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2003年07月13日(日)
「美味しそうに食べる才能」が生んだ悲喜劇。


「週刊現代」2003年7月12日号の記事より。

【Q:『くいしん坊! 万才』(フジテレビ系)で、出された料理がマズかった時はどうするのか。
 A:村野さんも言っている通り、マズいケースは多々ある。しかし番組の構成上、「面白い食材の使い方ですね」などと誉めながら食べるしかない。出演者にはキツイ仕事だ。
 「かつて、ある出演者が食べている最中に思わず戻しそうになってしまい、非常に気まずい雰囲気のなか、撮り直しが行われたことがあります」(民放AD)】

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 「美味しいものばっかり食べられていいねえ」と言われがちな料理番組の出演者も、現実はけっこう大変、ということで。
 誰だって、嫌いなものはあるでしょうし、ああいう料理番組で取り上げられる「地元の名物料理」なんてのは、よそ者や若者の口には合わないものだって、少なくはないでしょうから。
 どんなものでも、いかにも美味しそうに食べないといけない、っていうのは、けっこうプレッシャーなんだろうなあ。
 「美味しい」ばっかりじゃ面白くない、なんてよく言われますが、「面白い」とか「不思議な味わい」なんてのは、実際は「これはキビシイ…」という状況で出てくる言葉なのかもしれませんね。
 よく、本当に美味しいものを食べていると、言葉が出ない、なんて言いますし。

 ところで、「美味しそうに食べないといけない」ということで辛い思いをしたことってないですか?
 僕がまだ子供だったころ、親の実家に泊まりに行ったときのことでした。
 そこで、おばあちゃんたちは、遠くから泊まりにきた孫たちのために、とっておきのいろいろな料理を出してくれたのですが、そこはまだ子供の舌ということで、正直、「これはマズイ…」というようなものもあったのです。
 とくに当時、僕は魚の煮付けが苦手で、その土地の名物だという魚の大きな切り身が出てきたときには、もう悶絶しそうでした。
 でも、周囲に気を遣う子供だった僕としては、あからさまに箸をつけないわけにはいきません。そこで、給食で学んだ、「嫌いなものは先に食べてしまって、好物を残して楽しみをとっておく作戦」を実行することにしたのです。
 もう、あまりの辛さに涙を流さんばかりになりつつ、なんとかその巨大な煮付けをクリアー!やった、これでやっと解放される、と思った次の瞬間です。
「あら、もう食べちゃったの?よっぽど気に入ってくれたんだねえ。まだあるから、たくさんお食べ」
「………」
 おばあちゃんの笑顔と、新しい煮付け。
 嫌いな食べ物、リローデッド…
 食べましたよ、結局全部。
 今度は新しいのが出てこないように、慎重に残しながらですが。

 その日の食事のことは、こうして今でも思い出せるほど辛かったのです。
 ほんと、食べ物の恨み(?)は忘れないものですね。
大人になって好き嫌いがなくなったというよりは、嫌いなものを食べなくて済むようになっただけのような気もします。

 美味しそうに食べられるのも才能のひとつ、なんて言うけどなあ…