監督:タナダユキ 出演:蒼井優 森山未來 ピエール瀧、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 短大卒業後、就職浪人でフリーターをしている鈴子は、バイト仲間からルームシェアを持ち掛けられて共同生活を始めたのだが、あるトラブルを起こした末に刑事告訴されて前科者となってしまう。出所して実家に戻るものの居場所のない鈴子は家族に「100万円溜まったら家を出て行く」と宣言し、100万円溜まると自分を知る人のいない土地に行っては家を借り、またその地でバイトして100万円溜まったら他の土地に移動する、という生活を続けるようになるのだが・・・
【感想】 蒼井優ちゃん主演最新作。若手女流監督「タナダユキ」氏が脚本も書いているようですが、この方全く知りません。 出演している役者がナニゲに豪華。上記の面子の他にも脇役で笹野高史さん、佐々木すみ江さん、嶋田久作さん等の舞台畑や名脇役と呼ばれるようないぶし銀役者さん達が数多くクレジットされています。
鈴子は友達もいなくて地味で自分の気持ちを余り表に出さないタイプの女の子。 要するに「1山100円」の目立たない子ね。でもすっごく可愛いから実はクラスの男子からは密かな人気だったり。それが気に入らないクラスの中心的派手な女子グループの子達からは「何アイツ」みたいな目で見られてたりして(苦笑) 結構世の中にこういうタイプの女の子は多そう。で、蒼井優ちゃんはその「どこにでもいそうな地味で可愛い子」をすごくリアルに演じてくれています。もう本当にアナタは可愛過ぎるからっ!!
刑務所を出所するシーンから始まるのでギョッとするのですが、どうして前科者になったのかはその後明らかになる。 正直言って・・・こんな事くらいで本当に刑務所に入らなきゃいけないんですか?ちょっとこの映画のトーンからは掛け離れたイメージがするんですが、自分自身から逃げ出したい・自分の事を知る人がいない街で暮らしたい・誰かと関わり合いになりたくない・自分を知られたくない、という彼女のメンタリティを表すのに「前科者」というのが都合が良かったんでしょう。
まあそんな訳で、鈴子は100万円溜まると見知らぬ土地に行っては家を借りて生活する。 100万あれば結構遠くまで移動出来るし、田舎なら敷金・礼金払ってバイトを見つけるまでの生活費も何とかなる。バイトが見つかったら節約してお金を貯めて、貯金が100万に達したトコロでまた移住するという生活を繰り返す。
ありがちな「自分探しの旅」を全面に押し出すタイプではなく、むしろ逆で「自分から逃げ回る旅」を見せる。 でも、世の中本当に独りぼっちでなんて生きていける訳がない。バイトすればバイト先の同僚や雇い主との人間関係も生まれるだろうし、バイト先の常連客や田舎に住めば馴れ馴れしい老人やご近所さんも現れるだろう。 「自分なんて何の取り得も資格もない、しかも前科者だ」と殻に閉じこもる鈴子だが、行く先々で生活には大して役にも立たないだろう「才能」を認められてはちょっぴり嬉しくなったりする。
誰にも見咎められたくないと思っていても、人と人が交われば必ず自分を見つめて評価してくれる人が現れる。 そういう何でもない、でも人として生きて行く上でとても大切な事を地味〜に、でもジワジワと見せてくれます。
鈴子の弟のネタが平行して描かれていて、最初はこのクソガキ鈴子の弟がウザくて仕方なかったんだけど(をい)、実はこの弟は後にかなりいい仕事をしてくれます。鈴子は行った先々から弟に手紙を書くという約束をするんだが・・・このネタの落としドコロにはグッと来ましたよ。 不動産屋で契約する時に保証人の欄に弟の名前書いてるから「何かあるな?」とは思ってたけど、こーいう事か!
森山未來クンが、何だか妙に感じが良くてぷち惚れた♪(笑) 告白シーンなんて萌え萌えですよ。でもその後の展開が・・・「シフト見てバイト代計算してた」というシーンでオチが直ぐに想像ついちゃったのがちょっと残念だったなぁ、と。でもそれを差し引いてもかなりいい感じ♪(^-^)
肝心のオチは判っちゃったけど、本作は終わり方がとても好きですよ。 コレでベタベタな「お涙頂戴感動抱擁シーン」なんてやられた日にゃ〜ドッチラケになる所ですが、本作は見せ方が本当に上手いと思ったし、観客に色々考えさせるだけの余白を残してくれて、その余白の分量が本当に絶妙でした。 蒼井優ちゃんの一人語りも、見せ過ぎないで余韻の残る演出も、何もかもがツボに入った一作でしたね。
都会の真ん中で独りぼっちでうずくまって生きている・・・そんな就職浪人の皆様(コラ)、そうじゃない方も本作必見です!
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