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2003年02月03日(月)
「宇宙から帰還できなかった人々」の失われた言葉。


「宇宙からの帰還」(立花隆著・中公文庫)より。
(アポロ7号で宇宙体験をした、宇宙飛行士ウォーリー・シラーのインタビューより)
【「宇宙人が地球にやってきたらエイリアンだが、宇宙における地球人もエイリアンなんだよ。地球以外にいきどころがないのが地球人だ」】

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 僕は、アポロ11号の月面着陸をリアルタイムで観た世代ではありません。
 それでも、「1999年に世界は滅ぶ!」という世紀末思想に恐れを抱きながらも、1971年生まれの僕は、漠然とした宇宙への憧れを抱いていたような気がします。
 「21世紀には、海外旅行に行くくらいの感覚で宇宙旅行ができる」とか、スペースコロニーで人類の大部分は生活するようになる、とか。
 交通機関やインターネットの発達で、地球上の人類の間での物理的な距離は、かなり近づいてきた感じ。でも、「宇宙」に関する僕たちの予想は、現代の状況とは明らかに違ったものでした。
 いまだに、宇宙旅行は選ばれた宇宙飛行士たちのものですし(先日、お金を払って宇宙に行った人がいましたけれど、それでも訓練は不可欠です)、宇宙に人間が住むようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。
 というよりむしろ、人類はもう、宇宙へ行くことを必要としてないんじゃないかなあ、と思うくらい。

 人類にとって、宇宙に行くことには、どんな意義があるんでしょうか?
 たとえば、僕がアメリカに行ったときに、痛切に自分が日本人であることを意識したように、シラー飛行士は、宇宙から地球を見て「自分が地球人であり、地球以外に行き場が無い」と感じたのだと思います。
 壁一枚の外には「死」しかない、広い宇宙空間の片隅で。

 より広い世界をみたときに初めて、人間は自分の世界の狭さ、そしてその狭い世界の大切さを知ることができるのかもしれません。

 今の宇宙開発自体が、アメリカという国の国威高揚という面を持っているのは否定できませんが、多くの飛行士たちは、宇宙から還ってきた後に世界観の変化を語っています。 
 
 今回事故に遭った「コロンビア」には、イスラエル人初の宇宙飛行士が搭乗されていました。彼は、出発の際に「悲劇的な歴史をもつ、ユダヤ人の同胞のために宇宙に行く」と発言していたそうです(そのことが、現実的にはまず不可能な「テロによる爆破説」などというのが出た要因でもあるのですが)。
 僕は、このイスラエル人飛行士が、宇宙で何を考え、宇宙から帰還したときに、果たして何を世界に言おうとしていたのかとても興味があったし、それを聞くことができないことを非常に残念に思います。

 彼は「イスラエル万歳!」と言ったでしょうか?それとも…