしても、「相手に気を遣わせること」や「相手に気を遣わせることに、自分も配慮しなくてはならない」という「面倒なこと」を比較して、結局、どちらを選ぶか、という問題なのです。たぶん僕は、「水くさい」とか言われながら、ホテルに泊まることが多いと思います。 「オレは客だ!」ということで、事あるごとに「主を呼べ!」とクレームをつけるような人はあんまりだとしても、少なくとも「お金を払っている」ということは、ある意味、心理的に優位に立てる面もあります。近藤さんが書かれているように、無料の掲示板などで質問すれば、「過去ログ見ろ!」「激しくガイシュツ」「そんなの常識!」というような酷い目に遭って、「ネット上のコミュニケーション」の性質の悪さに辟易することだってあるでしょう。それは教える側にとっても「善意で無料で教えてやっているんだから」という気持ちもあるでしょうし。 極論かもしれませんが、タダで他人に何かしてあげれば「親切なボランティア精神」という自己満足に浸れますが、それでお金を貰ってしまえば「仕事」になってしまいますしね。 そういう意味では、「お金を介在させることによって、ちゃんとした対応をしてもらえたり、自分が平身低頭しなくてもいいなら、お金を払ったほうがラク」だと考える人は、それが妥当な金額でさえあれば、けっして少なくないと思います。逆に「お金になるのなら、もっと懇切丁寧に対応する」という人もいるでしょうし。 だから、無料=善、有料=悪ではなくて、各人が個々のニーズに合わせて使い分けられれば、それでいいのでしょう。僕も「はてな」を何度か使ったことがありますが、ポイント配分とかがちょっと面倒でしたが、望んでいた答えを100円程度で迅速に手に入れることができましたし(いくらかかるかというのは、その質問の内容によって違ってもくるのですが)。 ただ、課金システムが面倒だったり、セキュリティに不安が残ったりという点では、まだまだ改善の余地も大きいな、とも思うんですけどね。 もうひとつ難点といえば、回答者とのコミュニケーションがけっこうめんどくさいことでしょうか。「回答者へのお礼のコメント」とか書かなければならないような雰囲気は、コミュニケーションツールとしては正解なのかもしれないけれど、検索ツールとしては、ちょっと「気が重い」感じもします。
まあ「ネットは何でも無料」とか言いつつ、実際僕たちはお金以上に貴重かもしれない「時間」をけっこうムダに遣っている、というのも事実なんですが…
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