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2004年11月19日(金)
「サッカーは国と国との代理戦争」って言うけれど…

スポーツ報知の記事より。

【国際親善試合が17日、各地で行われ、イングランドは同国代表主将デービッド・ベッカム(29)、FWマイケル・オーウェン(24)が所属するレアル・マドリードの本拠地でスペインと対戦。地元観客から人種差別のば声が飛び交う荒れ模様の中、0―1でスペインに敗れた。試合後、英国のブレア首相が遺憾の意を表明するなど波紋が広がった。

政治問題に発展? ブレア首相「遺憾」
 レアル・マドリードの本拠地サンティアゴ・ベルナベウが“修羅場”と化した。スペイン代表の国際試合500試合目を記念して行われたイングランド戦は、試合前から殺気にも似た異様な熱気に包まれていた。
 試合が始まると、もはやサッカー場ではなかった。イングランド代表の黒人DFアシュリー・コールがボールを持つたびに、5万人を超すスペイン人サポーターが人種差別を意味するサルの鳴き声をまねる大合唱を続ける。それは後半途中に出場したMFシャーン・ライトフィリップスが出場した際も同様だった。
 レアルに所属するMFベッカム、FWオーウェンが、興奮したFWルーニー、MFランパードら僚友をしきりになだめる。親善試合とは名ばかりのラフプレーの応酬。もはやベッカムもプレーに集中できる状態ではなかった。ほとんど何もできないまま後半15分に交代。「観衆のこういう(人種差別)コールは今まで聞いたことがない。驚いた。全世界のサッカーからこういうことは排除すべきだ」と訴えた。エリクソン代表監督も「ああいう試合中の人種差別コールはサッカーの権威を汚す行為」と憤った。
 試合前日の会見に伏線があった。スペイン代表のルイス・アラゴネス監督が先月、アーセナルの黒人FWアンリ(フランス)に対して発した人種差別発言について、英国人記者が執ように質問を繰り返すと、怒った指揮官が「英国こそ植民地で何をしたんだ?」と過去の歴史を持ち出してやり返したのだ。
 事態を重く見たイングランド・サッカー協会(FA)は17日、この問題について国際サッカー連盟(FIFA)と欧州サッカー連盟(UEFA)に報告書を提出。スペイン協会にも強く抗議した。英国政府もトニー・ブレア首相、リチャード・ケイボーン・スポーツ相が声明を発表する事態に発展した。親善試合が両国に深い傷跡を残した。
 ◆騒動の発端は ことの起こりは、スペイン代表が10月のW杯欧州予選ベルギー戦を前にした合宿中、若手有望株のFWレジェス(21)=アーセナル=に対し、チームメートのフランス代表FWアンリを引き合いに「お前の方があの黒いのよりずっとうまい」と発言。これに対し、英国、フランスのメディアなどが一斉に反発。一時は同監督の解任を求める運動にまで発展した。
 ◆ルーニー暴挙喪章投げ捨て
 【チェスター(英国)18日=森昌利】17日に行われたスペインとの親善試合で、新ワンダーボーイ、イングランド代表FWウェイン・ルーニー(19)=マンU=が、開始からけんかファイトを仕掛け、見かねたエリクソン代表監督に前半42分、交代を告げられた。その際、完全に頭に血が上ったルーニーは興奮。9日に死去した元同国代表主将エミリン・ヒューズ氏のために黒い喪章を付けていたが、ルーニーはこの喪章を投げ捨てる暴挙。18日付の英大衆紙は一斉に「大失態」「馬鹿な少年」と見出しを付け、ルーニーを批判。エリクソン監督は「彼はまだ若い。自分のやったことを知り、反省している」とかばった。】

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 よく「サッカーは、国と国との戦争です!」と解説者席で断言している人(具体的には、ラモスさんとか)がいるのですが、僕はそういうコメントを聞くたびに、そんな「擬似戦争」にまで、勝利を目指す必要があるのだろうか?とか、でも、そういうのが「ガス抜き」になっているのだろうか?とか、考えてみたりするわけです。
 先日の中国の「日本バッシング」とかを観ていると、「スポーツの世界での平等」なんて、所詮机上の空論というか、理想論でしかないのだろうな、なんて思いながら。
 でも、そういう「野蛮な国」というのは、どうやら中国ばかりではなくて、この記事を読んでいると、イングランドとかスペインもそうなのだな、と思えてくるのです。もとはといえば、スペイン代表の監督が、フランス代表のアンリ選手を「あの黒いの」呼ばわりしたことが問題の発端らしいのですが、ここまでくると、もう水掛け論みたいになっていますし。それにしても、このスペイン代表のルイス・アラゴネス監督の一連のコメントというのは、一国の代表監督としては、あまりに幼稚というか、大人気ないものであることは間違いないのですが。
 今回のスペインの観客のリアクションにしても、結局愚弄されたのは黒人選手ですし、そういう意味では「人種差別意識」というのは、根強いものなのだなあ、とあらためて感じさせられました。
 こういうのが「サッカーの権威を汚す行為」であることは間違いないのでです。でも、その一方で、サッカーというスポーツがワールドカップなどを通じて過剰に「国家の威信」に関わっていたり、サッカーの結果が国家間の紛争に発展したりしているのは、そういう「国家間の代理戦争」という一面を、このスポーツが持っているから、でもあるのでしょう。日本人である僕からすれば、イングランドとスペインなんて、そんなに歴史的な軋轢がなさそうな国でさえ(そういえば、エリザベス女王の時代のスペイン「無敵艦隊」の敗戦、なんて歴史的事件もありましたけど)、こんなに大きなトラブルになっているのですから、アジアでの日本と中国の競技場での軋轢なんて、いたしかたないことなのかな、という気もします。
 それにしても、「サッカーは国と国との戦争」であるならば、そこまで「代理戦争に勝つ」ことにこだわる必要があるのかな、と思ってしまうのも事実です。結局、人間っていうのは「争い」が好きな動物で、サッカーで代償されているうちは、まだマシなほうなのかもしれませんけどね。