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2003年07月26日(土)
光GENJI、あなどれず。

「村上ラヂオ」(村上春樹・著、大橋歩・画、新潮文庫)より抜粋。

【僕は1960年代に10代を送ったので、ビートルズをデビューから解散まで同時代的に体験したことになる。でもそのときはそれがたいそうなことだとは思わなかった。

(中略)

 高校生のときにはジャズとクラシックにのめりこんでいたので、ビートルズはどちらかといえば敬して遠ざけていた。世間的に人気があったので、「ふん」と思っていた。なにしろ生意気盛りなので、そういうろくでもない態度をとっていたわけだ。でもいくら敬遠しても、ラジオからはビートルズのヒット曲ががんがん流れてくるし、結局のところあれこれ言いつつも、ビートルズの歌が僕にとっての‘60年代のバックグラウンド音楽みたいになってしまった。たいしたバンドであり、たいした曲だったんだなと今では素直に感心する。なぜ若いときにもっと素直になれなかったんだろう?ぶつぶつ。】

〜〜〜〜〜〜〜

 ビートルズと比べれば、遥かにスケールは小さいかもしれませんが、この文章を読んで、僕はあるアイドルグループのことを思い出してしまいました。
 その名は、光GENJI。
 僕が中学生だったころから、全寮制男子校という青春のブラックホールにとらわれていた時代、彼らはまさに人気絶頂でした。
 中学の同級生の女の子たちは、下敷きの中に「諸星くん」の雑誌の切抜きをいれて、休み時間も彼らの話ばっかりしていたのです。
 それに対する、われわれ男子のスタンスとしては、「とにかく光GENJIを罵倒する」というのが主流。
 「あんなオカマみたいな奴ら!」とか「歌がヘタ」「口パク」なんてのが、使用頻度が高かった記憶があります。
 高校に入ってからは、女子の光GENJIファンと闘うことはなくなりましたが、全寮制の男子校なんて環境に閉じ込められた僕たちにとっては、女の子にモテまくる彼らは、まさに「共通の敵」だったのです。
 奴らの悪口なら、夜を徹して語り合えるくらい。

 そして、時が経ち、僕たちは高校時代の同窓会で再会しました。
 みんなが大学を卒業してすぐ、くらいだったかなあ。
 男子校の同窓会ですから、参加者は男オンリー。
 カラオケボックスで、いささか壊れかけながら、ブルーハーツとかを歌っていたのですが、そのとき、同級生がある曲を入れました。
 それは、「パラダイス銀河」
 そう、あの光GENJIの代表曲です。
 そして、僕たちはみんなで肩を組み、「パラダイス銀河」を熱唱しました。
 カラオケボックス内は、それまでで最高の盛り上がり。
 悔しいことに、あれだけ大キライだった光GENJIの歌が、カラオケの画面を見ないでも歌えるのです。あれからもう、何年も経ってしまっているというのに。

 キライキライも好きのうち、とかいうけれど、なんのかんの言いながら、僕たちも光GENJIの曲を聴いていた、ということなんでしょうね。
 そして、やっぱりそれは、「時代のBGM」だったんだろうなあ。

 まあ、村上さんのビートルズに対する回顧の「なぜ若いときにもっと素直になれなかったんだろう?」という心境にまでは至りませんけど。