監督:クリストファー・ノーラン 出演:クリスチャン・ベール ヒース・レジャー アーロン・エッカート、他 オススメ度:☆☆☆☆+
【あらすじ】 地方検事のデントは、正義感溢れる真摯な好人物。ゴードン警部補とデントとそしてバットマンはスクラムを組む形でゴッサム・シティの治安維持向上に邁進していた。ところがそこに「ジョーカー」と名乗る犯罪者が台頭し、ゴッサム・シティは再び混乱に陥る。ジョーカーはバットマンにマスクを取る事を要求し、マスクを取るまで街の人々を殺し続けると宣言。ブルース・ウェインは遂にバットマンの正体を明かす決心をするのだが。
【感想】 全米ではオープニング興行収入が「スパイダーマン3」を抜いて歴代1位となり、今も興収記録更新中&先の見えない恐ろしいメガヒットが確定しているという「バットマン」シリーズ最新作。 また本作でジョーカー役を演じたヒース・レジャーが、本作撮影後の今年1月にオーバードーズ(薬物多量摂取)により28歳で夭折したという事で話題にもなりました。改めてご冥福をお祈りします。
このシリーズ、よくバートン版と比較される方が多いのですが、全く比較対象にはならないですよね。 確かに「バットマン」を題材にしているシリーズなのは同じですが、見せる方向性がまるで違う。本作はあくまでも2005年に日本で劇場公開された「バットマン・ビギンズ」から新たに始まった、過去のシリーズ物とは全く違う作品群だと思って鑑賞した方がいいです。 ちなみに前作「ビギンズ」はめっちゃハマった。だから本作も相当期待値が高かった!
大抵「高め期待値」で鑑賞すると「期待を大きく裏切り・・・」なんて書くのがお約束なんですが(苦笑) 本作に限っては、期待通りどころか「想像も付かないくらい凄かった」と言うべきでしょう。本当に凄かった!!
上映時間2時間32分。映画の尺としてはかなり長い。 でもその長さは全く気にならない。余りに凄まじく、余りに圧倒される。ヒース・レジャーが本作撮影後に夭折したという色眼鏡を外して見ても、それでも尚余りあるジョーカーの凄まじい「底の見えない圧倒的な悪」に本当に胸が悪くなるような、背筋が凍るような、打ちのめされた気分になりました。
ここまで徹底的に嫌悪する悪役キャラがかつていただろうか? ハンニバル・レクター(羊たちの沈黙)やジグソウ(SAW)等、映画ファンが愛する悪役というのは数多くいるけど、彼らにも何か人間らしい「情」のようなものが必ず仄見えていた。 ところが本作のジョーカーにはまるでそういう「人情」らしきものがないのが怖い。心の底から「悪」だけにまみれ、人の心の美しい部分・・・「愛」とか「正義」とか「善」と呼ばれるモノを次々と破壊し尽くす事だけに喜びを感じている。
デントの真摯な正義感を逆撫でていたぶった挙句に、悲しみと怒りだけを飢え付けて遂には「トゥー・フェイス」という復讐のみに心を傾ける邪悪な者に変えてしまったくだりには、本当に胸が塞ぐ思いがしました。 唯一本作で希望を持たせてくれたのは「2艘のフェリーに乗った乗客達の究極の選択」シーン。でもコレも「悪を憎んで人を憎まず」のバットマンがジョーカーにトドメを刺せない事を、後に死ぬ程後悔させられるハメになるというオチ付き(涙)
人が人を裏切り、私欲に走り、正義を捨て、悪に染まる。 その恐ろしさをこれ程までに見せ付けられた作品は本当に今までなかった、少なくともぴよは見た事がなかったです。 それでもブルース・ウェインが自らを貶めてまでもゴッサム・シティを守ろうとしてくれた事だけが唯一の救いか・・・
とにかく猛烈に気が滅入る話なんだけど、でも余りに圧倒されて目が離せません。 映像の凄まじさもさることながら、やっぱりヒース・レジャーのあの演技にはつくづく参りましたね。彼が存命なら確実に今年のアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされていた事でしょう。いや、受賞した事でしょう。 と言うか、コレ次回作は作れるんですか?ヒース・レジャーの後を継いでジョーカー役を演じるのは余りにも分が悪過ぎると思うんですけど〜・・・誰もジョーカー役をやりたがらないんじゃないかしら?(^-^;
ところで、本作にはレイティングが付いていない?(公式サイトでは確認出来なかったけど) んなバカな・・・コレは確実にレイティング対象でしょ。少なくともR-15は付けないとマズイと思うんだけど。映倫選考委員の皆様もね、レイティングはエロと暴力表現だけに限定してちゃダメですよ。 言っちゃアレだけど、最も子供に影響を与えるのは本作のような「精神的にガツンと来る」タイプですから。今からでも遅くはないから急いでR-15指定にするべきですよ。絶対に!!
そんな訳で、精神的にかなり来るのですが間違いなく本作は「傑作」です。 心の弱い・または未熟な方には絶対にオススメしません。 清濁併せ持った上でコインの表裏のような「善と悪」を見極められる、成熟した大人限定で傑作を鑑賞しましょう!
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