|
|
2003年05月02日(金) ■ |
|
「日本の癌告知は遅れている!」という数字の嘘。 |
|
共同通信の記事より。
【全国の主な国立病院・療養所で抗がん剤治療を担当する医師のうち、全患者へのがん告知を原則としている医師が6割を超す一方、病名を知らせていないケースでは全体の3割が患者本人に抗がん剤と告げずに投与していることが2日、共同通信の調査で分かった。 調査は2−3月、全都道府県の47の国立病院、療養所で抗がん剤治療を担当する医師に調査票を送って実施。36病院・療養所の医師計78人から回答を得た。 基本的な考え方として「すべてのがん患者に病名を告知する」という原則告知の医師が63%を占めた。 原則告知の立場を取る医師でも患者が痴ほう症など理解力がない場合は告知しておらず、告知していないケースの19%は「抗がん剤と言わずに治療内容や薬の副作用などを説明する」と回答。「家族だけに説明する」(9%)と合わせて28%が患者本人に抗がん剤であることを伏せて治療していると答えた。】
〜〜〜〜〜〜〜
この記事を要約すると「まだ癌の告知は十分に行われていなくて、患者さんに無断で抗がん剤が使用されていることも多い、ということでしょうか。 原則的に(ということは、まず100%ですね)癌の告知をするという医者が6割以上を占めており、残りの医者は、ケースバイケースである、ということですね。 それで、告知していない場合の(これは、記事中にもあるように、本人の理解力が痴呆などで厳しいと判断された場合も含む)3割弱は、抗がん剤ということを説明せずに患者さんに使用しているということになります。 でも、それってちょっと変じゃないかなあ。 ということは、癌だと告知せずに「抗がん剤ですよ」と説明して抗がん剤を使用しているケースが、告知していないケースの7割強? それだと「癌じゃないのに、どうして抗がん剤を使うんですか?」と疑問に思われるケースが多々生じてきそうな気がしますよね。 まあ、現場では、家族の意向で「癌じゃないけど、進行すると癌になる可能性が高いから、抗がん剤で叩きましょう」というような説明になることが多いのですが、これって、「告知」の範疇には入らないんでしょうか。
たぶん、医療従事者にとっていちばん楽なのは、ありのままを言うことです。 もっとも、癌の患者さんの余命などは、状況によって平均的なデータは出せても、絶対確実な予測なんて、今のところ誰にもできないのですが。 「末期の癌です。余命は3ヶ月」とか、「抗がん剤なので、髪の毛が抜けます」とか、ストレートに言えれば、それによって落ち込んで生きる気力を無くしてしまう人もいるのですが、多くの人は、そこから「生きる」ために立ち上がってきます。 でも、現実には「治る希望がないのなら、本人には内緒に」とかいう場合もありますし、痴呆があって寝たきりの方などでは、説明そのものが難しい場合もあるのです。 現在は、医者のひとりよがりな判断で抗がん剤を使うケースなんて、本当に稀なのではないでしょうか? 耳も遠くて痴呆もあって寝たきりのお年寄りに、本人が理解できるまで(できないかもしれないけれど)「あなたは癌ですよ!」と叫び続けることが良いことだと思いますか?
結局、癌や抗がん剤の告知が日本で浸透しきれないのは、ある意味「言わぬが花」という文化というものもありますし、「本人のために隠し通す」という、家族や医療サイドの自己満足的な思い込みの面もあるのでしょう。 実際は、「原則告知」が6割超で、残りの医師4割足らずも大部分は「原則非告知」ではなくて、「治療上や本人の状況を踏まえて判断する」医師たちでしょうから、「告知できない(もしくはしないほうが妥当だと考えられる、もしくは家族が告知を拒否している)」患者さんの3割というのは、客観的にみれば、「言わないほうがいいだろうなあ…」と思われる患者さんが大部分だと思うんだけどなあ。 でも本当は、医療側にとっても患者さんの家族にとっても、結果的にいちばん楽で合理的なのは「事実をそのまま伝える」ということなんですよね。それは、患者さん本人の気持ちを考えなければ、なのですが。
|
|