2009年05月14日(木) |
スラムドッグ$ミリオネア |
監督:ダニー・ボイル 出演:デーヴ・パテル アニル・カプール イルファン・カーン、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 インドのスラム街出身の青年ジャマールは世界最大のクイズショー「クイズ・ミリオネア」に出演し、あと1問正解すれば番組史上最高額2000万ルピーを獲得出来るというトコロまで来て警察に逮捕されてしまう。理由は「スラム育ちで教養のないジャマールがここまで正解するのはインチキをしたに違いない」というものだった。取調べでジャマールは何故今までの難問を正解出来たのか・・・自分の生い立ちを警察官に語り始めた。
【感想】 インド人作家ヴィカス・スワラップ氏著の小説「ぼくと1ルピーの神様(邦題)」を映画化。 今年のアカデミー賞を総なめにした作品なので、今更説明するまでもなかったですね。書き出しのお約束って事で(^-^;
映画冒頭からいきなり「あと1問」の状態で始まり、「ラスト問題は翌日この時間に生放送で〜♪」な終わり方をした後でいきなり主人公のジャマールは逮捕されちゃう訳です。 「何で俺!?」な状態で逮捕されたかと思ったら度重なる拷問。あいたたた・・・
判っちゃいるけど階級差別の激しいインド。 孤児を引取って両手両足切断して乞食をやらせて金儲けするのが当たり前の国だとは聞いていますが、そんなインド貧困層の実情を主人公ジャマールが自らの生い立ちを語るという手法で赤裸々に観客に見せて行きます。 この国では「貧しい」という事は「罪」ですらあるという実情。宗教差別に遭い、孤児からの搾取を企む大人達から逃げ、自ら盗みや詐欺まがいの事を繰り返しながら何とか這い上がり生き抜こうとする圧倒的な貧困パワー・・・目が眩みます。
その一方で、あどけない子供達の目はランランと輝いている。 幼いジャマールと兄サリームの兄弟達が警察から逃げ惑うシーンが序盤にあるますが、その躍動感、街を駆け抜ける彼らの弾ける生の謳歌を見ていると、心が温かくなって胸がスッとする。 体を不具にされそうになる所を命からがら逃げ出したジャマールとサリームは、その後タージ・マハルでインチキガイドをしたり観光客の靴を盗んでは売り飛ばす事を生業にするのですが、やってる事は相当エゲツないんだけど何故か微笑ましく見てしまう。ともすると「よしっ!上手くやったな☆」なんて応援してたりして。
まあ、自分が東南アジアに旅行に行ってこーいうガキに騙されるとムカっ腹立って仕方ないんですが(苦笑)
本作はジャマールの生い立ちを知ることでインド貧困層の実情を赤裸々に見せるという側面を持ちながら、実はとってもピュアな恋愛ファンタジー物だった。これは意外。意外だけど見ていてワクドキ♪
お互い孤児同士、支え合った仲間だったラティカだけど、汚い大人達から逃げる際に離れ離れになってしまう。 その後も苦労の連続で他人の事なんざぁ〜気に掛ける余裕なんてなかろうと思うのが普通なんだが、ジャマールは仄かに思いを寄せていたラティカの事が忘れられずにずっと彼女の消息を探し続けている。 子供だったから一途なのか、それともジャマールが元々世事の汚れに毒されないピュアな心の持ち主だったのか(多分後者だろう)、とにかくジャマールは幼いながらもいっぱしの「紳士」なのです。
ジャマールと同じ境遇でありながら、早々に悪にまみれてチンピラ風情に成り下がる兄・サリームとの姿が対照的。 でもやっぱりお互い支えあって生き長らえた兄弟なんだよな。兄ちゃんだって生きる為に必死だった。途中までは見ていて胸糞悪くて仕方なかったが・・・真の悪人ではなくて救われる思いがした。
本作、アカデミー賞の歌曲賞・作曲賞・撮影賞等も総なめしてますが、カメラアングルや音楽も本当に良かった。 話は前後しますが、映画序盤のジャマール達が警察から逃げている時のカメラアングル、地面スレスレで昼寝をする野良犬を大写しにしてその背後で子供達が駆け抜けて行く、また頻繁にアングルを切り替えて躍動感・疾走感を出す手法は見ていて気持ちが良かったです。
でも一番気持ちよかったのは、何と言っても映画ラストのスタッフロールで見せてくれるダンスシーンだなぁ! これぞインド映画!「突然ミュージカル」がなければインド映画は面白味が半減だぜっ(笑) ハリウッド発とは言え、ここら辺りをきっちり押さえてくれたダニー・ボイル監督・・・本当にありがとうございました☆
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