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2003年07月10日(木)
「2ちゃんねる」からは削除できても、人の噂は…


共同通信の記事より。

【長崎市の男児誘拐殺人事件で、インターネットの掲示板サイトに、補導された男子生徒の実名と称して個人名が書き込まれ、法務省人権擁護局や長崎市教育委員会が「人権侵害に当たる」として掲示板管理者に削除を要請したことが10日、分かった。
 法務省と長崎市教委によると、複数の個人の名前や学校名などが書かれた書き込みのうち、法務省人権擁護局は7件、長崎市教委生涯学習部は約30件について9日、削除を要請。いずれの担当部署でも補導された少年の実名は把握していないというが「特定の個人を容疑者であるかのように書き込むことは人権侵害に当たる」(長崎市教委)などとしている。】

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 「2ちゃんねる」への「ネオ麦茶」の書き込みで知られた「バスジャック事件」のことを御記憶の方は多いと思います。
 今回の記事を読んで、僕は、その事件についてのある出来事を思い出しました。
 僕は当時、その加害者が通っていた学校からそんなに遠くない病院で働いていたのですが、その事件が起こってすぐのある日、ある患者さんから、いきなり、ある中学校のアルバムを見せられました。
 そして彼は、その集合写真の中のひとりの真面目そうな男の子を指差して「こいつが『ネオ麦茶』だよ」と僕に教えてくれたのです。
 いくら加害者保護のために報道規制が敷かれていても、「人の口に戸はたてられぬ」のだなあ、ということをつくづく実感しました。
 彼と同じ学校の生徒や近所の人たちは、「ネオ麦茶」が誰であったかをみんな知っていたのです。
 
 今回の事件では、「加害者」(って呼んではいけないらしいですね、バカバカしい)の少年の情報が、不確定なものも含めて、昨日から某巨大掲示板には書き込まれていたらしいのですが、その名前はひとりじゃなくて、「濡れ衣」をきせられた子供もいたわけようです。これは、削除どころか訴えられてもおかしくないとは思うけれど。
 
 でも、いくら法務省が「加害者の人権を守る」というアクションを見せたって、このネット上に溢れるすべての情報を遮断すること、もっとつきつめれば、近所の人の噂話までシャットアウトすることなんて不可能です。
 実際、法務省だって、それらの書き込みを消したところで、そういった情報のアンダーグラウンドでのやりとりまで抑えられるなんて思ってもいないでしょうし。

 おそらく、この加害者の少年は、これから一生後ろ指を差され続け、家族も地域社会からスポイルされることでしょう。
 それは人権侵害だ!という人もいるかもしれませんが、そういう情報のやりとり、というのは、地域の人々の「生きるための知恵」でもあるわけです。
 好きこのんでリスクの高いところに近寄りたい人間なんて、まずいないでしょうから。
 
 もちろん僕だって、自分の身内が起こした犯罪でそんな目に遭うことを想像すると、非常に怖い気持ちにはなるのですが…
 
 そんな情報をネットに書くことによって、関係ない人たちを傷つけることは許されないことです。
 しかし、その一方、自分の身を守るための情報源として、加害者の情報を必要としている人がいることも確か。
 ましてや、この少年は、たぶんそんなに経たないうちに「社会復帰」してくるでしょうし。

 僕は、加害者の少年に近づきたくありません。
 なぜなら、「怖い」からです。
 
 ところで、この事件について、小さな子供がいる僕の同僚は、こんなふうに言っていました。
 「なんだか、どんなふうに子供を育てたらいいのか、よくわかんないよ。厳しくしすぎてもダメだし、甘やかしすぎてもダメ…」
 子育てに正解なんて、あるはずもないのだけれど…