2008年05月20日(火) |
ラフマニノフ ある愛の調べ |
監督:パーヴェル・ルンギン 出演:エヴゲニー・ツィガノフ ヴィクトリア・トルストガノヴァ ヴィクトリヤ・イサコヴァ、他 オススメ度:☆☆
【あらすじ】 1920年代、ロシア革命を逃れアメリカに亡命したセルゲイ・ラフマニノフは、過密スケジュールの演奏旅行で全米を渡り歩いていた。心身ともに疲弊したラフマニノフは、もう10年も新作を書けずに鬱々としている。故郷に思いを馳せるラフマニノフ・・・幼くして一家離散の憂き目に遭うもののピアノの才能を開花させて行った彼は、やがてピアノを弾くだけでなく交響曲を作るようになるのだが。
【感想】 ロシアが生んだ天才音楽家「セルゲイ・ラフマニノフ」の半生を映画化。 その名は知らなくても予告編でも流れる「パガニーニの主題による狂詩曲」位は誰でも聞いた事があるでしょう。 もし聞いた事がない方はYou Tubeで検索すりゃー一発で出てきますから聞いて下さいよ(苦笑)
で、本作はアメリカ亡命後に初めてカーネギーホールで演奏会をするシーンから始まり、その後はアメリカに到るまでの彼の生い立ちと現在の「もう10年も作曲出来てない俺様」の状態を交互に見せていきます。 要するに現在の「欝っちゃって作曲出来ない俺様」が出来上がるまでのいきさつを差し挟んで見せる形式。 最終的には「どのようにしてパガニーニの主題による狂詩曲が作られたのか」という部分を見せましょう、と。
・・・という話のハズなんですがー。 正直言うと、本作はオチの締め方がどうにもよろしくないんですよ。←いきなりオチにツッコミはキツい(^-^; 途中までは「ふん、ふん、それで?」と、なかなか興味深いエピソードも見せてくれるんですが、肝心のオチ部分が余りにもいい加減なやっつけ仕事なので「なんだよ、このファンタジー模様はよ!」とツッコミ入れたくなっちゃうんですよ(苦笑)
本作、実在する人物の映画化ではあるものの、かなり史実とは違うそうでして。 わざわざ映画ラストに「本作は史実とは違う部分がある」というような説明テロップまで出る。要するに本国ロシアで公開された時点で相当なクレームがついたんじゃなかろうか?と推察。 史実と多少違っててもいいんですけどね、だったらもう少しドラマティックに見せてくれてもいいじゃないかと。
まあ良くも悪くも「ロシア映画」 ハリウッドのような洗練された演出や脚本からは程遠い。でも丁寧にラフマニノフの心の内を見せてくれるんだろうと期待したくなるのですが、どうもコレも上滑りでラフマニノフ自身の心情よりも、周囲の様子を見せる事の方にウエイトが置かれているような気がしますね。何だかピントがズレてる。
もちろん「献身的な妻の愛」を見せるという事にはかなり時間を割いていると思うものの、ラフマニノフが新作を書けなくなってしまった最大の理由が、本作を見ていると1作目の交響曲を捧げた年上のアバズレ(をい)に、けんもほろろにフラれてトラウマになってしまったから・・・という風にしか見えない。 勿論アメリカに亡命してからの超多忙なスケジュールにイライラしている様子等も見せますが、これらが理由だという風には全く見えないんですよね。献身的な妻に甘えながら他の女のケツばっかり追い掛ける痛いおっさんにしか見えないってのはどーにもこーにも溜息モノ(苦笑)
予算の都合でしょうか、当時の古い映像を切り貼りして「アメリカ横断中〜」みたいなやっつけ仕事してますが(笑) 少なくとも幼少時代に過ごしたという自宅、ライラックの咲き乱れる庭、そして睡蓮漂う池等の様子はとても美しく撮られていて好感が持てます。
伝記モノとしては正直成功しているとは言えませんが・・・「のだめカンタービレ」等の影響で今日本は空前のクラッシックブームですから、クラッシック入門編として本作を鑑賞するのもまた一興かと思います。 ただし、本作は決して史実に則った訳ではないですからね。ある種のファンタジーだと思って見るべきでしょう(^-^;
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