監督:マキノ雅彦 出演:中井貴一 木村佳乃 木下ほうか、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 上方落語界の重鎮・笑満亭橋鶴が今正に息を引き取ろうとしていた。それを見守る弟子達は、最期の師匠の願いを聞き届けようと虫の息の師匠に問う。すると師匠は「そそが見たい」と言うのだ。驚く弟子達だが何とか願いを叶えようと、おとうと弟子「橋太」の嫁・茂子を説得。茂子は意を決して師匠に「そそ」を見せるのだが、師匠は「そそ」ではなく「そと(外)」が見たいと言ったのだった・・・その後程なくして亡くなった師匠の通夜、弟子達が集まって「寝ずの番」をする。
【感想】 俳優・津川雅彦氏が自分の母方「マキノ」姓を名乗りメガホンを取った、監督初作品。 本作自体は中島らも氏著の同名タイトル短編小説3部作を映画化しています。ちなみにお約束通り原作未読(^-^;
流石の芸能名門一族!津川さん、もといマキノ氏の人脈で恐ろしい程豪華な役者が揃ってご出演。 メインキャラは言うに及ばず、師匠のお葬式に弔問に訪れるというチョイ役であんな人・こんな人が実名で出演。こういうのを見るにつけて人脈というのは金にも勝る宝だなぁと、改めて思わされますね。 ・・・と、いきなり年寄り臭い事を書いてしまいました(苦笑)
それと言うのも、本作は鑑賞ターゲット層が非常に限定されていると思うからですよ。 本作、文部科学省認定作品であるにも関わらずR-15のレイティングが付いている。何か猛烈に矛盾してる気がしなくもないのですが、映画を見ればレイティングが付くのもさもありなん・・・とにかく下ネタ連発、ってか下ネタ9割?(笑) とてもじゃないけど健やかにお育ちあそばれるお子様に見せられる内容ではありません。大人の、しかもこの手の下ネタを大らかに笑い飛ばせるだけのユーモアを許容出来る方じゃないと楽しめない。
そんなこんなで、下ネタ上等!なぴよは大笑い(笑) 映画冒頭から飛ばしてますから〜。上の【あらすじ】にも書きましたが、師匠の最期の願い「外が見たい」を「そそが見たい」と聞き間違いして遁走する弟子達の真剣な様子が、何とも滑稽でユーモラス。 ちなみに「そそ」と言うのは「女性陰部」の地方隠語(京都の方言?)だそうです。聞いた事がありませんでした。 最初は「粗相(おもらし)の事?」と思ったんだけど、似て非なり。でももしかしたら語源は同じなのかな?
いよいよ師匠がなくなってからは、通夜を徹夜で死者の傍で語り明かしす「寝ずの番」を弟子達がする様子を見せる。 昔はどこのご家庭でもお通夜の晩は親族や近親者・縁者が集まって徹夜で死者の思い出を語りながら酒を酌み交わして番をしたものですが、最近ではこういう風習は廃れて来ているかもしれません。 本作は、その「古き良き弔い」の様子を何とも楽しく「お下品」に見せてくれます(苦笑)
犯罪スレスレのネタから果ては「遺体とラインダンス」まで繰り広げるという、ちとやり過ぎな感はあるものの、本作のいいところはどんなお下劣なエピソードも、どんなバカ騒ぎも、何もかも「故人を愛し慕う気持ち」がひしひしと伝わる事。 愛するが故、慕うが故、「本当にどーしようもない師匠だった」と語る弟子達の優しい眼差しが胸を打つ。往々にして故人を偲ぶ時に語られるエピソードというのは「失敗談」や「呆れた話」のようなネガティブネタが多い。でもそれは「故人とそれだけ近しい間柄だったから語れる」という気持ちから発せられるのだと思いますね。
本作を見て「死者を冒涜するような」と思うような方は、もしかしたら近親者を亡くした事がないのかもしれない。 この映画のネタは、自分の身近な人を亡くして「寝ずの番」をした事のある大人だったら、笑って頷けるでしょう。故人の生前の横暴ぶり、やんちゃな英雄譚を笑って語る事、それはもっとも故人が喜ぶ弔いなのだと大人は知っている。
ネタはエロ全開だし、少々ネタが被って冗長な感はありますが(一番弟子の弔いシーンはなくてもいいような?)、本作の根底に流れる「古き良き日本人のお弔いの気持ち」には、見終わった後に何か清々しいものすら感じさせてくれました。 ・・・清々しい、と言っても「エロ全開」ですからね。とりあえず笑っちゃって下さい(^-^;
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