監督:マイケル・ジョンソン ナレーション:藤井フミヤ(日本版) オススメ度:☆☆+
【あらすじ】 2006年、ドイツ・ベルリン動物園でホッキョクグマが2頭の子供を産んだ。ところが母熊が育児放棄した為に1頭は4日後に死亡してしまう。残った1頭に「クヌート」と名付けて飼育員のトーマス・デルフライン氏は動物園に泊まり込みで哺育にあたった。トーマスの献身的な哺育の甲斐もありすくすくと成長したクヌートは、やがて一般公開されるとその愛くるしい姿に世界中から注目をされる事となる。
【感想】 ベルリン動物園で人工哺育で育てられて大人気となったホッキョクグマの「クヌート」の成長を追うドキュメンタリー。 クヌートの成長を見せるのが一番の柱ではあるものの、その様子と平行して北極に生きる野性のホッキョクグマ親子の育児と成長の様子、それからロシアの西にあるベラルーシ共和国のある森で母熊を喪ってしまったヒグマの兄弟が成長して行く姿を同時進行で追って行きます。
個人的な事なんですが、ドイツの「シュタイフ」という会社が作っているテディベアを集めていましてね、何年か前にシュタイフ社が「クヌートベア」というテディベアを発売したんですよ。 通常テディベアは立たせたりお座り出来るような、いわゆる「お人形さん」の形をしているんですが、このクヌートベアは珍しく四足立ちのリアル小熊の形をしていました。当時は「クヌートベア」が何の意味があって製作されたものなのか知らなかったので「四足立ちは珍しいな」としか思わずに買う気もなかったんですが、今思えば手に入れておけばよかったと(苦笑) (クヌートベアは本社では既に完売しているので、販売店で在庫を持っているか中古でしか今は手に入りません)
いきなり思いっきり話が脱線しましたが・・・そんな訳で小熊ちゃんは物凄く可愛い! ホッキョクグマは現存する地球最大の肉食獣だと言われているそうですが、その姿の美しさも世界一・地球一だと褒めそやされています。 大人になった姿もその優美な様を称えられるホッキョクグマ、その子供が可愛くない訳がない。 それでなくても普通に母熊が子育てしていたとしてもきっと相当な人気者になったであろう事は想像に難くないですが、たまたま母熊が育児放棄したが為に「人工哺育で育てられた可哀想な小熊」という付加価値(嫌な言い方だな)が付いた事で、この運命の小熊・クヌートは世界中から愛され、良くも悪くも注目される事になった訳です。
クヌートを人工哺育するという事に関して、当時反対意見もかなりあったと映画中で紹介されています。 母熊が育児放棄した小熊を人の手で育てるのは自然に摂理に反すると。だから「クヌートを安楽死させろ」という意見があったそうですよ。世の中には恐ろしい事を言う人がいるものです。
これが北極でドキュメンタリー撮影していたターゲットの野生のホッキョクグマの母熊が育児放棄をしているらしい、という事だったら「人間の手を加えてはいけない」と言われても納得出来るんですが、そもそもクヌートは動物園で飼育されているホッキョクグマが産んだ子供な訳ですから。 「自然の生き物を人間が哺育してはいけない」と言うなら、大人になった自然界の生き物を飼育するのも自然の摂理に反するのではないかと。そうなれば世の中の動物園で飼われている全ての動物は安楽死させなくてはならないという理屈になるんじゃないのか?と私は見ていて思ったんですがね(苦笑)
まあそんなこんななトンデモ議論が持ち上がったお陰なのか?クヌートの存在は私達人間に、ホッキョクグマの繁殖・育児は人間でなくとも熊さんご自身で行っても非常に困難であるという事、それからホッキョクグマの生育環境が今著しく悪化していて絶滅の危機に瀕しているという事を認識させるきっかけを与えてくれる事になった。 災い転じて福と成すのか?クヌートは現在「環境保護大使」に任命されて、地球環境保護とホッキョクグマを絶滅から救うためのシンボル的存在となっています。
その地球環境悪化に伴うクマ達の過酷な生育の現状を広く知ってもらう為・・・だと思うのですが、北極で暮らす野生のホッキョクグマとベラルーシに生きる「母熊を亡くした小熊の兄弟」の成長振りも見せてくれる訳ですが、本作は少なくとも映像や構成からその主旨を汲み取れない・汲み取り難い作りだったというのがとても残念に思います。 この手の「可愛い小熊ちゃんドキュメンタリー」は明らかに「親子で夏休み鑑賞」を目的に製作されている為に、子供の目に留まりやすい「小熊ちゃんの愛らしい姿や様子」を見せる事に重点が置かれ、映画の訴えたかった地球の窮状や問題点を浮き彫りにさせるという効果を上げているとはお世辞にも言えない作りだったと思いますね。
多分親子で本作を見に行って、鑑賞後にガキお子様に感想を聞いたらほとんどが「クヌートが可愛かったー♪」という答えしか返って来ないであろうと簡単に想像が付きます。 もっとも、チビッコが人差し指でメガネを持ち上げつつ「ホッキョクグマの生育環境に対する地球規模での意見交換を」等と語り出したら、それはそれで「お、恐ろしい子・・・っ!(驚)」と思ってしまう訳だが(^-^;
「小熊ドキュンメンタリーなんて、どうせ大人は見やしないよね?」という製作者側の思惑が透けて見えるとね・・・ もう少し「大人寄り」な、真面目で学術的な作りでもよかったのになーと思いますよ。 総じて本作、可愛い小熊ちゃんのお姿が見たい方にはオススメしますが、見たからと言って特に何かに啓発されるとか考えさせられるという程のものはありません。お子さんと暇潰しにドーゾ♪って感じですね。
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