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2004年05月28日(金) ■ |
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「自己責任」と「命の使いかた」 |
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日刊スポーツの記事より。
【イラクの日本人フリー記者襲撃事件で、与党が28日、「自己責任」の必要性を強調する一方、野党ではイラクからの自衛隊撤退を求める声が相次いだ。】
産経新聞の記事より。
【「命なんざー、使うときに使わなきゃー、意味がない」。今年一月、イラク戦争取材の経験をまとめて出版した「イラクの中心で、バカとさけぶ」(アスコム)中で、橋田さんは命懸けの取材を続ける自分を鼓舞。その一方、この戦争で命を捨てるのに「意味があるか、どうか?」と自問自答していた。 巻頭の対談で戦場に行く理由を橋田さんは「好奇心ですよ。それがいちばん強い。建前じゃなくて、見たいから見に行く」と説明。「やっぱりドラマチックだから。そこに人が生きて、あるいは死んで。一歩間違えれば自分も傷つくわけですから、それはもうエキサイティングだし」とも話していた。 「ある戦場カメラマンの遺言」と題した後書きではバンコクでだらだらと過ごしていたときに「残り少ない人生を有意義に生きるのだ」との決意を明かしていた。戦争取材については「100%安全といえる日常生活はあり得ない。私の妻もそれを十分理解している」と話していたという。 橋田さんはベトナム戦争、カンボジア内戦、アフガン戦争とこれまで世界各地の内戦や動乱を取材。現在は特派員をしたこともあるバンコクを拠点に活動していた。九三年五月にはカンボジア北西部で武装グループに襲撃、拘束され、現金やカメラを奪われたこともあった。 昨年四月のバグダッド陥落の際には現地からリポートを送り、今年に入ってからも数回イラクに入り、不定期の日刊ゲンダイの「サマワ・リポート」と題した記事を掲載していた。 ファルージャで取材中の昨年十一月、米軍と地元武装勢力との戦闘にまき込まれ、左目に大けがを負ったイラク人少年(一〇)と会い、静岡県沼津市のボランティア団体を通じて聖隷沼津病院を紹介。この少年は六月初めにも来日し、治療を受けることになっていた。】
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「自己責任」とは何だろう?と僕は考えます。 橋田さんに対する世間の反応は、先日の「人質3人組」に比べて非常に同情的ですし、僕自身も悼みとともに、ある種の畏敬すら感じてしまうのです。 「ああ、こういう人生というのもあるのだな」なんて。 もちろん、銃で撃たれたりすれば痛みはあったでしょうし、もし仮に命を奪われずに「人質」にされて自衛隊撤退を要求されでもしたら、世間の反応というのは大きく変わっていたのかもしれませんが。 僕も「3人組」との違いをうまく言葉にはできないし、彼らを分かつものは、「結果としての生と死」だけなのかなあ、などという気もするんですけどね。 そういう意味では、「死人に鞭打つ」というのを是としない日本の国民性というのは、今でも生きているということなのでしょう。
命というのは、誰でもひとつしか持っていないものです。そして、「一度きりの人生だから、あまり危険なことはしないようにしよう」と思う人もいれば、逆に「一度きりの人生だから、人のできないこと、すごいこと、自分が充実感を得られることをやろう」という人もいます。 それは、どちらが正しいとか正しくないとかいうものではなくて、まさに「価値観」の違いなわけで。 どちらかというと「安全策」の生き方をしてきた僕にとっては、橋田さんの生き方というのは、ものすごく魅力を感じるのです。ある意味、そこまでしないと生きている充実感が得られない人生というのは、本人にとっては非常に厳しくて辛いものかもしれませんけど。
橋田さんたちの死は、「自己責任」だと思います。もちろん悪いのは襲撃してくる連中なのですが、橋田さんは誰かに強いられてイラクで活動していたわけではないし、こういう危険性があることを十分に承知していただろうから。 でも、僕は彼らの死は悲しいことだと感じていますし、その「殉職」に敬意を表したいのです。 とはいえ、日本全体のことを考えれば、そんなふうにイラクで活動する人は人質にされてしまうリスクも抱えているわけですし、あまり賞賛できないというのも理解できるんですけどね。 ただ、「自己責任で殉職した人」に対して、国会議員たちが「小泉政権に影響はない」とか、「危険だから自衛隊撤退」とか、要するに「その死をどう自分たちの都合の良いように解釈するか?」という反応しか示さないのは、ほんとうに悲しい。 そんな自分たちの都合の良い解釈を並べ立てる前に、亡くなった人や御遺族に対して、言うべきことがあるのではないかな、と思うのですが。
それにしても、こういう事件が起こるたびに、赤の他人である僕ですら「何があっても自己責任だから仕方ないよ、それも『命の使い方』なんだし」と割り切れないのも事実ではあるんですけどね。 「死んでしまったら賞賛、生きて帰ってきたら罵倒」というのも、ちょっとヘンなのだけどさ。
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