監督:ジョー・ライト 出演:キーラ・ナイトレイ ジェームズ・マカヴォイ シアーシャ・ローナン、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 1935年イングランド、政府高官・タリス家の屋敷。13歳の末娘のブライオニーは、姉・セシーリアと使用人の息子ロビーとのただならぬ仲を察知し、ロビーに対して不穏な思いを抱く。その夜、屋敷の庭で従姉妹のローラが何者かに襲われている場面を目撃したブライオニーは、犯人の顔もロクに見ていないのに警察官に「犯人はロビーだ」と証言し、ロビーとセシーリアは引き裂かれてしまう。数年後、成長したブライオニーは自分の偽証の罪深さに気付き、姉に謝罪の手紙を送るのだが・・・
【感想】 イアン・マキューアン著のベストセラー小説「贖罪」を映画化。 今年のゴールデン・グローブ賞のドラマ部門作品賞、作曲賞等を受賞した他、アカデミー賞でも7部門ノミネートされて話題になった作品。(でも受賞したのは作曲賞だけでしたよね)
正直言って、予告編を見ても余り興味が沸かなかった。 そもそもメロドラマ系は好きではないし、文学系メロドラマなんて格調高過ぎて堅苦しくて肌に合わない。でもキーラは可愛いからとりあえず見ても損はないかなぁ・・・程度で、全く期待しないで鑑賞した訳ですが。
意外な事に、見応えがあって余韻の残るいい作品でしたね。 ベタベタな恋愛モノだとばかり思っていたけど(いや勿論恋愛モノなんだろうけど)、ちょっとサスペンスちっくな構成でラストにはちょっと驚きのどんでん返しまで用意されていました。 ・・・どんでん返し、とまで言うと流石に少し煽り過ぎかも?(^-^;
キーラ演じるセシーリアが主人公だとばかり思っていたのですが、主人公は妹のブライオニー。 映画前半は、同じ情景をブライオニーの視点からとセシーリア&ロビーの視点からの両方を交互に見せる事で、思春期を迎えて性に対して過剰に反応し嫌悪感を持つ、潔癖なブライオニーの危うい精神状態を巧みに表現していきます。 その後も同じ出来事を2方向の視点から繰り返し見せるのですが、わざと時間を前後させて見せたりする。どうしてこんなややこしい見せ方をするのかなぁ〜と思っていたら・・・コレは時間を前後させているという訳ではなく、実はラストのオチの伏線だった訳ですね。上手いです。
見ていてとにかくブライオニーには腹が立つ!(コラ) 幼心に密かに想いを寄せるロビーが、自分ではなく美しい姉に目を向けている事が許せなかったブライオニー。性に目覚め始めた微妙な年齢だった彼女は、男性の性的な視線に不潔感と嫌悪感を抱いて、ロビーを嫌悪する事で自分の報われない想いに決着をつけようとする。 ・・・気持ちは判らなくもないが、いくらなんでも強姦犯に仕立て上げるのは流石にやり過ぎだろーて(^-^;
自分は潔癖で間違っていないのだ、だから相手を貶める事で自分のプライドを保つ、という事は誰しも思春期にはやりがちな間違いだけど、それにしても彼女の犯した過ちの代償は余りにも大きかった。 男女の機微も判る年齢になって、自分のした事の重大さにようやく気付いた時には既になす術もなかった。 せめて2人が後に再び結ばれる事が出来れば、せめて2人が自分の事を罵ってくれれば・・・
ラスト、後に小説家として成功してインタビューを受ける、老境に入ったブライオニーの告白に愕然としましたよ。
コレは物凄く巧みに考えられた脚本だなぁ。原作小説はどういう構成で書かれているんでしょうか?本作と全く同じ作りなのか未読なので知りませんが、少なくとも映画として見せる方法を非常によく心得た上手い脚本だったと思いますね。 本作は作曲賞も受賞していますが、タイプライターの音がそのままBGMに繋がっていくのがとても印象的。あのタイプ音が妙に心をざわつかせるんですよ・・・いつまでも耳に残る音楽が多かったですね。
恋愛物やお堅い文学物が苦手な方にも是非トライして頂きたい、良作です。オススメ!
|