監督:森淳一 出演:加瀬亮 岡田将生 小日向文世、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 遺伝子学の研究をする大学院生・泉水と芸術的才能に溢れる2歳下の弟・春は仲のいい兄弟。7年前に不慮の事故で母を喪い父との3人家族だったが、父にガンが見つかり家族は戦慄する。その頃市内で連続放火事件が発生。落書き消しの仕事をしている春は、放火現場の近くに必ず落書きがある事に気付き泉水に相談する。放火との関連性を調べる内にある法則を発見した泉水。そして時同じくして家族の過去に重要な関わりのある人物が街に戻って来たという情報が入る。
【感想】 伊坂幸太郎氏著の大ヒット同名タイトル小説を映画化。 本作は直木賞にノミネートされた事で注目され(受賞はしませんでしたが)、その後も様々なミステリー大賞や吉川英治文学新人賞、本屋大賞、山本周五郎賞等、数々の賞を総なめにしている方です。 個人的にミステリ大好きなので彼の作品は読みたい思っていたんですが、伊坂氏の作品で読んだ事があるのは「魔王」という作品しかない。実は本作も読もうと思って手に取った事は何度かあるんだけど、何故か読まずにいた。 そうこうしてる内に映画化の話を聞いたので「だったら映画先に見るか」てな感じでわざわざ未読でいた訳で(苦笑)
頭脳明晰、家族思いで穏やかな性格だが今1つパッとしない風貌の兄、芸術的センス抜群でちょっと「不思議ちゃん系」キャラだがちょっと暴力的傾向を持ち、更に兄とは似ても似付かぬ超イケメンの弟。 見た目もキャラも全く違うが仲の良い兄弟+父親の3人家族が持つ過去の闇、家族の有り様の根幹となる「過去の事件」とその事件に関わるある人物、そして現在起こっている「連続放火事件」、これらが密接に絡み合って「家族とは何ぞや」と考えさせられる作品。
まあ・・・正直言うと余り好きな話ではないです。←いきなり(^-^; 見た後物凄く重たくなる。体重の話じゃないですよ(判ってるって)、いや体重も相当重いんですが(判ってるって。涙)
カテゴリはやっぱり「ミステリー」なのかな?だからちょっと感想が書き難いんですが。 ミステリオチとしては「連続放火犯は誰なのか」辺りがクライマックスだと思うのですが、コレはかなり初期の段階で大抵の人は誰が犯人なのか察しが付くハズ。 そこが問題なのではなく、「何故放火なのか」「何故グラフィックアートで謎解きを仕掛けるのか」辺りがキモなんじゃなかろうかと思って見ていた訳ですが、それらを繋ぐのが全て「最強の家族」という言葉なんだろうと推察する訳です。
多分原作ではこの「最強の家族」という言葉にもっと重きを置いた表現が成されているのではないか?と思うんですが。 映画中でも仲の良い兄弟の様子や、父を囲んでの穏やかな団欒の風景等を見せて家族の結束を表現していると思いますが、もうひとつ絆の強さを感じさせるパンチが足りないような気がしましたね。
同じ女性でありながら、「あの事件」の後に主人公の両親がした選択は正直理解出来なかったんですが、命には重い・軽いもなければ罪もないという事くらいは私だって頭で理解しているつもり。 生まれながらにして自分が犯してもいない罪を背負わされて生きて行かなければならない「子の苦悩」、それを目の当たりにしながら生きていかなければいけない家族、闇を抱えるからこその「最強の家族」なのか、「絶対悪」というもの(が存在するならば)に対しての贖罪は・・・どれもが非常に重たいテーマだったように思う。
兄は兄で、弟は弟でそれぞれ過去の事件への決別をすべく?それぞれが動き出しているのですが、最終的に彼らのした選択は法的には歓迎される事ではないけれど、個人的にはこの終わり方で良かったと思いましたね。 この作品は「彼らの選択は是か非か」を問うものではないので。
配役が実に良かったですね。 泉水を演じた加瀬亮クンは本当に上手いね。彼は邦画界を支える逸材でしょう!それから春を演じた岡田将生クン、実は余りよく知らない役者さんなんだけど、彼もとても良かった。でも渡部篤郎さんのあの憎たらしい様子ったらどーよ!? 余りにも彼の様子が憎たらしいので、誰が見ても「やっちまえ!」って思えるじゃないですか(笑)上手過ぎですよ。
よくこの難しいテーマの作品を映画化したなーと思いますよ。製作者はとても苦労したんだろうなと思います。 原作を読んでみたくなったものの・・・やはり私には手に負えない重たいテーマだなと。 余り考え込まずに見た方がいいのかな?でもサラリと流せるような話じゃーないしなぁ。うーん。
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