監督:ジェイソン・ライトマン 出演:エレン・ペイジ マイケル・セラ ジェニファー・ガーナー、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 16歳のジュノは、同級生のポーリーと興味本位でたった1度セックスしただけで妊娠してしまった。中絶するつもりで訪れたクリニックの前で、中絶反対を呼び掛ける同級生の「赤ちゃんにはもう爪も生えてるのよ!」の言葉に衝撃を受けたジュノは出産を決心、生まれた子供は裕福で完璧だけど子供の出来ない夫婦に里子に出す事に決める。親・同級生も巻き込んでの妊娠生活だが、肝心のポーリーは蚊帳の外。そんな中、ジュノの周囲がにわかに変化していく・・・
【感想】 アメリカで初めはたった7館のみの単館公開だったのが、クチコミで話題が話題を呼び、最終的には2448館にまで拡大してセンセーションを巻き起こし、更には若手女流脚本家ディアブロ・コディは、本作が長編映画脚本デビューにして本年度のアカデミー賞最優秀脚本賞を受賞というオマケ付き。
話は16歳の少女の望まない妊娠に伴う人間ドラマという青春映画。 過去に何度も同様のネタのドラマや映画は数限りなく製作されているし、日本でもこのネタは定期的に作られる。 ありきたりな葛藤があってありきたりな展開があるんだろーなー・・・と大体の想像は付くものの、既存のこれ等のネタの話というのはかなり重々しくシリアスなドラマに作られていたと思うのですが、本作は主人公のキャラが秀逸で、カラリと明るくライトな空気感で見せていきます。
主人公のジュノはコアなホラーやロックが大好きな、16歳の少女の中ではマイノリティタイプの女の子。 子供っぽく短絡的・楽天的な側面を見せつつ、精神的に成熟して大人びた一面も見せ、「16歳」という大人でも子供でもないどっちつかずの微妙な年齢の少女の内面を丁寧に描いています。
アメリカの片田舎のどこにでもある中〜下流の家庭の混沌とした様子や、両親(特に継母)との距離感、あけっぴろげでハスッパな感じだけど案外友達思いなクラスメイトとのやりとり、初めて接する等身大の大人の男性、そしてセックスと気になる男の子の事・・・多感な16歳の誰もが通る道のりを、ジュノの巧みなセリフ使いで観客に魅せつける。
って、誰もこんな道のり通らねーしっ!(^-^; ああいや、その、イマドキの16歳なら興味本位でセックスもするし妊娠もするんでしょうか?・・・遥か彼方の大昔に16歳が通り過ぎて行ったぴよには「イマドキ16歳事情」がよく判らないんですが、少なくとも今の日本で「妊娠しちゃった→中絶するのはイヤ→養子縁組に出す」という発想は定着していないと思うんですが?どうなんでしょうか?
この手の「少女の望まない妊娠ネタ」ってのは、大体が「最初は投げやりなんだけど、お腹が大きくなるに従って段々母親としての自覚に芽生えて、少女も周囲も人間的に成長する」という展開がお約束だと思っていたのですが、本作は「母性」の部分をバッサリと切り捨ててあくまでも「ジュノと家族&周囲と彼氏の事情」に特化したドラマ構成になっています。
コレは新しい見せ方だと思いましたね。 検診に行った先の医師(技師?)に「10代の母親の育児環境は劣悪だから」と言われた事に関して、ジュノの継母が一喝するシーン等があるのですが、それはジュノに母性が芽生え始めるきっかけとなるエピソードではなく、今まで少しギクシャクしていた継母とジュノの母子関係の修復を見せるという役割でしかなく、あくまでもお腹の赤ん坊の存在がジュノの人生にとって終始「お荷物・その1」という立ち位置なのは変わらない。
あくまでも「ジュノと今まで関わってきた人達の成長・変遷」を見せる話で、少女の無責任な妊娠に関する社会的考察だの人道的配慮だのいう小難しい事はバッサリ切り捨て。 これはこれでいいと思うのですが、きっと賛否両論だろうなぁ〜という気がしますね。 ぴよ個人的には割りと楽しめたクチなんですが、「女性と妊娠」「女性と出産」等と言うキーワードに過剰に反応するタイプの方がご覧になったら、正直かなり不快な思いをするんじゃないだろうか?という気がしなくもないです。
まあでも・・・ぶっちゃけ「この手の話に感動する年齢じゃーないしなぁ。でも上手い作りだよな」程度でして(^-^; セリフ回しが気が利いていて楽しいんですけどね。でもティーン向けの映画かな?って気はしました。
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