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2004年10月19日(火)
自殺予防に、魚を食べよう!?

時事通信の記事より。

【魚をよく食べる人は、そうでない人より自殺のリスクが低い−。こんな研究結果を富山医科薬科大と中国・大連医科大の共同研究チームがまとめ、米国の医学専門誌「バイオロジカル・サイカイアトリー」に発表した。
 研究チームは2002年4月から7月にかけ、大連医科大の救急病棟に入院した自殺未遂者100人と、事故で入院した患者100人の血液を採取。魚の油に含まれる脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の赤血球中の濃度を測定した。
 両群を比較すると、自殺未遂者の方がEPA、DHAとも濃度が低かった。EPAの場合、200人を濃度の低い順に4グループに分けると、第1グループに自殺未遂者が最も多く、濃度が高いほど減少。第1グループの自殺リスクを1とすると、第4グループは約8分の1の0.12だった。
 また、DHAの場合も同様に、第1グループのリスク1に対し、第4グループは0.21という結果が出た。】

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 魚を食べると、自殺する気が失せるのか?(完全に失せる、というわけではなさそうですが…)この記事をちょっと意地悪に解釈すると、そんなふうにもとれますよね。
 しかしながら、この「自殺率の国際比較」を御覧いただければ、世界中でもかなり魚を食べている国のはずの日本人は、世界の自殺率で第10位にランクされており、そのほかの国々を眺めていても、必ずしも「魚を食べている国では、自殺率は低い」とは言い切れない印象があります。いや、言い切れない、というよりは、「関係ないんじゃないの?」というのが正直な感想なのですが。むしろ、民族性とか宗教的な要因のほうが大きいのではないかな、と思われます。
 しかし、「それは、国家間ではそうかもしれないけど、同じ『中国人』というカテゴリーで比較すれば、魚を食べている人のほうが、自殺率が低いんだ」と言われると、そうなのかな、としか言いようがないところもあるんですけど。

 ところで、この記事を読んで「そういえば、僕もあまり魚食べてないよなあ」と思いました。
 考えてみると、「魚に含まれる化学物質の血中濃度」はさておき、「魚を食べる」という行為には、ある種の意味はあるのかもしれません。
 ひとり暮らしが長い僕は、日頃あまり魚を食べる機会がないのですが、ひとりで気軽に入れるような店で魚料理を食べるのはなかなか難しいし、自分で料理するのにはかなり手間がかかりますし、技術も必要です。魚というのは、けっして高級食材ばかりではないのですが、安い魚を美味しく食べるためには、その分時間や手間が必要なことが多いのです。ハンバーガーやラーメンと違って、刺身だけとか焼き魚一品だけで一食を済ませてしまうことは難しくて、ご飯や味噌汁がないと、なんとなく落ち着きませんし。
 ゆえに、僕のひとり暮らしの食卓(というか、食卓なんてほとんど使っていないのが実情だったりするのですが)には、あまり魚料理が載ることはないのです。
 思い出してみると、僕が子供のころの家の食卓には、母親が作ってくれた魚料理が並んでいることが多かったですし(それはそれで、ファーストフード好みの子供は悩みの種だったようですが)、お金あるいは手間がかかる魚料理を食べられる環境というのは、少なくとも毎日ファーストフードの生活より、一般的に経済的にも時間的にも余裕があり、「食卓を一緒に囲む人」がいるという「孤独じゃない」環境であることが多いのではないでしょうか。
 「魚を食べると、自殺のリスクが低くなる」というのは、正直眉唾物だという気がしますが、そう考えてみると、「魚を頻繁に食べられる環境にいる人は、比較的経済的・精神的に落ち着いている場合が多い」(=自殺のリスクが低い)ということは言えるのかもしれません。