監督:中原俊 出演:ミムラ 津川雅彦 益岡徹、他 オススメ度:☆☆
【あらすじ】 幼少時に叔父の影響を受けて落語の世界を目指すようになった香須美。大学の落研で学生コンクールを総なめにした彼女は、プロになる為に子供の頃から憧れていた三松家柿紅の門を叩くが「女の噺家はいらない」と無碍に断られる。唯一そんな香須美を拾ってくれた師匠が「三々亭平佐」、だがこの師匠が一筋縄ではいかない「奇行・蛮行・破天荒」の三拍子が揃った人物。ある問題を起こし寄席に出入り禁止状態の師匠は、ある日突拍子もない企画に着手するのだが。
【感想】 新鋭作家・永田俊也氏著の同名タイトル小説を映画化。 奇しくも先日マキノ雅彦監督の「寝ずの番」を鑑賞したばかりですが、本作ではマキノ雅彦ではなく役者の「津川雅彦」として本作の主人公・香須美の師匠役でご登場。ネタも「落語界」を描いているという点でも被ってます。
日本の古典・伝統芸能の世界は、今でも完全な「男社会」と言っても過言ではないでしょう。 落語の世界もまた然り。もちろん女性落語家が全くいない訳ではありませんが、「ほとんどいない」と言って異論はなかろうかと思います。本作はそんな「THE・男社会@落語界」で真打を目指して頑張るカワイコちゃんの孤軍奮闘と成長を見せるというのが主題・・・なんだろうと最初のアプローチを見て思った訳ですがー。←何このもったいぶった書き方(^-^;
主人公・香須美を演じたミムラちゃんはとっても可愛い♪ 可愛いけどセリフも落語もカミカミ(笑)セリフ噛みまくって神!・・・って韻踏んでる場合ぢゃない。 根本的に彼女がこの役やるのはムリがあるんじゃないか?と思わなくもないのですが、とても頑張っているのは判るので百歩譲って良しとしてもですね、津川さんがお上手過ぎて全部持ってっちゃってるのはどうしようもない(苦笑)
津川さんだってキャリアが天と地程違うカワイコちゃん女優さんと比べられても困るでしょうけど、それにしても一応映画の予告やら公式サイト上では「主役」を張ってるハズの女優さんを完膚なきまでに食っちゃったのはなぁ・・・(^-^;
演技でも完全に食ってるけど、内容までまるっと持ってっちゃった。 話は途中までは確かに「男社会の中で孤軍奮闘するカワイコちゃん」ネタなんだけど、中盤以降は津川さん演じる師匠が起死回生を賭けて「禁断の落語」に挑むという話にスウィッチ。 話の最も盛り上がるクライマックスは全てこの「禁断の落語@緋扇長屋(ひおうぎながや)」の語りシーンになる。 この「緋扇長屋」という創作落語は、噺を作った本人のみならず、後にこの噺に挑戦した落語家は全員が全てを語り終える事なく奇怪な死を遂げてしまったという、正に正真正銘の「禁断の落語」という設定。
噺のオチも、そして映画のオチも結構キレイに決まるのですが、せっかく津川さんが素晴らしい演技で落語語りをしてくれていると言うのに、ただ座布団に座った津川さんの映像だけを見せたのでは観客は面白くないだろう、とサービス精神旺盛になってくれた製作陣は、このクライマックスの「緋扇長屋」の噺を、津川さんの「語りナレーション」に被せて映像で見せまくってしまった。これは正直いただけないです。
基本は津川さんが落語語りをしているシーンで噺を提示し、トコロドコロでチラリ程度で「説明映像」が差し込まれる程度に抑えて欲しかったですね。要するにそれ位津川さんの語りは素晴らしかったという事。
「緋扇長屋」の件は横に置いて、改めて本作を考えると・・・ 確かに悪くはない話なんだけど軸がどこにあるのかがさっぱり判らない。ミムラちゃんは本当に主役なのだろうか?この映画は当初思い込まされていた「カワイコちゃん頑張る物語」ではなく、実は「エロいおっさん(コラ)頑張る物語」なのか? 話の序盤と締めはカワイコちゃんが担当して、分厚い中身はおっさん担当。あ、でも締めはカワイコちゃんが確かに出張るけど肝心のオチはまたしてもおっさんが持ってっちゃってたな(苦笑)
そんな訳でどうにもこうにも尻の座りが悪い作りでした。 正直ミムラちゃんでは、津川さんと渡り合うにはちと荷が勝ち過ぎたとしか言い様がないです。 落語って、聴いてる分には楽しいんですけど・・・本当に難しいモノだなぁと思いましたよ。女がなかなかこの世界で大成しないというのが、ミムラちゃんによって証明されてしまう形になってしまいました(苦笑)
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