2008年05月13日(火) |
さよなら。いつかわかること |
監督:ジェームズ・C・ストラウス 出演:ジョン・キューザック シェラン・オキーフ グレイシー・ベドナルジク、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 ホームセンターで働くスタンレーは、長女ハイディ・妹ドーンの2人の娘の父親。娘の母であり愛する妻は陸軍軍曹としてイラクに派兵されていて、留守を守るスタンレーは娘達とのぎこちない関係にイライラする日々。そんなある日、妻が戦士したとの連絡が入る。母を恋しがる娘達に戦死の報を伝えられないスタンレーは、思わず2人を旅に連れ出すのだが・・・
【感想】 イラク派兵で大切な家族を喪った父親と娘の交流と再生を描くヒューマンドラマ。 監督と脚本も手掛けたジェームズ・C・ストラウス氏は本作で監督デビュー。娘に母親(妻)の死をどうしても告げる事が出来ずに苦悩する男スタンレー役は、監督たっての希望でジョン・キューザックを指名したそうです。
本作も予告編を見るだけで話の筋は全て丸判りの、非常に単純明快な展開。 要するに役者の演技と間合い・演出で魅せるというヒューマンドラマの王道的作品ですね。
これがねー、監督が指名するだけあってジョン・キューザックが上手いんだなぁ! 母を恋しがる娘達の気持ちはよーく判るものの、自分だって妻不在の家庭を守るのは骨が折れるし、実際妻が家にいた時は家事から育児・躾までほとんど妻に丸投げ状態だったんでしょう。 特に思春期に入り始めた長女の扱いには手をこまねいている様子で、更には自分自身だって愛する妻が死と隣り合わせの戦地に赴任させているという不安からナーバスになっていて、同じような「戦地に夫を赴任させている妻のメンタル・グループカウンセリング」に出席したりしている。
ナーバスになるのにはまだ隠された理由があって、それはかつては自分も志を持って軍に入隊していたものの、ある事から退役せざるを得なくなったという過去をもっていたから・・・という事が後につまびらかにされていきます。
まあそんなこんなで予告編通りに話は進む。 母親の死を娘達にどうしても伝えられないスタンレーは、とりあえず現実逃避状態でドライブ旅行に出かけてしまう。 自宅電話の留守電の声は妻が吹き込んだものなので、彼は旅先から自宅に電話を掛けては妻の声を聞き、まるで妻と会話しているような気分で自分の辛い心情を留守電に吹き込んだりする。
先にどんなエピソードが待ち受けているかも大体予想が付くんだけど、とにかく役者が上手かった。 長女のハイディを演じたシェラン・オキーフ嬢がとても良かったですね。実は映画見てる間は「テラビシアにかける橋」に出演していたアナソフィア・ロブ嬢だとばっかり思ってたんだけど(似てない?)シェラン嬢は本作でスクリーンデビュー。 母親不在の家庭で、父親のナーバスな状態が伝染している部分もあるだろう・・・不安から不眠症状態で、更には今までとは明らかに様子が違う父親を見て不穏な空気を感じ取っている様子を、実にリアルに演じています。
展開ミエミエで、更に細かいネタのオチどころも丸判りの作りなんだけど・・・ジーンとさせる。 家族を喪う事の辛さを経験した事のある人、それから子を持つ親なら誰もがどこか共感する部分があるハズ。 そうじゃない人でも容易に想像が付く、いや「こんな思いをしなければいけないのか」と擬似体験させられる、非常に説得力のある丁寧な描写の作品だったと思います。
比較的淡々とエピソードを繋ぐ作りなので、派手な映像やアクション好みの方には向きませんが・・・そういう方はそもそも本作を見る事はないだろうと思うので問題ないですよね?(苦笑) 個人的には「父娘の関係は非常に丁寧に見せてるけど、夫婦としての愛情の見せ場がないのは淋しいな」と思ったものの、見せるテーマを絞っているのだと好解釈するべきだろうなーと。
クリント・イーストウッドが初めて他人の為に書き下ろし楽曲を提供していますが、コレも秀逸。 見て損はさせない作品です。地味ながら人の心に訴えかける一作。
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