2008年06月04日(水) |
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー |
監督:マイク・ニコルズ 出演:トム・ハンクス ジュリア・ロバーツ フィリップ・シーモア・ホフマン、他 オススメ度:☆☆☆
【あらすじ】 1980年代ソ連と冷戦時代のアメリカ。テキサス州選出の下院議員チャーリー・ウィルソンは、お酒と美女が大好きなお気楽極楽議員。でも平和を愛する心は人一倍強く、ソ連のアフガン侵攻のニュースを見て気に掛けていた。ところが州6番目の富豪で反共産主義の篤志家「ジョアン」から、ソ連からアフガンを救って欲しいと頼まれて現地を視察したチャーリーは心を揺さぶられた。CIAのはみ出しエージェント「ガスト」と共にチャーリーの孤軍奮闘が始まる。
【感想】 実在するアメリカの元下院議員「チャーリー・ウィルソン」の奮闘を描く社会派作品。 キャストがスゴイですよね。上記3人の名前を知らない人なんていないでしょう。この映画の制作費の8割以上は役者のギャランティなんじゃないかと思う位、とにかくメインキャストが豪華過ぎる。
要するに、田舎のノンポリお気楽極楽議員が富豪の美女にそそのかされて、気が付いたらソ連のアフガン侵攻を撃退するのに大いに貢献しちゃった!みたいな話なんですが・・・コレは事実だそうで、映画中でもCIAから表彰されるシーンが冒頭とラストに登場しますが、実際に彼はCIAから「影の表彰」をされたそうです。
ノンポリでお気楽極楽だって、世界ニュースを見てどこかの国の人達が誰かから攻撃を受けて苦しんでいる様子を見れば気の毒に思ったり同情位は誰でもする。チャーリーも最初はその程度の関心度だったんじゃないか?という気はしなくもないのですが・・・映画ではそういう心情の掘り下げ等がほとんどないので実際のトコロはよく分かりません。 また、田舎の1議員がどれくらいの権力を持っているのか、チャーリーは実際はどれくらいの立場の人物だったのかも映画を見る限りよく判らない。 少なくとも彼は国防歳出小委員会のメンバーだったようですが、メンバーの1人の独断で予算というのは簡単に倍額に出来るものなんでしょうか?
本作、予告編を見ると「お気楽議員が美女に翻弄されるコメディ」という印象を受けますが、実際蓋を開けるとごく真面目な社会派作品という作りになっています。 勿論予告編でも登場する「チャーリーズ・エンジェル」との遣り取り等、コミカルな部分もコマメに挿入して行くものの、正直言ってコメディ部分というのはほとんど予告編で出し尽くしている。 要するに「本作は真面目な社会派作品です」と言うと日本人にはウケが悪いので、トム・ハンクス×ジュリア・ロバーツという日本でも人気の役者が雁首揃えた楽しい楽しいお話なんですよー♪という誤誘導をしていたという事ですね。
そんな訳で非常に真面目な話なのですが(実際に起こった事の映画化だから仕方ありませんけどね) 使った役者がゴージャス過ぎるせいもあって、中途半端に娯楽性を出し、中途半端にチャーリーの活躍を見せてくれているので何もかもが上滑りな感じがします。 テンポ良くポンポンと話が進むので飽きる事はないのですが、そのテンポの良さが逆に「チャーリーの努力や苦労」が大した事でもない、誰でも簡単に出来てしまう事ような「お軽い話」という印象を受けてしまう。
後、本作を見るに当たっては最低限の米ソ冷戦時代の構造、ソ連のアフガン侵攻の辺りの知識は必要かと。 勿論それらの知識がなくても本作が理解不能という事はないだろうと思いますが、何も知識がない人が見るとラストのチャーリーのコメント「最後にしくじった」という意味が判らないんじゃないだろうか?と思います。 本作の言いたかった事って、結局はこのラストの一文に全て集約されていると思うので、世界の歴史に興味のない方は是非ここらの歴史をお勉強してからご覧になってもらいたいですね。
まあそんな訳で、痛烈にアメリカ社会・政治を皮肉った作品。 本国の方々が見れば、中には苦虫を噛み潰すような思いでご覧になる方もいるんでしょう。でも日本人には今一つピンと来ないお話ですよね・・・仕方ありませんよ。日本人はほとんどの人がノンポリなんですから(苦笑)
|